哲学の科学

science of philosophy

人工知能は人間になれるか(12)

2023-08-26 | yy90人工知能は人間になれるか

本章のテーマであるAIの完全な人間化は、現代技術の延長により将来の実現は可能です。しかしそれには膨大な技術開発と基礎データ の蓄積が必要です。

インターネットが今日の大規模データシステムに達するまでには初期の試行から数十年かかりました。今後それほどの期間、次世代の科学者と政府が、人工知能の完全人間化を目指して、経済目的が不明瞭なまま大規模の努力を続ける価値観を維持できるか?火星有人探検とどちらが早いかでしょう。
実現が見えない間は途方もなくむずかしい技術に見えるものも、実現してしまえば魔法でも神秘でもない。人間とまったく同じものとみなせるAIは、いつの日か(ひ孫の世代か)、当たり前のものとなります。そのときその膨大なアーカイブデータは宇宙船に乗って外の太陽系に向かうでしょう。■









    
(90 人工知能は人間になれるか end)





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人工知能は人間になれるか(11)

2023-08-19 | yy90人工知能は人間になれるか

では、本題に戻って、人間そっくりのAIが実現したとしてだれが買うのか、どう使われるのか、を考えてみましょう。
コストがタダ同然に安くできれば、もちろん、SNSのように普及するでしょう。おもしろいというだけで皆がアプリを所有するようになります。
そうでない場合、高価なAIを企業や富裕層が購入あるいは課金サブスクライブに登録するとしても売上合計は膨大な開発費をペイできるのか?しかも製品は人間そっくりな外見と行動をするディスプレイ上の動画です。
高額で買って満足できるか?
人間そのものとのテレビ会話で用を足せるではないですか?人間の相手に求めるものと同じニーズならば。

つまり(拙稿の見解によれば)AIはいつか人間になれる可能性を持っているが、人間化を目標とする大規模の研究開発は近い将来にはなされません。
代わりに広範なニーズに対応する種々のAI技術が今後発展し、商業的な成功によって普及するでしょう。そのうちのいくつかをアカデミズムなどの非商業的研究目的を持つ研究者が利用して、人間そっくりのAIの実現を試行研究として目指すことになります。長期にわたる小規模の研究試行を経て、それが成功するまでは、AIは人間的にはなりません。













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人工知能は人間になれるか(10)

2023-08-12 | yy90人工知能は人間になれるか

では、いつになればAIは本当の人間になれるのか?
不可能を可能にするには神秘的な超自然の魔法が必要なのでしょうか?人形のピノキオが本当の少年に生まれ変わるためには、善行を積んで妖精の神秘に救われるしかありませんでした。
古来、生命や精神の神秘に対する人間の感性は、霊魂など超自然の現象として理論化するしかありませんでした。現代生物学は、しかし、生命や脳機能の理解に超自然の存在を必要としません。地球生物は山や川と同様に地質現象の一例として出現しています。人間の知性も感性も同様に、科学としての地質現象の末端的な一部といえます。特に神秘と感じる必要はありません(拙稿34章「この世に神秘はない」)。
そうであれば、地球地質や生態系の進化と同様に、現代人の活動であるAIの発展が、今後、ごく近い将来(六〇年くらいか)大量かつ多岐に渡れば、偶然が作る超短期の進化はあり得るでしょう。

たとえば次のような技術進化の経路が考えられます。
AI全体の市場が拡大すれば種々の周辺技術が発展するでしょう。そのうちにはYouTubeやテレビ会議などの動画データの構造化がAIに蓄積できます。これはすでに始まっています。
その技術のコストパフォーマンスがある閾値を超えれば、その新しいAIは市場を席捲できます。
その発展過程で、状況に応じた人体の発声モード、人体のジェスチャー、表情、姿勢のダイナミックな変化から体温、発汗などまで人間特有の身体表現データを学習して、それを生成するAIも作られるでしょう。
その製造コストは、市場規模が拡大すれば、低減していきます。自動車もスマホも普及率がある閾値をこえれば、爆発的に普及しました。
エンジン駆動の馬車が将来どのような自動車に発展していくのか、そしてどう使われるのか、黎明期の発明家たちは正しく予想できませんでした。珍奇な発明品はなかなか売れず、発明家は資金に窮していました。それがいつになれば生活必需品になれるのか?
AIの将来もどのような形になるのか、どう使われるのか?現代の私たちには想像できません。













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人工知能は人間になれるか(9)

2023-08-05 | yy90人工知能は人間になれるか

視覚に訴えればよいのでしょうか?

画像や動画の生成にもAIは実力を発揮しています。これらを組み合わせて洗練させれば、人間そっくりの人工知能が作れそうです。
ディスプレイにはリアルな人の顔が映って動き、会話に応じてくれる。喜んだり怒ったりの表情もリアルです。この場合、相手を人間と思って会話を続けられるでしょうか?もちろん、相手が人工知能であることは知らないとしてですが。

この問題も実は、作りこみの精巧さ、に依存します。生成AIを使って作った画像や動画で十分精巧に作った製品は人間と間違えてもらえるでしょう。私たち脳の視覚情報処理も生成AIと同じ構造であるからです。
音声と視覚ばかりでなく、雑音や振動、におい、触覚、平衡感覚など体感、会話での動的な反応タイミング、などを実時間のバーチャルリアリティでそっくりに体験できれば、相手の存在感を人間そのものと感じることができそうです。しかしそこまで精巧な作りこみには、現状の技術は到達していません。
生身の人間と対面で対話しているのとそっくりな、どんな場面にも対応できるバーチャルな性能を実現するまでにAIを訓練するためには、それに適切な学習データを集めるためのたいへんな人力、つまり膨大な開発コストがかかるからです。
そのコストに対応する利益はどこから出てくるのか?つまりコスト対パフォーマンスの高さが要求されます。
現実の社会は、AIを真に人間化する夢を目指して、宇宙開発のように、そこまで巨大な国家的努力を集中するでしょうか?それよりも、多方面の違う方向に発展させて確実にニーズのあるビジネスと産業化に向かう可能性が大きそうです。












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