日々の暮らしから

「街中の案山子」「庭にいます。」から更にタイトル変更します。

「悪魔のささやき」(加賀乙彦著、集英社新書)

2006-09-18 21:55:07 | 本・映画・テレビドラマ・絵・音楽
1929年生まれの精神科医で小説家の加賀乙彦氏の本「悪魔のささやき」。
70代半ば、16歳で敗戦。そのときの日本人の思考回路の様変わりを肌で感じ、その後も、ひとの心の裡を仕事としてこられた経験をお持ちです。
精神科医として見る目、作家として人を見る目、他者からの圧力に屈することなく、深く洞察することを心がけて生きてこられた人の文章だから、学ぶところが多い、というか、こんな人もいらっしゃるということを嬉しく思いながら読み進めています。
私たちの世代が、すっぽりと当てはまる、あの学生運動の頃のことも、追及される側として、当時の学生たちのその後の様変わりを指摘されています。
立て看板の前で、ガナリたてる活動家のメッセージのなんと、中味のないものよ、とは思っていたけれど、ベトナム反戦には耳を傾けたり。私はそんな立場で見ていました。
一般企業に就職することは考えたこともないので、漠然と「軍需産業には就職したくない」という風潮があった気がしていたけれど、実際は運動家たちも大企業に進んで就職していったのでしょうか。
記憶にある事柄については、当時を思い出しながら、昨今の事件については、大衆の流れに的確な指摘がなされて、これには大いに同調します。そんな風に、自分の感じる思いと、作者の分析を重ね合わせながら読んでいます。

精一杯考えて選択している積りでも、自分のそれは悪魔のささやきなのだろうか。

20年ほど先を歩いていらっしゃる賢人の書に出会えたことを嬉しく思います。
昨日の1冊とこの1冊、近頃珍しく、読後感に「(こんな人に)出会えてラッキー」と、思える本でした。
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「これも経済学だ!」(中島隆信著ちくま新書)

2006-09-18 21:07:42 | 本・映画・テレビドラマ・絵・音楽
経済学の本は多分読んでも右から左に忘れるだけの本だろうと、思いながらも、手元にはこれ1冊しかなかったので、読みやすそうなところから、ぱらぱらとめくっていく。
身近な話題だから、読みやすい。
展開されている論理に、素直に納得できる。
「これも経済学だ!」
私が始めて、面白いと思えた経済の本です。
たとえば、日本の現在のお寺さん。葬式屋さんになってしまった感があるけれど、それは徳川幕府が、キリシタン禁制を徹底させるために、檀家制度を取り入れ、地域の戸籍係りの役目をお寺に与えた。お寺が役割を与えられ保護されたことから、本来の宗教活に熱心になることをしなくなった。保護されるということはそれ自体の力を弱めることにつながる。そのように宗教としての個性がすっかり薄れた檀家制度でも、現在も残っているのは、家族墓が菩提寺に残っているからだと。
檀家制度は、キリシタン禁制を徹底させるときに採用された制度化と、ことの始まりを教えられ、納得です。
人の思考回路の流れを「なぜ」と問うてみることから、より深く解ることがあるという視点で、今の世の中を分析している。
「弱者」についての分析も、相槌を打ちながら読み進めた。
興味のある章を拾い読みしているうちに、ほぼ全部読んでしまう、そんな本です。
中島隆信氏は1960年生まれの慶応大学教授です。
遠い昔に受けた一般教養の経済学の講義、富の再配分なんて話でした。そういえば、マルクス系学者全盛の時代でした。
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