どこかで発想を変えなければいけないのかもしれません。自己複製をする機構の設計はあきらめるしかないようです。
それでは設計によって実現することをあきらめたとして、ほかの方法で、どうしたら自己複製機構ができあがってくるプロセスを想定できるのか?
偶然に頼る、という方法があります。猿にタイプライターをたたき続けてもらえば、いつかは、シェイクスピア戯曲が書き上がるというアイデアがあります(無限猿定理)。筋書きの構想も作文も推敲も必要ない。無限の時間がたつうちにはどんな長編戯曲も書き上がるはずです。しかしこの想定には、その前に宇宙の終焉が来る、というオチがついています。
では、猿とタイプライターのペアの数が数兆組あって、猿が打鍵する速度が一秒間に数万回の超高速だったらどうか?シェイクスピアの戯曲ではなくて芭蕉の俳句ならどうか?うまく設定すればできそうな感じもしますね。
クリックの中心教義にこだわりすぎると、これ以上話が進まない。ジョン・フォンノイマンの自己複製概念も同じように物理的には実現可能性から遠いようなので、ここでこれらの教義や概念をちょっと脇に置いておいて、まず偶然に頼って進む道を選んでみましょう。
生物の構成部品である各種有機分子は、適当な温度で適当なイオン濃度の水溶液中に置かれると化学反応を起こしやすい。偶然に放置しておけばいろいろな高分子ができたり壊れたりを繰り返します。偶然おもしろいものもできる。種々の無機化合物を含んだ粘土、アスベストなど多孔質の固形物と水溶液がよどんでいる状態では、結晶や高分子が成長したり風化したりを繰り返します。
多孔質固体の形状が、偶然適当に、ミクロなフラスコや迷路やフィルターの役を果たすような形になっていれば、有機分子の反応は起こりやすいでしょう。ゲル状の有機高分子の絡まり具合によってはうまい具合に触媒効果もでます。そのようなミクロな構造が稠密に集積されていれば、マクロな分子(ポリマー、DNA,RNA,タンパク質、糖鎖など)の単位になる部品分子(モノマー、プリン、アミノ酸、糖など)も集積されるでしょう。
そのようなドロドロした液体を(川や海の水流などにより)無限回に近くかきまぜているうちには、小さな分子がくっつきあってだんだん大きくなり部分的にポリマーのような繰り返し構造をもつ高分子に成長する場合もあります。偶然に任せればほとんどは機能を持たないガラクタの高分子ができますが、偶然たまたま、部品の連結重合を媒介する触媒機能を持つ高分子もできることがあるでしょう。

① 『遺伝子DNAは誰が作ったのか』
地球上の全ての生命に遺伝子DNAが組み込まれていますが、1mとか2mとかの長さがあり、4種の塩基配列は複雑精巧で、自己修復機能まで有します。
こんなものが自然や偶然に出来るわけが有りません。作ったのは「遠い未来の人間」です。
② 『物質(原子)は誰が作ったのか』
地球上の物質(原子)は百余り有りますが、陽子・中性子・電子の3者で構成され、それ以外の構成は存在しないし、規則性とか法則性に支配されています。
中性子は中性子線を内包し、特定の物質(原子)もα線とかβ線などを放射して崩壊し、電子は電荷を内包しています。
こんな複雑な物が自然や偶然で出来るわけが有りません。原子を作ったのは「遠い未来の人間」です。
(uクォークとかdクォークとか中性子のβ崩壊で発生する陽子や電子ニュートリノなどの難しい話ではなく、単に『こんなもの(原子)が自然や偶然に出来上がるものか』ということを、お尋ねしております。)
③ 宇宙の始まりが無機であったとしても、進化の途上で有機(生命とか生活機能)が生まれ、さらに彼らが多様な進化を遂げたうえで、人間や様々なものが作り出された可能性は否定されるものでしょうか。
(胎児の成長過程で一時的に見られる「尾っぽ」とか「指の水かき」は進化の記憶でしょうか。)
④ 『私たちは人工的に作られた肉体を使って、人工的に作られた「場」で生活をしていますが、実は、今の世界は実在しない虚構であり、実在する本当の自分は「DNAや原子を合成する科学を持った遠い未来」(真実の世界)にいます。』という発想は、(無限回の問答は抜きにして)、成り立つでしょうか。
(平行宇宙だとか重畳宇宙だとか「メビウスの輪」だとかの難しい解釈ではなく、もっとシンプルで単純な答えが見つからないものでしょうか)。