中国は大きな矛盾を3点抱えている。ひとつは、共産党による一党独裁の堅持である。それによる民主化、あるいは国民の声を聞く体制・システムを持たないことである。そして、共産主義を貫くと言いながら、経済効率一辺倒の資本主義体制の無貞節な移行である。最後の一つが民族問題である。
現在の中国は、本来の漢民族を中心とする人たちの支配する中原(中央部)だけでなく、チベット地区、新疆ウイグル地区やモンゴル地区、それにほとんど同化しまった満州地区を周辺に取り込んでしまっている。
この中でも、ウイグル地域の民族とチベット民族は明らかに中華人民共和国とは歴史も民族も異なる。長年独立運動がくすぶっているところである。とりわけチベット地域は、毛沢東がダライ・ラマの印章を偽造してまで併合した経緯がある。
後年中国自身が、印章の偽造は解放のため必要だったと居直りの発言までしている。チベット自治区とは名ばかりで、最近はラサまで鉄道を引いて、中央政府の力を誇示しようとしている。
ウイグル自治区もそうであったが、街の中央は漢族が住み周辺に少数民族がみすぼらしい掘立小屋を並べるのが、こうした辺境の併合の通例である。中央の権力と財力で経済を握り、支配する。ウイグル地域などは資源まで収奪する。
10%前後の経済成長を持続することや上海や北京などのとてつもない富裕層の出現などは、上記の矛盾する3点を 貫くことで出現できたことである。今の中国には、民族問題を解決する視点はない。
今回起きたチベット地区の暴動も、アメリカから国家元首待遇の勲章を授与されたノーベル平和賞受賞者ダライ・ラマを非難し、武力的な鎮圧を繰り返すこことしかできない。この間も、着々と民族同化の現実は進められている。
チベット民族にとって、独立は悲願である。中国やロシアやスペインが、コソボの独立を認めないのは、チェチェンやチベットやバスクを国内に抱えるからであって、真に彼ら民族のことを考えているのではない。
今回のチベットの、穏健な僧侶たちの暴動が、組織だった運動になる見込みは薄いものの、武力制圧はさらなる矛盾を抱えることになる。とりあえずオリンピックまで全力で突っ走る中国は、その後にこれらの矛盾を吐き出すことになるものと思われる。