哲学の科学

science of philosophy

私はなぜマスクをするのか(8)

2020-06-27 | yy73私はなぜマスクをするのか


日本以外の国では、もともとマスクは嫌われていたので、今後数か月でマスク有害論が急復活しマスク装着率は急減するでしょう。マスクはコミュニケーションを阻害し感情を抑圧する野蛮な風習であるとされて、来年ごろのワクチン実現とともに世界中から消えていく運命にあります。
しかし日本では、拙稿で分析した理由で、たぶん完全に定着します。日本はマスク国として有名になりそうです。
もしそうであれば(海外旅行の時以外)私もしているでしょう。

私はなぜマスクをするのか?それは皆さんがしているからです。(二〇二〇年夏至)■







(私はなぜマスクをするのか?  end)



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私はなぜマスクをするのか(7)

2020-06-20 | yy73私はなぜマスクをするのか

この新型コロナウイルスの世界的感染拡大は、すでに中国で終息し、ヨーロッパでも第一波が過ぎ去り、北アメリカでも第一波は沈静化しつつあります。しばらく前まで恐れられていた南米、インド、アフリカなどの感染後進国の感染爆発も世界経済に致命的打撃とはならないようです。
ワクチンや治療法の普及が追い付くには一年あるいは二年以上かかるかもしれません。しかしそれでほとんどは元に戻る。では。感染対応生活(新しい生活様式new normal life)は消えていくのでしょうか?
パンデミックの恐怖は世代の記憶に刻まれます。半世紀以上それは残るでしょう。目に見えて残るものは、感染症医療システム(法体系、設備、組織、看護教育など)です。
それと、日本では、たぶん、通年のマスク高装着率が残る。これはこの感染者がゼロになってからも数年から十数年以上、維持されるかもしれません。
もともと、十数年前の花粉症増加とSARS上陸の前は、日本でも、夏にマスク姿は異様に見えていました。それが花粉症で急増し、さらに今回のパンデミックでついに全員マスクの国となり、この姿が全世界に輸出された形です。 









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私はなぜマスクをするのか(6)

2020-06-13 | yy73私はなぜマスクをするのか

人間は身体にかかわる物体を介して現実を認知する(二〇一三年 ランブロス・マラフーリス Lambros Malafouris「物体はいかに心を形作るか?How Things Shape the Mind: A Theory of Material Engagement」)。常時身に着けるマスクというものは自己と世界との関係認知に影響をおよぼさないでしょうか?
マスクをしたお母さんがベビーカーを押して歩いています。全員マスク姿の大人たちを見ながら育つ子供たちはふつうに発達できるのでしょうか?
口が見えないと表情がよく分らない。子供は周りの人の表情を見て感情を認知し他人の心を感知できるようになります。幼児が現実世界を理解できるようになるには人の心を読み取ることが不可欠です(拙稿19章「私はここにいる」)。この機会に、全員マスク現象に関する発達心理学の研究を取り上げる学者が現れてほしいものです。

顔(の半分)を見せない布あるいは不織布。どうしても自分を隠したがっている、という印象がしてしまいます。四六時中つけているとマスクが顔の肉になってしまわないか、心配です。嫁を脅すためにつけた般若の面が肉からとれなくなった姑の伝説(越前吉崎観音の霊験譚)があります。

マスクはラテン語mascaから派生した英語maskが明治期に輸入された外来語ですが、いまや完璧な日本語です。マスキング・テープは塗装の飛沫をカバーするもので、この用法が現代日本語のマスクに近い。外来語の常で原語のmaskには、日本語のマスクよりずっと広い用法があって、たとえばハロウィーンマスクというと骸骨のお面などです。能面もNoh mask。
今次パンデミックで各国のリーダーは「Wear a mask(マスク着用)」と訴えだしましたが、これはふつうのコンテキストでは「猫を被れ」という意味になります。ちなみに昔の日本語では覆面という正確な語がありました。覆面パトカーなどに原義が遺っていますね。
西洋人の持つマスク概念はこの覆面でしょう。覆面パトカーとか覆面強盗とか、猫被りとか、けしからん、ずるい奴、嫌われ者のイメージです。自分がするのは嫌なはずです。米国の大統領は、反科学主義者と批判されながらもマスク着用を拒否しているようですが、保守的な大衆感覚を頑固に遵守する政治家として自己イメージを守っているのでしょう。









