John Constable
Dedham Val
1802, Oil on canvas, 145 x 122 cm
Victoria and Albert Museum, London
ターナーとコンスタブル John Constable (1776-1837)は、両者ともにイギリスを代表する風景画家である。コンスタブルはターナーより1歳年下である。二人とも、イギリス人が好む画家の5指に間違いなく入るだろう。しかし、以前のブログに記したように、コンスタブルが王立アカデミー会員に推薦されたのは53歳であり、同様な出発をしたターナーが27歳で会員の栄誉を受けたことと比較すると、同時代の評価にはかなりの差があった。ジョン・ラスキンなども、コンスタブルのやや保守的な画風に批判的であった。しかし、コンスタブルの風景画は一貫してたんねんに描かれ、画風が大きく変転したターナーにはない素晴らしさがある。
その風景画は日の光や雲とともに移ろう自然の美しさを新鮮な筆致でとらえ、イギリスよりもむしろフランスで高い評価を得ていた。ロマン派やバルビゾン派に影響を与え、印象派の先駆ともなった。製粉業者の息子として生まれたコンスタブルは、生まれ故郷サッフォークをこよなく愛していた。この地域は、今ではコンスタブル・カントリーと呼ばれ、美しい自然を残している。
今年の8月末まで、テート・ブリテンで「コンスタブル:素晴らしい風景画」Constable The Great Landscape と題した特別展が開催されていた。今回の見物は、この画家の作品の特徴のひとつである6フィートの大カンバスである。画家自らが「6フィートのカンバスを前にしないと仕事をしているような気がしない」(ジョン・フィッシャーへの手紙、1821年)と述べているように、画家が生涯で最も力を入れた作品である。
これらの作品はコンスタブルの制作活動の中心を構成していたが、画家の活動していた時代にすべてが集められたことはなかった。今回の特別展では同寸大の下絵(スケッチ)も同時に展示され、こちらの方が筆触が伝わり、感動が大きいほどである。
展示は9作品について、スケッチとの対比がなされ、合計で65点が出品された。ハイライトはストアー渓谷 Stour Valleyを描いた連作で、画家の生地でもあり、長い制作活動の拠点でもあった場所が情感豊かに描かれている。ターナーと見比べていた頃は、コンスタブルは少し退屈な絵だなと思ったこともあったが、年齢を重ねるとともに段々好きになってきた。
コンスタブルが主として描いた地域 Constable Countryは、1990年、1994-5年にケンブリッジからボロ車を運転して何度か訪れた地であり、思い出が深い。コンスタブルときわめて近くのサドバリー Sadbury, Suffolk に、50年ほど先に生まれたゲインズバラの家を訪ねたこともあった。ゲインズバラも好きな画家の一人だが、これは改めて書くことにしたい。
Reference
Anne Lyles and others eds. Constable The Great Landscapes, London: Tate, 2006, 219pp.
本書は今回の特別展のカタログとして編集されたもので、大変美しい仕上がりで、コンスタブル愛好者には一見をお勧めする。