哲学の科学

science of philosophy

ノーチェンジャーゲーム(4)

2022-01-15 | yy81ノーチェンジャーゲーム


世界にはブランドを確立し百年も続く長命な企業が多くありますが、その四割は日本企業です。サントリー(株式会社壽屋)など老舗食品会社が多い。ブランドが確立していて世代を超えて愛好する安定顧客を抱えています。ゲームチェンジャーがいない。これらの会社はノーチェンジャーゲーム(拙稿の造語)であるといえるでしょう。
日本の会社は大卒一括採用から始まる年功序列終身雇用という安定指向のモデル構造を維持していて、社内からゲームチェンジャーが表れない、といわれています。その会社群が活動する経済界もまた新規参入を阻む業界慣行、行政指導、護送船団システム、系列下請け構造が顕著といわれています。この国のこのような下部構造は世界でも珍しいノーチェンジャーゲームを作っているといえます。

戦争や革命がない場合、上部構造の法制慣行、政治権力システムもほとんどチェンジしない。たとえば日本では(第二次世界大戦)戦後の上部構造は実質不変。憲法と立法行政司法三権の各システム、公務員制度、大学学校制度、運転免許制度、天皇制。ほとんど変わらない。これらのノーチェンジャーゲームは永久に続くように見えます。

思想、言論の自由に裏付けられているはずの大学やマスコミのランキングが変わらない。東京大学はいつも最高学府。朝日新聞は常に最上位。これも当然なのか?自由な競争があるはずなのにいつも順位が変わらないのはなぜでしょうか?

世界大戦争の後、平和が続くと国際序列も変わらない。国連安保理事国は常任メンバー不変。政治機構よりも国際経済機構のほうがまだ少し修正がある。ノーベル賞委員会はずっと北欧二国。
ファッションブランドのほうがまだ交代がある。ミラノからパリ、ニューヨーク。しかし実力は東京だと言っても日本でも少数意見。
これらのノーチェンジャーゲームはなぜ長期安定なのか?











自然科学ランキング
コメント

ノーチェンジャーゲーム(3)

2022-01-08 | yy81ノーチェンジャーゲーム


現代史におけるゲームチェンジャーの勃興と凋落を、典型として見せているのは(不思議な先進国といわれる)この国の社会と経済の変遷です。
明治維新以来、爆発的に富国強兵を達成し、アジアを席巻するかと見えた瞬間に大敗北を喫し、そこからまた急速に生産力を回復してついに世界一の工業力を誇るまでに至った日本。東アジア中華系諸国は日本の大成功を追って同様にゲームチェンジに成功しました。中国、台湾、韓国、シンガポールは現代の成功国家です。
一方、日本は世界最高の富裕国家となって二十世紀末を越しましたが、人口がピークを打ち少子高齢化が顕在化してきます。最優秀に見えたその日本産業システムは世紀末から徐々に生産性を低下させ、製品の代わりに資本と技術を輸出する金融大国に変容しています。生産性の低下により製造経済から金融経済へ移行するにつれ国内の経済格差は拡大し、福祉国家にならざるを得なくなっていきます。

では逆にチェンジしないゲームはどうなのでしょうか?ゲームがチェンジしなければ、そのゲーム内部のプレイヤー達は何のストレスもなくそのルールを信頼し、そのゲームに興じて毎日を過ごすことができます。ノーチェンジのゲームは当然その良さが好まれているはずです。

たとえば日本国憲法。変わらない。変えたくない。ということはこれが不変であることが、どこか日本人にとって理屈を超越した安心感のよりどころであり幸福の象徴となっているのではないでしょうか?
一九四五年から 二〇一四年までの間、もちろん日本では新憲法制定以来、改正は一度もなし。その間、米国憲法は六回、カナダ憲法は一九回、フランス憲法は二七回、ドイツ憲法は五九回、イタリア憲法は一五回の改正を行っています。
パラドキシカルですが、この不変憲法の改正を主張している自由民主党は、中国など共産党政権を除くと、世界でも珍しい長期政権党です。










自然科学ランキング
コメント

ノーチェンジャーゲーム(2)

2022-01-01 | yy81ノーチェンジャーゲーム


実力と自由競争を看板にしているプロ野球には、さすがに典型的なゲームチェンジャーがいます。二〇二一年の米国メジャーリーグ最優秀選手賞を取った大谷翔平はだれもが認めるゲームチェンジャーでしょう。こういうプレイヤーが出るとそのスポーツは俄然おもしろくなります。
公共のシステムにおけるゲームチェンジャーも、生活の質を一気に改善するものが前世紀には多く出現しています。 
完全に消えた昔の汲み取りトイレはくさくて不潔。上下水道工事は消化器系疫病を駆逐しました。浄化槽の技術も完璧になり、トイレは水洗のほかはなくなり、ついにはほとんどすべてがシャワートイレとなりました。
感染症に対しては抗生物質とワクチンが量産され、若年死亡率は低下し平均寿命はどこまでも伸びてきます。今後、遺伝子工学の応用によりがんも成人病も治療可能になるでしょう。現代医療システムの裏打ち構造としての国民皆保険制度の完成が真のゲームチェンジャーです。
軍拡競争というゲームにも当然ゲームチェンジャーが登場します。必殺リベンジャーとして、見えない海底に潜む核ミサイル搭載原子力潜水艦の開発は、事実として核戦争を抑止したといえるでしょう。









自然科学ランキング
コメント

文献