人工知能はコンピュータです。コンピュータは万能機械(チューリングマシーン)の原理で作られています。だから十分高性能のコンピュータを作れば、人間が作った問題である限り、原則としてすべて解けます(一九三六年 アラン・マシスン・チューリング「計算可能数、ならびにそのヒルベルトの決定問題への応用 On Computable Numbers, with an Application to the Entscheidungsproblem」)。
しかしながら二十世紀中は計算速度が遅くて実用上、人間の脳にはまったくかないませんでした。二十世紀末から発展した多層ニューラルネット構造の計算処理速度が速くなり、大量のデータを高速で処理できるようになったので、リアルタイムの反応が可能になりました。人間と会話もできるしリアルな三次元動画もすぐ描けます。
人工知能という語は一九六〇年代コンピュータ科学の黎明期に誕生し、SFやマンガの読者に愛され続けると同時に、近未来の革新技術として存在感と現実感を保ち続けました。
一九八〇年代末ころ、NASDA(現JAXA)にいた筆者も、宇宙技術の先端テーマを開始する意気込みで研究活動を開始しました。日本人工知能学会の会長、大須賀節雄先生のご指導を得て一九九〇年、第一回国際人工知能・ロボット・オートメーションシンポジウム(International Symposium on Artificial Intelligence, Robotics and Automation in Space 【i-SAIRAS】 )を立ち上げました。欧米の研究者の参加を得てその後隔年で各国をめぐって開催されています。
さて、老年の筆者が驚いたことには、最近、このSF的な技術が、一般マスメディアの注目を集めているらしい。
人工知能つまりAIが、碁や将棋の名人に勝つなど、急に人間に代わる知性を持ち始めた、といわれています。データ学習機能を洗練させた最近のAIは人間に代わるほど文章や画像が上手になってきたようです。
文書事務などでは人間と見分けがつかない能力を発揮する、といわれています。たいていの事務職はコンピュータに置き換えられて仕事がなくなる。つまり、サラリーマン職業の脅威であるそうです。