哲学の科学

science of philosophy

理論を語る人々(13)

2023-02-11 | yy87理論を語る人々


理論理論
理論はなぜ存在するのか?理論はなぜ間違うのか? 
理論に淫する、という。理論が好きな人が多すぎる。黙ってコツコツやればいいのに。
昔の人はしかし、理屈を言わずに地道に生きていたのか?いや昔の人ほど、迷信と宗教にはまり込んでいたのではないか?
多神教の人々は多くの小さな理論を身にまとって習慣で生きています。テレビもインターネットも小さな理論を無数に教えてくれます。
大きな宗教の人は正しい説教を聞きに行きます。それは当然の真理でもありプロパガンダである場合もあります。いずれにせよ、大きな物語や大きな理論を語る人々は小さな理論をさげすんでいます。小さな理論、大きな理論。どちらも理論ですが、どちらが正しいといえるのでしょうか?■



    
(87 理論を語る人々 end)









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理論を語る人々(12)

2023-02-04 | yy87理論を語る人々


日本人特別理論
日本人は特別優れている、あるいは、特に劣った人々だ、と叫ぶ主張。理論も伴なって熱心に展開する。拙稿でも挙げましたが(拙稿78章「日本人論の理論の理論」)、昔からちまたにあふれています。このような国民性理論、特に日本では好まれるらしく江戸末期以来、いつの時代も、何度でも出回る理論です。 
最近は議論が科学風に精緻になってきて、グラフなどデータを図示する記事が目立ちます。つまり日本を示すドットが群集する諸国のドットから隔たっているような図が好まれて引用されています。たとえば寿命世界一、健康保険世界一、相続税世界一、長寿企業世界一など国勢の優秀性がよく引用されます。
逆に低経済成長率、低出産率、高未婚率、高自殺率、低幸福度率、低自己肯定率、低開放気質率など、日本人ダメ理論に使われるグラフも多く示されます。
日本特によし、あるいは特にダメ、という極論が好まれるのは、インターネット世界の常ですが、マスメディアも昔からイデオロギー好きの伝統が残っているらしく日本人論談義は実態の必要以上に話が弾むことはよく知られています。
拙稿の見解では、残念ながら水を差すようですが、日本人は今や特別な人々ではない(拙稿78章「日本人論の理論の理論」)と言わざるを得ない。
高度成長期を終えたこの国は、成熟期の先進国の常として、資本と技術を外国に移し金融の収入で豊かさを維持しています。現代の日本人は間違いなく平和で富裕な生活を享受しています。
マスメディアは、もともと感情に訴えるビジネスですから、平安な事象に言及せず怖い予測を強調し、豊かに平和を楽しむ幸福感を否定します。安心ですか不安ですかのアンケートを繰り返せばふつう不安が多数派になります。
しかし実際、体制を覆す気はない。変化は嫌いです。国民はデモもせず選挙では与党に投票します。
テレビを見れば暗い話題が多い。明るい話は自分の周りにもありません。つまらない毎日に思える。差し当たって困るということはないが先行きは不安。それでもささやかな楽しみはあります。それで毎日を過ごしています。
これは特別な人々の態度とはいえない。他国の人々と比べて特におかしいところはありません。豊かで平和になれば当然だれもそうなるでしょう。そういう時代に達した国です。













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理論を語る人々(11)

2023-01-29 | yy87理論を語る人々


カタストロフィーに達して、交代が自然発生する現象を待つしかないのでしょうか?森林の交代のように高木が倒れ地面に日光がさせば若木が育つ。高木は倒れるほうが良いのか?山火事はいつ起こるのか?
高木林の林冠にはしかし、小型の動物、昆虫類が多数棲息している。むしろ日がささない地面より高木の林冠は、はるかに生産性が高く、そこからこぼれ落ちる栄養を頼りに暗い地面の動植物は生活しています。
とりあえず山火事は防止すべきでしょう。しかし完全な安全対策は長期的には結局、危険を蓄積する、という状況が現代システムのパラドックスです。
人類絶滅のカタストロフィーは困る。それでもそれを絶対さけるには、小さなカタストロフィーは地球上の所所で起こっている必要があるのかもしれない。
火事が地球全体に燃え広がることを防ぐには、江戸時代の火消しのように密集した周辺の家屋を破壊して間引くシステムが必要かもしれません。
現代の真の危険は、実は、ゼロリスク、ゼロエピデミック、ゼロ戦争、ゼロクーデター、ゼロ不況を目指す社会システムにある、ともいえます。












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理論を語る人々(10)