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私はなぜマスクをするのか(5)

2020-06-11 | yy73私はなぜマスクをするのか

あるいは単に、家こもりが好き、とか。アウトドア派がそれほど多くない、とか。アウトドア生活は実はキャンピングカーなどに金がかかりすぎるからしない、とかいう理論もできます。
逆に欧米など、マスクを嫌うカルチャーのほうが隠された特有の動機を持っているのかもしれません。
街なかに犯罪者やテロリストが多いから顔を隠すと疑われる。とか、言葉もしゃべれない下層の外国人と思われないように正面から人の顔を見て大声でハローとあいさつする習慣にしている、とか。いつでも自我を全面に出すべきだという信念、とか。これが社交好きを助長して大声での立ち話、握手やハグ、あるいは会食やパーティ、集会やデモの頻度を上げているとなると、感染拡大に貢献していると言えるかもしれません。
しかしながら結局どの理論も完全な説得力に欠ける。実は、マスク高装着率と低感染率は偶然、相関が高いだけかもしれません。パンを食べるよりもコメを食べるほうが感染率が低い、という理論はあまり言われませんが、その程度のこじつけかもしれない。マスクと関係なく、もしかすると単に、保健システムが完備しているなどで日本の老人が元気なだけ、という巷間の俗説が一番当たっているのでしょう。

さて、善男善女が必ず身に着けるマスク。
マスク装着率が五割を超えると加速度的に装着率は高まる。市場理論では暴走現象(スタンピード)といいます。スマホもそうして普及しました。いったん普及率が八割を超えると、所有している理由を考える必要がなくなります。自分だけ所有していないと不安。自分だけ身につけられないとなると外にも出られない、社交もできない。理由もなく不安になります。
何のためにつけているかは、どうでもよくなります。とにかくつける。習慣になっているというか、毎朝、顔を洗うのと同じでしょう(拙稿65章 「私はなぜ顔を洗うのか? 自我の存在論補」)。
しかし全員がマスク姿で歩いている都市の風景は、慣れてしまいましたが、あらためて見直してみると、不気味なホラー映画のようでもあります(日本社会をそのまま描けばホラーになる、と芥川賞作家が書いていましたが)。ときどき見る西洋人の家族は子供も大人もしていない。この人たちがおかしな人たちなのか?残りの全員がおかしいのか?








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私はなぜマスクをするのか(4)

2020-05-30 | yy73私はなぜマスクをするのか

歴史上最大といわれる今回のパンデミックですが、統計(感染率、死亡率、失業率その他データ)によれば日本での感染制御は欧米諸国よりずっとうまくいっているようです。これに全員マスク現象がどこまで貢献しているのかは評価が分かれています。
理論はいろいろありますが、現象の事実として、今回、東アジアの感染制御は成績がよい。これらの国でのマスク装着率は高い。それが報道されるから、ふだんマスクが嫌いな欧米の人々も最近はマスクをつけたがっているようです。

鶏が先か卵が先か?マスクをするから感染率が低いのか、感染率が低く保てる社会の人々がマスクを好むのか?あるいは別のある要因が結果としてマスク高装着率と低感染率を同時に引き出しているのか?
社会的自意識のカルチャーによる違いがあるかのようである点が興味を惹かれます。つくれば、風が吹くから桶屋が儲かる式の理論がいろいろできるでしょう。
たとえば、仲間は信用しないが権威には盲従する大衆は、マスクによる仲間との社交性の低減は受け入れる一方、政府に誘導されやすく外出禁止、越境禁止、自主隔離などの規制を受け入れやすい、という理論。悪く言えば盲従、よく言えば自主規律的。欧米のジャーナリストなどが批判あるいは賞賛の論調として書いています。しかし本当でしょうか?
あるいは、自己防衛が強い生活態度が働いて、健康管理に熱心、あるいは他者の視線を嫌って不快でもマスクを常用する。閉鎖的で非社交的なので交流の少なくなる退屈な外出禁止を守ることがつらくない。などという理論もありそうです。これもけなせば臆病、褒めれば慎重、である国民性といえる。







