日々の暮らしから

「街中の案山子」「庭にいます。」から更にタイトル変更します。

何度も話題にする「菜の花の沖」  追記(雑談)あり

2016-10-07 08:38:18 | 
ようやく読了。

海運の話なんて、自分の世界と無関係で興味が続くかしら、と思いながらスタートし、こんなにロースペースで読みつないで、途中でヤメにしてしまうのではないかしら、とも思い、でも、遅々として読みつなぎ、昨日で読了。

18世紀後半から19世紀の初めにかけての、江戸時代の一端を教えてもらいました。
司馬遼太郎さんが、菜の花が好き、というのは知っていました。
バラなどの貴族然とした花より、畑で目にする庶民の花だから好まれるのだろうな、と思っていました。表層的でした。

晩年の嘉兵衛が村人から、蝦夷地で何をしたと尋ねられて「この菜の花だ」と言ったという。


 菜の花はむかしのように村の自給自足のために植えられているのではなく、実を結べは六甲山麓の多くの細流の水で水車を動かしている搾油業者の手に売られ、そこで油になって、諸国に船で運ばれる。たとえば遠くエトロフ島の番小屋で夜なべ仕事の網繕いの手もとをも照らしている。その網でとれた魚が、肥料になって、この都志の畑に戻ってくる、わしはそういう廻り舞台の奈落にいたのだ、それだけだ、といった。


農本主義の江戸時代にあって、土地で食べていくことができないで海に生きざるを得なかった者たち、と自分の周りで働く者たちのことを言っている。彼はその海運の船頭として、幾多の役人と折衝し、頼られる存在、高田屋嘉兵衛という信頼を勝ち得ていく。
ゴローニン事件の余波で嘉兵衛はロシア戦艦に拿捕される。その1年足らずにも、敵将との間に信頼関係を築き、嘉兵衛の帰還、ゴローニン解放という外交交渉をやってのける。
高田屋の廻船は品質にごまかしがないと国内にあっても信頼厚く、またロシア船も「高田屋」の旗印の船には配慮してくれるようになる。が、それが幕府にとっては、ロシアと密貿易をしているとみなされ、所有する廻船すべてを没収されてしまったという。

鎖国を選択している幕府の価値観を文字を通して教えてもらいました。
自分の国が150年ほど前までは、こんな特異な制度で一貫していたのです。
外交不得意というのも、遺伝子に残っているのかもしれませんね。苦笑


■追加雑談■

幕府って、政権維持のためにどこにでも制約を設けていた、ということを知りました。
船の形、構造も、どれだけ改良したほうがよいとわかっていても、規制、規制、でかないません。
魚から作られた肥料が各地に出回るようになると、作物の収穫が格段に増しました。米作りのため、という名目を掲げて幕府も認めていたようですが、なにより綿花栽培による増産が人々の生活の質を上げるのに役立った、とのこと。
それまでは、上流層には絹布が流布していたけれど、木綿はふんだんにというわけではなく、庶民は麻などの植物の皮を織物の材料にしていた、と。木綿が容易に手に入るようになって、綿の入った布団も庶民の暮らしに浸透していった、なるほど、と。

北前船、という言葉は、日本史で聞いたことがあるでしょう。その北前船の日本海を北へ向かう荷には、古着が喜ばれた、という。古着とは京都人が来ていた絹布の女物和服が、山形や秋田の港に立ち寄ると、あっという間に買い手がついて、そのお金でコメを仕入れて、コメの生産ができない蝦夷に運ぶのです。ついでに書くと、蝦夷では米作をしていないから、そもそも藁がない。藁がないから、筵や、カマス、といった魚の肥料を入れるものもない。だから、藁製品も東北各地の港で仕入れなくてはならなかった。
私たちが育ったころは、日本海側は裏日本と堂々と表現されていたけれど、江戸期にあっては、日本海側のほうが商取引が多くて、だから豪商なども存在し、おのずと都の文化も根づいたりしたのです。…私はまだ、秋田、山形は行ったことがありません。そういう観点から、酒田、角館などを尋ねてみたいな~と。

いっぱい、書ききれないほど(当たり前。6巻にもなる長編ですから)知りました。
頭の中は、まだその余波の中にいます。
そんな、福祉とは程遠く、規制の多い身分社会にあっても、わかる人はいるし、わかる人を探り当てる嗅覚を備えている、というか、人を見る目、に行きつくのでしょうね。

その、司馬遼太郎が人物を書くときの、焦点の当て方がお気に入りなものだから、信奉者になっちゃうのでしょう。

いつの時代も、多少の違いはあるとしても、大勢で構成されていることは似たり寄ったり。その中で、自分はどういう人でありたいか、ということに行きつきます。

長電話する相手もいないので、文句を言わない、このブログが長電話の相手です。苦笑













コメント (2)
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