哲学の科学

science of philosophy

人工知能は人間になれるか(8)

2023-07-29 | yy90人工知能は人間になれるか

それで人工知能が人間になれた、と言えるか?
無理でしょうね。
もともと、実務に使われる文章は、論理的で形式的ではあるが、建前だけで作者の本音が現れない、主観性のない叙述です。機械的な処理で終われるように作られています。そうであるから他人同士伝わる。もともと行政や契約やビジネスなどの実務に使われてきた表現から発展したものです。
もっと人間的な感じのする文章、ドラマや詩や歌曲に使われる文章ならばどうか?小説は、脚本はどうか?ラブレターはどうか?
現代の生成AIはこちらも得意です。注文に合わせて、それらしい言語現を作ってくれます。しかも生成応答が速い。であるからチャットは楽々。相手に合わせる実時間の会話も得意です。声も出せます。
人間の話す言語というものは、実は脳の言語中枢でコンピュータと同じように機械的に生成されるもの(一九五五年 ノーム・チョムスキー「言語理論の論理構造The Logical Structure of Linguistic Theory」)であるので、AIはそっくりにマネできてしまうのです。
逆にいえば、そっくりというよりも、コンピュータはそもそも人間の言語と同じ原理(チューリングマシーン)で作られているので生成AIが人間の言語を使えることは当然といえます。 

現在、生成AIの到達した実用性はすばらしい。しかしこの達成と、AIが人間になれるかの可能性とは違います。AIには全くリアリティが足りない。このままでは、AIと付き合ってもとても人間そのものとは思えません。なぜリアリティが足りないのか?










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人工知能は人間になれるか(7)

2023-07-22 | yy90人工知能は人間になれるか

いまの勢いで人工知能が発達していくと、数年後には爆発的な発展期がくる、という予測を語る人が多いようです。もしそうだとして、人工知能は、あるいは人工知能を搭載したロボットは、はたして人間にそっくりの物に進化するのでしょうか?
自動車が発明されて、改良が続き大発展した結果、馬のようなものに進化したか?むしろ自動車は馬とは似ていないものになってしまいました。今後も自動車は改良されていくでしょうが、馬に似るものにはならないでしょう。
生物としての馬を人工製造しようと思う人は誰もいませんし、需要も出ないし研究予算も出ないからです。

自然言語生成AIのビジネス応用が最近の流行ですが、実績を評価するには時期尚早です。流ちょうな文章を生成できるので翻訳や要約には実用されそうです。しかし実績の信頼性を積み重ね、実務家を代替えできるといえるまでには長い試用期間が必要です。
その間、数年間にわたり人間が一字一句査読しながら文章を完成することになります。もしAI生成文が精度高く、読みやすいならば、査読者の仕事は冗長になり、退屈になるでしょう。価値が低下して報酬も減り、やめていく人が多くなります。ついには人手不足を理由に査読業務はなし、になります。
人工知能による文章生成工程が完成し、査読不要で社会に信頼されれば、いずれビジネスでも、私信でも、SNSでも、どの文章実務も無人化するでしょう。









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人工知能は人間になれるか(6)

2023-07-16 | yy90人工知能は人間になれるか

鉄腕アトムは百万馬力ですから、重機より仕事効率がよいし、最新兵器よりも破壊力が強いようです。そうであればかなり役に立つでしょう。しかしそのような目的では、人間そっくりのロボットを開発する必要はなく優秀な人間に強力エンジンを持たせる、または最新型兵器に搭乗させればよし、となります。あるいは通信装置が完全ならば遠隔操縦で十分でしょう。
結局、人間そっくりのロボットが量産できるようになったとしても、そのマーケットはどこにあるのか?奴隷の代わりにこき使えるから便利、あるいはラブドールよりは高価で売れるだろう、などあやしい用途くらいしかなさそうです。
そうであれば、この開発は最初から賛同者が集まらない。もちろん国家プロジェクトの候補にはなれない。その程度の盛り上がりでは、民間の大型開発にもなりそうにありません。
アポロ計画やヒューマンゲノム計画の国家投資が研究者集団と企業群の集中的努力を引き出した要因は、それが国家威信をもたらす人類の偉業であると同時に防衛と経済拡大に必要と認められていたからです。国家ニーズ、次世代の需要拡大そしてマスコミ受けの分かりやすさ、どれも必須です。
それらがそろった時は、競争相手に先を越されてはならない時です。賛同者が急増する。そうであれば、覇権国の国家威信をかけた競争目標に浮上します。
カギは結局、実現への巨大な期待がでてくるかどうか、でしょう。その先に来る新世界、新産業が目に見えてくるか、です。
正月番組になっても夏頃は消えていく短命な流行語ではだめです。投資が投資を呼ぶ本当のブームになれるか、バブルでおわるか?