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私はなぜマスクをするのか(3)

2020-05-23 | yy73私はなぜマスクをするのか

さて、科学的には、人どおりが少ない道を歩いているのに、マスク着用は必要ありません。2メートル離れていれば唾液飛沫は顔に到達しない。道端で、大声で井戸端会議をしない限り、その場での感染はないでしょう。しかもそうすればマスクの有無にかかわらずリスクは大きい。長時間の会話など濃厚接触のあと手で鼻や口に触れれば感染はあります。人々はそれを知らないのでしょうか?
マスクを使えば顔が見えにくい。これは髭剃りや化粧の手間が省けます。だいたいが、化粧しているかどうか人に見られるのも煩わしい、という気持ちがあるでしょう。さらに茶色い歯を隠す、歯並びを隠す、顎ラインを隠す、アイラインを強調するなど、美容アイテムとしても使える。政府がくれたこのマスクは洗うと小さくなって顎が大きく見える。美容の点で落第のようです。若い女性がこれをつけている姿は見かけません。
しかし、面白いのは社会心理学的な理由です。マスクは視線を防げる。あるいは防げているような気分になれる、といわれます。他人からの視線が怖い、あるいは怖いというほどではないが、不快だ、という人はかなりいるようです。人に表情を読まれることが不快だ、あるいはそのために他人の前で自分の表情をコントロールしていなくてはいけないので面倒だ、という気持ちでしょう。

人間は、機嫌がよくないと口の形がへの字になったり、とがったりしてきます。一人で外を歩いているとき、ふつう、たいていの人は、それほど機嫌が良いわけではない。それをマスクで隠せる。これは便利。この目的で使っている人はかなり多いらしい。
さらに顔ばれ防止、匿名性、名無しさん、忍者や透明人間になれるような感じがする。コミュニケーションゼロですませると思える。すれ違う人を無視しても許されるような気がします。
その目的でつけると伊達マスクといわれます。伊達メガネ、伊達スマホ、伊達ヘッドフォン、伊達フードなど他人とすれ違う時、あるいは同室にいるときでも、目をそらし相手がいないものとしてしまう。自他の存在感を消す効果がある便利なアイテムと思われているようです。
防具をまとうのが好きだとしてもそれをつけているには、なにか、それなりの正当な理由が必要です。花粉防護、寒冷防護、顔ばれ防護、鼻に飛び込む虫からの防護・・・本当の目的は何なのか?本人も自覚していなかった。それがいまや、正当な理由は、言うまでもない、アウトブレーク阻止です。

いずれにせよ、マスク装着者は、自分の身体に作用しようとする災厄を恐れている、という自分の姿勢を隠す気はないようです。自分は相当な安全志向である、あるいは、人見知り性格である、だからマスクは外せません、あいさつやコミュニケーションは勘弁して、というメッセージを発することをよしとする。その含意が公共の場でのマスク装着に伴う。十字架のネックレスや魔よけのイレズミなどもそのたぐいでしょう。
逆に、この時節、少数であることにひるまない非装着者は、自分はそこまで安全志向ではない、身体は頑丈だし弱虫ではないから多少の感染リスクは怖くない。臆病者とか人見知りと思われるのは恥だ。自分は明るく挨拶できる。コミュニケーションは好きだし、大事だと思っている、という明らかなメッセージを発していることになります。






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私はなぜマスクをするのか(2)

