先頃の第80回アカデミー賞の、ドキュメント部門だったかに「「闇」へ TAXI TO THE DARK SIDE」が受賞した。監督はアレックス・ギブミーで、この作品は世界33カ国の共同製作による「民主主義」シリーズの一つ、アメリカを取り上げたものである。
この作品は、徹底的にアメリカがアフガニスタンとイラクの住民に対して行った、拷問や非人間的、非人道的な扱いを告発したものである。アメリカが拘束した、住民は8万人以上であるが、その中にテロリストは1%以下であったと、この作品は述べている。
アブブレイブ収容所では、イスラム教の人たちが嫌がることを徹底的に行っている。裸にさせることや、犬などの動物で威嚇することで辱め、電流や手錠などで吊るし上げることや、叩きつけ死に至らしめることなど無数の拷問を報告している。
アメリカには、こうした事実に対する告発を積極的に評価する風土がある。ブッシュのアフガニスタン侵攻は、アメリカ国民の80%の指示を受けた。ところが実際に、イラクまで攻撃するに至り、大量兵器もなければビン・ラディンとの関係も否定され、現実問題としてアメリカ国民はこの戦争に辟易としている。
このような作品が、対外的に評価されるのはアメリカの多様性を物語っているようである。日本の家畜に穀物を大量に与えるように、「科学的」な指針を出した機関にNRC という組織がある。肉骨粉も奨励していた。この組織が、飼料用トウモロコシのエタノール転用に、疑義を唱えているのである。
アメリカは、政治的な動きとそれに呼応しない連中が、権力機構の中に複雑に同居することがある。また政治的・軍事的な活動だけでなく、科学分野ではさすがに多くの範囲で世界を先導している。アメリカの多様性を物語っている。
翻って、わが国では「靖国神社」とかいうドキュメント作品が、偏向しているとかで、自民党の連中が騒いでいる。事実関係に基づき、製作者の意図を表現することはなにも偏向ではない。自民党の意志にそぐわないものは偏向と騒ぐ方が、偏向の強要である。それこそ大政翼賛会的な動きを押しつける、自民党の動きが狭量なのである。
科学分野でも、非加熱製剤が危険であることは、いち早く公開して製造中止に追い込むが、日本はアメリカの動きの事実知りながら官僚連中が、製薬会社の顔色を窺うことばかりを行っている。
日本には、積極的な事実公開の風土が極めて薄い。誰かの顔を潰しはしないか気を配ることが、何より優先されている。
因みに、前述の「民主主義」シリーズの日本版は、イギリス人だったかの制作によるもので、ある若い新人の選挙を追っていた。彼は、1時間の番組の中でただの一度も政策を述べていない。自分の名前の連呼と、「お願いします」と頭を下げることだけであった。
これが日本の選挙(民主主義)である。と。恥ずかしい番組であった。