2023-01-21 | yy87理論を語る人々


世代交代理論
疫病ウイルスは数週間単位で世代を交代し新変異株は繰り返し世界に拡散する。そしてその進化は人間社会の環境に適応し最新医学の反撃に耐える。いま世界を支配する新型コロナウイルスは数年におよぶ長期政権となっています。
赤の女王(一八六五年 チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン/ルイス・キャロル「不思議の国のアリス Alice's Adventures in Wonderland」、一九九四年 マット・リドレー「赤の女王/性と人間性の進化 The Red Queen: Sex and the Evolution of Human Nature」拙稿60章「エゴイズムな人々」)の言う通りです。
現代資本主義の時代、人々は希望に向かって走る。走らなければなりません。競争について行かなければならない。経済を回転させるためには絶えず技術と市場構造を革新し、それに合わせて世論と政権も交代させ続けなければなりません。
現代社会でそれを実行できるのは誰でしょうか?いまや政府や政治家はその必要を感じている。大学の知識人やマスメディアも必要は分かっています。しかし彼らにはできません。
だれもが赤の女王と一緒に全速力で走っているのに、進んでいるような気がしません。









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理論を語る人々(9)

2023-01-19 | yy87理論を語る人々


ユニコーン理論
一儲けをたくらむ若者、一発当てて成金になった人々。成り上がりもの。ある社会では嫌われるが、別の社会、別のカルチャーでは憧れられる。
少女に好かれる一角獣。これが育つようならば経済の将来は明るいという考え方がユニコーン理論。
これ、日本では少ない。若い起業家は出てきません。実際、一獲千金をつかんでも人々には案外もてません。成り上がりの若い社長に大事な金を預ける人も少ない。
これではまずい、と政府も心配しているようですが、国民の保守傾向は変わりません。
税制インセンティブなどを用意してユニコーンに出てきてもらって産業を活性化しようというのが政府の狙いでしょうが、それだけでは無理でしょう。順序が逆で、むしろ産業が活性化するような環境にユニコーンが頻出する。
野心を燃やす空気、つまり若者の自己肯定感が強く若い活躍を期待する社会の環境があればそれに引き出されて多くの挑戦が試みられます。それに伴って種々のデマンドが作られテクノロジーが育ってくる。逆の順序での政府誘導はうまくいきません。









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理論を語る人々(8)

2023-01-07 | yy87理論を語る人々


明治日本の成功を追って共産中国、韓国、東南アジア諸国は殖産興業に成功しています。しかし先進国になった日本をはじめ欧米先進国では自分が先頭を走るしかなくなる。過去の成功例に追従するだけの殖産興業理論は使えません。
今世紀の成功産業であるIT産業は自由主義の米国で発展し各国はこれを追随しています。やはりGAFAのように自由闊達で自信満々の野心家による創業を期待するしかないのでしょうか?
自由競争理論
現代の社会は経済の大成功者つまり超富裕層によってリードされているとみる理論もあります。
珍奇なアイデアで風変わりなシステムを売り出しても、たいていの国では政府、会社やマスコミの偉い人たちに叱られます。
そうでない環境、自由闊達の世界にいる野心的な人々。戦後の闇市とか、奨学金や研究資金が潤沢な欧米のエリート大学とか。シリコンバレーとか。アイデアで大いに儲けて金持ちになれば尊敬されてフォロワーが集まる。失敗しても再起できる。資金募集すれば可能性に投資する人が多いという風土。
そのような場で自由競争を勝ち抜く人々が経済社会をリードすることが社会をよくする、という理論があります。自由競争理論です。








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理論を語る人々(7)

2022-12-31 | yy87理論を語る人々



殖産興業理論
この政治システムではしかし、政府、与党の内部以外では優秀な人材が活躍できません。独裁は自由な活動を抑圧し社会の沈滞を招く。科学技術も発展しないし経済も発展しないでしょう。国全体が貧乏のままになってしまうのではないか?
それならば独裁国家が計画的に殖産興業を進めれば良いだろう、となります。専制君主、独裁国家主義、軍事政権など共産主義国家以外でも、独裁性が強ければ実行可能です。











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理論を語る人々(6)

2022-12-23 | yy87理論を語る人々



共産党独裁理論
革命が成功し、共産党独裁が最良、と決めるとして、さてそれでは共産党が権力を維持するシステムはどうあればよいか?自分たちの独裁以外のシステムが出てこないように毎日、悪い芽を摘まなければいけません。
そのためには利口そうな口を利く人々の勝手な動きを抑えて一人の偉大な指導者に権力を集中することがよい。その手段は力と恐怖の政治、つまり軍と警察を筋金とする官僚組織を全国的に組み上げてマキアヴェリズムに徹する(拙稿69章「モブのボスはモブなのか」)、人々に対しては、自信たっぷりの偽善に徹することが最良、となります。 
いわば毒を以て毒を制する、劇薬療法です。健康を取り戻すには長い時間がかかりそうです。