2020-05-16 | yy73私はなぜマスクをするのか


したがって必須の防御アイテムというまでの有効性はないようですが、そう思いたい魅力がマスクにはあります。この防具を身につけなければ外出は危険で歩けない、という信念が常識になってきたようです。
テレビで政府、行政や有識者あるいはアナウンサーの言っていることを注意深く聞くと、マスクをつけろとは言ってはいますが、それは社会の感染拡大を防ぐためという含意で言っていて、マスクで他人の出すウイルスの危険を遮断できるからとは言っていません。
人々が自己防衛に必須と誤解してマスクを常用すれば結果的に感染拡大を抑制できるのであえて誤解を放置しておこう、という暗黙の了解が行政とマスコミの側にはあるのでしょう。

そういう状況ですが、この防具は、先日までどこの店でも売り切れでした。政府が全世帯に郵送したのも、異常な需要を抑制するためだ、と官房長官は言っていました。見えない恐ろしい敵に備えるには、ワラでも棒切れでも、それしかなければ握りしめていたい、という不安心理を政府はよく理解しているのでしょう。
開店前から並んで抱えるだけ買い占めている人がたくさんいたそうで、テレビが映していました。流通過程で多数が闇に流れるのでしょう。
ちなみに闇市場も一種の市場であるのでそれなりの効用があります。つまりどうしても欲しい場合、数倍の高値を出せばどこかで買えます。これも原始的な意味で需要供給曲線に沿ったマーケット原理でしょう。この瞬時的高価格バブルは、マーケット理論の通り、政府の介入も不必要なくらい短期間で崩壊したようです。
まずだれもが所有しているという社会心理学的圧力がかかる。レアなアイテムは、手に入りにくいという理由によって、スパイラルに希少価値が上がる。どうしても手に入れたくなります。自分だけ所有できない、となったら大変です。

しかし、なぜそこまでしてマスクを確保し常時それを装着しなければならないのか?
筆者は政府に支給されたマスクを洗って使っていますが、そのほかに押し入れから探し出した不織布マスク一箱とN95もあったので買いだめに行きませんでした。案外早く出回りが戻りましたが。






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私はなぜマスクをするのか(1)

2020-05-09 | yy73私はなぜマスクをするのか

(73 私はなぜマスクをするのか begin)





73 私はなぜマスクをするのか?

郵便受けにマスクが入っていました。政府が全国民に郵送したという。とりあえずそれを顔につけて散歩に出かけました。不要不急ではなく健康維持のために。
出歩いている人はまばらですが、皆マスクをしている。私もしています。
しかし、私はなぜマスクをするのか?
マスクをする理由について検索すると、膨大な数のインターネット書き込みが、医学的、疫学的、美容的、心理的、社会的あるいはカルチャー的な理由を語っています。
筆者の場合、その理由は、はっきりしています。皆がマスクをしているから私もしているのです。
緊急事態宣言が出て以来、道行く人々は全員がマスクをしています。たまにしていない顔を見ると、西洋人です。その西洋人も二人連れのうちの女性はマスクをしたりしているので、全くしていないのは幼児と犬だけです。
そういう事情ですからマスクをしていないとコンビニにも入りづらい。葬式にサングラスで出席しているみたいな違和感が醸しだされてしまいそうです。

テレビなどの街頭インタビューを見ると、他人からのウイルスが自分の中に侵入するのを防ぐための必須アイテム、と人々は信じ込んでいるようですが、西洋医学の常識では違うようです。
くしゃみなど唾液飛沫の空中拡散は二メートル以上は到達しません。一方、対面の(数十センチまでの)至近距離でマスクなしの人の(せき、くしゃみ、大声など)強い呼気に伴う(感染可能危険濃度の)唾液飛沫は受ける人のマスクを通して目鼻の粘膜に達する確率が相当高まるようです。いずれにせよ、その場合、ゴーグルなどで目からの感染も防がないと自己防御の目的では片手落ちでしょう。
つまりマスクは、感染していない人の自己防衛には効果が薄いが、自分が感染していた場合、感染を拡大する源となることを防ぐには有効である、とのことです。






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