牛乳の生産量が落ちている。酪農家戸数も飼養頭数も減っている。消費者の方々はこれは同じことと思われるでしょう が、これまでは牛乳の生産量と飼養頭数と酪農家戸数は連動していなかったのです。
乳用牛の飼養戸数は2万5400戸で前年に比べ1200戸(4.5%)減、飼養頭数は159万2000頭で4万4000頭の減少となっている。酪農家戸数も北海道は3.3%の減少となっているし、府県では5%の減少となっている。
これまでは、酪農家戸数が減っても、国内で生産される牛乳の量はほとんど減ることがありませんでした。酪農家戸数が減っても、乳牛の頭数はほとんど減ることもありませんでした。この2年で、酪農家戸数も乳牛頭数も、生産乳量もやっと減少してきたのです。輸入穀物の高騰がその原因です。
酪農家戸数が減っても、乳牛の頭数が減らないのは、一戸当たりの飼養頭数が増えたことを意味します。乳牛頭数が減っても、乳量が落ちなかったのは、一頭当たりの生産乳量が増えたからです。
これれの二つを同時に可能にさせたのは、輸入穀物の多給でした。草などの自給飼料を中心に飼うと、広い草地面積が必要になりますが、輸入穀物を与えていれば、その心配はありません。輸入穀物は、カロリー価が高いため、大量に与えると乳量が増えてくれます。ところが、これでは経費がかさむし、処理しきれない糞尿で環境が汚染されるし、乳牛の不健康が常態となります。
それでも、酪農家がせっせと輸入穀物を、輸入穀物販売業者の手練手管に乗せられて、給与し続けるられたのは安価な穀物が安定的に得られたからです。そのための「良好な日米関係」が必要なことも事実ですが、ここにきてアメリカは、日本の家畜に与える穀物(コーン)を、補助金まで出して国内のバイオエネルギーに振り向けると言い出したのです。「良好な日米関係」は何処に行ったのか知りませんが、これが食糧自給を放棄した国家の現状です。
世界的な穀物価格の高騰は経営を圧迫させて酪農家は減少し、乳量は減少してきたのです。一面ではいいことかもしれませんが、乳価も安くなり、酪農家はダブルパンチの状態にあります。そこで、自給飼料を増やして乳量を減らし、経費を極限まで押さえて頑張っています。拙書参照ください。
そりゃないよ獣医さん―酪農の現場から食と農を問う
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