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理論を語る人々(5)

2022-12-17 | yy87理論を語る人々


幸福度調査での回答分析データによると未婚女性の幸福度はたしかに既婚女性のそれよりも低い、となっています。ところが詳細分析では、子持ち有職既婚女性の幸福度は、子無し専業主婦のそれよりも低い、となる。
女性有職者が増え続ける限り少子化は当然、との理論的背景が見えてきます。
女性人生の未来を米国に見るのは乱暴な理論ですが、その国では六〇歳前後の未婚子無し女性の幸福度が最高、以下幸福順に、既婚有子男性、既婚有子女性と続き、最下位は未婚無子男性です(米国国勢調査2018 Survey of Income and Program Participation)。 
これらデータが蓄積資産額、あるいは余暇時間などの数値と相関が高いことを分析すれば、少子化問題も社会学、心理学というよりもドライな経済学の範疇に近い問題と見ることもできます。

金持ち自己増殖理論
金を持たなければ金持ちになれない、という理論は昔から庶民の間にありますが、なかなかこれを断定するインテリはいません。今世紀になってからデータ分析に基づいたこの理論が表に出るようになり議論が精緻化してきました(二〇一三年 トマ・ピケティ「二十一世紀の資本 LE CAPITAL AU XXIe SIECLE」)。 
どうすれば金持ちになれるのか?青少年はだれでもこれが人生の最重要問題だと思っています。能力を磨き真面目に努力すれば偉くなれる、と偉い人は教えます。一方、これは嘘、という理論もある。
金持ち狡猾理論
金持ちはずるい、真面目な顔をしてダブルスタンダードを語る。金持ち偽善論です。これも昔からあり、これの理論化における金字塔は共産主義理論(一八六七年 カール・マルクス「資本論 第一部」)です。
共産主義理論
資本家といわれる人々がいます。彼らは金持ちで金を使って会社を作りあるいは買い、会社を使ってさらに金を稼ぎ、その金でさらに会社を大きくする。つまり資本は自己増殖する。金持ちは何代にも渡って金持ちの家系を維持できます。
金がない人はこのサイクルに初めから乗れないから会社に雇われるしかない。それではいつまでたっても金持ちにはなれない。
そこで社会を平等にするためには資本家をなくそう、金持ちの私有財産を否定しよう、金で動くマスコミや言論人を追放しよう、資本主義諸国の干渉を排除しよう、という政治を人々が望むことがあります。
このような共産主義を実現するためにはこの政治思想、共産イデオロギーを堅持する党員が団結して革命を起こし独裁政権を作るしかない、ということになります(一八四八年 カール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス「共産党宣言」)。










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理論を語る人々(4)

2022-12-10 | yy87理論を語る人々


性別がないとまず子供がうまく作れない。結婚、出産、育児、家族。大昔からジェンダーは社会構造の主要な構成要素として存在しています。女は子供のために耐える。男は女のために戦う。同性間競争。嫉妬、差別、プライド、虚栄。現代社会にとってマイナスのように言われますが実は人口維持エネルギーの源泉でもあるのかもしれない。
性別意識は家族単位の社会を支える強力な駆動力です。が、強力であるがゆえに逸脱した派生理論も産む(拙稿54章「性的魅力の存在論」)。男性能力理論、女性魅力理論、母性理論、性的幻想理論、その他。人生を退屈させない機能がある。
女性蔑視理論はかなり手ごわい。少なくとも現代日本の局所最適解を支えています。

負け犬理論
三〇代未婚無子の女性を揶揄して負け犬という流行語がありました(二〇〇三年 酒井 順子「負け犬の遠吠え」)。昔から行き遅れ、という語があり、三十歳前後の未婚女性本人や親に年齢を意識させる社会の理論的仕掛けとなっています。
日本国憲法第二十四条「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」
つまり二人が合意する以外の条件はない。年齢など関係ありません。それにも関わらず、負け犬になるのは嫌な気がする理論的仕掛けになっているらしい。その負け犬理論とは何か?
女の人生は結婚するかしないかでまっぷたつに分かれる、結局は結婚しないとダメ、という理論。生涯未婚は不幸、というメタ理論が裏にあるようですが、これはあまり語られていないようです。










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