血脈、佐藤愛子さん(大正12年生まれ)の65歳から12年間かかって書き上げた(多分どこかに書いてあった)大作、「血脈」上・中・下の現在上・中を読了。
彼女の家系、父佐藤紅緑の家庭事情、係累の盛りだくさんの人生模様です。
初めて読んだのは、連れ合いの破産がらみの話を書いた「戦いすんで日が暮れて」だったこと、いくつかのエッセーなどの小文などから、おぼろげな家庭事情を知っていたのは、きっと彼女の物を書くスタンスが、育った家庭を書くこと、自分の暮らし、親子関係を書くことをテーマにしてきたからでしょうね。
さて、これは大作。何故こんな話をオープンにするのか、そこの神経は判りません(親兄弟の名を使って、お金を得ようとするのが、この家庭の子供たちの特徴だったりして)。
明治40年代から、文芸・文壇で一世を風靡し、湯水のようにお金が入ってくると、人はこんな費消の仕方をするのかという、見たくない見本のような話です。
まぁ、お金が無くても、溢れる感情で路線を逸脱するタイプなのかもしれませんが、生き様に品格が見られないのです。我がままで品格の無い人が、子供を育てるとこうなるだろうという見本を4人の息子において実践しているところが、すごい。
一族は世間に対しては、名士である紅緑の息子、サトウハチローの弟であることで自分を大きく見せることにおいては、なにも違和感を感じず、ウソ・ペテンもまかり通ればもうけもの、という発想。戦意高揚の作品を書きながら、自分が戦争に行くには恐れおののく…。書いていることと本意と違っていても、そこの矛盾は無問題の神経で一貫している。サトウハチローの詩と佐藤八郎は違うということを、私たちは、ここまで欺かれていたのかと、それを知らされた気分です。
紅緑氏も、ハチロー氏も、そして愛子さんも、文章は滑らかです。
佐藤一族の中で、ひとり自分の世界をもっているかのように書かれている、彼女の母親シナの影響が強い愛子さんの書くものは、紅緑氏やハチロー氏のように才にあかせて売文風というスタンスと一緒にしてはいけないのかな。彼女の文章も結構パンチがあったりしたから、この本も読者サービスで脚色が…、だったら、誰かを傷つけてはいまいか。
でも、久しぶりに、ワープロ文章でない愛子さんの筆力は、語彙豊かで、ゆったりと文字の中にあそばせてくれます。
第2巻で父紅緑が死に、子世代、孫世代になるでしょうから、もう少し楽しめます。
大作でしっかり書かれている分、明治末期、大正、昭和、終戦の時代の潤沢にお金を手にした人のお金の使い方をみせてもらえました。こんな使い方が、文章家=インテリの相場だったら、まことに情けない。
家庭に書生や女中が何人もいて、乳母に育てられる、この感覚はいまの日本では稀有でしょうね。
彼女の家系、父佐藤紅緑の家庭事情、係累の盛りだくさんの人生模様です。
初めて読んだのは、連れ合いの破産がらみの話を書いた「戦いすんで日が暮れて」だったこと、いくつかのエッセーなどの小文などから、おぼろげな家庭事情を知っていたのは、きっと彼女の物を書くスタンスが、育った家庭を書くこと、自分の暮らし、親子関係を書くことをテーマにしてきたからでしょうね。
さて、これは大作。何故こんな話をオープンにするのか、そこの神経は判りません(親兄弟の名を使って、お金を得ようとするのが、この家庭の子供たちの特徴だったりして)。
明治40年代から、文芸・文壇で一世を風靡し、湯水のようにお金が入ってくると、人はこんな費消の仕方をするのかという、見たくない見本のような話です。
まぁ、お金が無くても、溢れる感情で路線を逸脱するタイプなのかもしれませんが、生き様に品格が見られないのです。我がままで品格の無い人が、子供を育てるとこうなるだろうという見本を4人の息子において実践しているところが、すごい。
一族は世間に対しては、名士である紅緑の息子、サトウハチローの弟であることで自分を大きく見せることにおいては、なにも違和感を感じず、ウソ・ペテンもまかり通ればもうけもの、という発想。戦意高揚の作品を書きながら、自分が戦争に行くには恐れおののく…。書いていることと本意と違っていても、そこの矛盾は無問題の神経で一貫している。サトウハチローの詩と佐藤八郎は違うということを、私たちは、ここまで欺かれていたのかと、それを知らされた気分です。
紅緑氏も、ハチロー氏も、そして愛子さんも、文章は滑らかです。
佐藤一族の中で、ひとり自分の世界をもっているかのように書かれている、彼女の母親シナの影響が強い愛子さんの書くものは、紅緑氏やハチロー氏のように才にあかせて売文風というスタンスと一緒にしてはいけないのかな。彼女の文章も結構パンチがあったりしたから、この本も読者サービスで脚色が…、だったら、誰かを傷つけてはいまいか。
でも、久しぶりに、ワープロ文章でない愛子さんの筆力は、語彙豊かで、ゆったりと文字の中にあそばせてくれます。
第2巻で父紅緑が死に、子世代、孫世代になるでしょうから、もう少し楽しめます。
大作でしっかり書かれている分、明治末期、大正、昭和、終戦の時代の潤沢にお金を手にした人のお金の使い方をみせてもらえました。こんな使い方が、文章家=インテリの相場だったら、まことに情けない。
家庭に書生や女中が何人もいて、乳母に育てられる、この感覚はいまの日本では稀有でしょうね。