EU委員会が、バイオ燃料(アグロ燃料;Agrofuel)産業の暴走に、警鐘を鳴らしている。バイオ燃料の問題に火をつけたのは、今年の年頭教書ででのブッシュ大統領の発言である。その時点で、アメリカはコーン(家畜の飼料用である)を大量にエタノール産生に向けて補助金を出すなどして動いていた。
地球温暖化対策に向けて、バイオ燃料はとりわけ車の燃料として切り札のように思われている。クリーンであるはずのエタノールがガソリンに比して20倍排出すると言われる、発がん物質化学物質アセトアルデヒドの評価が不明である。
バイオ燃料の生産過程で、大量の燃料が使われる矛盾を当座の間は、補助金や理解ある人たちに支持されてもそれが持続する保証などどこにもない。燃料のバランスの悪さは、コストに振り替えられることになるが、その先行きはさらに不安になるものと思われる。つまりエネルギー効率でも経済効率でも、持続可能でないことになる。
とりわけ、アメリカが現在行っている家畜飼料用のコーンのバイオ燃料転換は、モラル面での検討もなおざりにされたままである。人との競合を抑えてまで家畜に給与する矛盾を、今度は車に給与するのである。飢餓線上にある10億近い人間から直接だけでなく、価格高騰で間接的にも奪うことになるのである。
コーンからの転換は、エネルギー効率が1.3しかない。サトウキビの効率が9.0であることを考えると、大きな損失が生じる。ブラジルが勢いづいているのはこうした背景がある。 そのブラジルでも、サトウキビ生産への大量転作は多くの農作物の高騰を生みだしている。
食料の海外依存率が、60%を超える日本では多岐多種にわたる食料の高騰がおきる。とりわけ、畜産製品ではその傾向が直接的に発生する。大規模農家しか容認しない、現政府の政策は農業を知らない都会の若い国会議員たちには矛盾としても映っていないようである。