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人工知能は人間になれるか(5)

2023-07-09 | yy90人工知能は人間になれるか

それと組織力です。疑似人間ロボット開発プロジェクトは科学省の大目標だったらしく、長官だった天馬博士は全組織をあげてアトム製作業務にまい進しました。当時の科学省の技術水準と組織力は世界抜群であったと思われます。
予算もたぶん巨額でした。世界を出し抜くことを目指した国家プロジェクトだった、でしょう。人類史に残るほどの偉業を我が国が達成したい、という国民的目標があったに違いありません。アポロ計画やヒューマンゲノム計画のレベルだったはずです。
二十一世紀の産業革命が人工知能だ、という人もいるようです。そして人工知能は近い将来、人間の心を持つ、そのとき世界は大転回する、という人もいます。もしそうであれば、そのブレークスルーは国家プロジェクトになり得る。
覇権国はどうしても次世代の核心となる技術の特許やノウハウを獲得しておかなければなりません。アメリカあるいは中国が国を挙げて取り組むはずです。
実現できれば、それはある時点で、たしかにシンギュラリティに達する。しかし資本主義の現代、この巨大投資がなされる場合、テクノロジープッシュではなくてデマンドプルでなくては無理でしょう。つまりそのような全世界的な需要が、現代のこの社会で出てくるのか、という問題です。

人間そっくりの人工知能あるいはロボットができるとして、その商品としての需要について根本的な矛盾がありそうです。人間そっくりの物で人間を置き換える必要はどこにあるのか?








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人工知能は人間になれるか(4)

2023-07-01 | yy90人工知能は人間になれるか

人工知能がどのような姿で表示されれば意識を持つ人間とみなせるか?テキストとして文字出力されるだけでは、こいつは人間じゃない、と言い捨ててしまえばよいでしょう(一九八〇年 ジョン・サール「Minds, Brains, and Programs」 [チャイニーズルーム問題])。女性の魅力的な合成音声で語りかけてきたらどうか?最近の技術では、かなり人間的な感じになります。
ディスプレイにリアルな女性の顔が現れて、流ちょうな語調で、表情豊かに話しかけてきたらどうか?たいてい人間と思いたくなりますね。
「気をつけろ。それは幻影だぞ。だまされるな」というセリフがマンガでは出てきます。
血色がよくて、明るくやさしそうな女性の顔が表情豊かに笑いかけて会話に答えてくれれば、こちらも警戒心がなくなります。さわやかそうな男性でもよし。子供ならばなおよいですね。
実際、AI作成者は表情を研究して、3D画像や立体造形で、そのような形態を出そうと努めています。
今のAI研究は、どの程度熱心に、人間そっくりのAIアバターの表情や動作を作ろうとしているのでしょうか?
この技術が近い将来、マスコミで騒がれているように飛躍的に進歩するためには、最高の才能を持つ科学者、技術者が最大の努力を集中しなければ不可能でしょう。どんな状況になればそれが実現するのか?
鉄腕アトム(一九五二年 - 手塚 治虫)は天才ロボット学者天馬博士の執念の研究努力によって実現しました。天馬博士の狂気の情熱はノーベル賞を目指すふつうの研究者の動機とはけた違いでした。
このような巨大飛躍の源泉となる動機はノーベル賞やギネスブックのように世界的名声を目指す程度のものではないでしょう。








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