そもそも「聖域なき関税撤廃が前提ではない」という、自民党が選挙で掲げた二重否定の言葉であるが、まやかしのにおいがプンプンとする。TPP賛成派のブレインが考えたのに違いない。
オバマと首脳会談をした安倍首相は、共同声明を嫌がるオバマを説得して、このフレイズを引き出した。これで参加撤退が出来なくなった。これからの行く先を見据えて、財界人が賛成し、農協関係者が反対している。この共同声明の本質を二人とも理解している。日本はTPPなる無関税システムに日本は乗っかることになる。日本が参入しなめれば、アメリカも意義を見出せなくなる。
この文言は、TPP参加するために反対派に配慮したものである。TPPの本質は、すべての商品と制度について関税と規制の撤廃である。でなければ、TPPの意味がなくなる。
参入してしまえば、『聖域』など簡単になくなってしまう。何が聖域になるかを巡って、駆け引きが盛んになるだろうが、せいぜい10年程度のことである。いずれそんなものは撤廃されて、日本に地方は疲弊することになる。
農業に象徴的な意味を持たせてはいるが、大量生産システムも大消費地もない地方は、競争力という意味不明の経済用語で、あっという間に凌駕されることになる。医者が子供に注射する時に、「痛くないよ」と嘘をつくのであるが、それと全く同じである。この嘘は誰も咎めない。
やがて何が聖域かの論議で業界同士の綱引きが始まり、喧嘩両成敗になる。そしてそんなもの何時の話かということになる。地方が疲弊し、食糧の危機を感じるようになってから、やっと気が付くのであろう。
人類は、各々の国や地域や地方で、気候風土や歴史や文化や民族や宗教など、数多くのことを不均等に発達、発展させてきたのである。そのことを均一にしようとすると、経済的に優位の物が勝つに決まっている。
負けたものを弱いと揶揄するのは当たらない。固有の文化などを否定するからである。お互いに均等になるように調整する役割が、関税なのである。関税は平等のために存在するのであるが、逆の思想を持つのがTPPである。もうかなりこの枠は崩されているが、今回のTPP参入でそれはさらに加速されることになる。