さて、そういうことで想像の産物でしかない地球外左右対称多細胞動物。太陽系以外に属するいくつかの地球的天体の上で発生した生物系の中に、身体が大きく精巧な機構を備えるこのような動物にまで進化したものが出現したと仮定して、さてこのような地球外動物はさらに進化して人類のような存在になってくるのでしょうか?
地球上で現在の生物相を観察すると、ミミズやゴキブリなど大昔からほとんど進化していない生物がけっこう繁栄しています。みなうまく生きているようです。それらの生物観察から推測すると、進化というものは生物の形がどんどん変化していくものなのかどうか?適当なところでうまくいった遺伝子系を固定して、進化をやめて先祖と同じことを繰り返していればよいだろう、という生活の仕方が生物のあり方ではないのでしょうか?
そうは思えるものの、気候変動とか地形変動とか環境大変化があれば、進化現象が顕著になることも理論としては理解できます。恐竜の絶滅やガラパゴスの珍種進化などが実現しうることは、それ以前の生物相しか知らない状況では想像できないでしょう。生物の進化現象は、超長期の経過時間を要しかつ天変地異のような環境大変動を伴うので、人間の感性や常識に全く反する超長期にわたる自然現象です。実験室での研究やコンピュータの理論計算による具体的現象の推測は、ほとんど不可能です。まして安楽椅子に座って考えている筆者などに予測できる現象ではありません。
進化現象というものが存在すると思うことからして直感に反するので、そんなものはあり得ないだろうと思いたくなります。米国に多い反進化論者たちの心底もそこから来るのでしょう。
しかしDNAは意外と不安定である、ということも科学的事実です。DNAの複製機構は驚異的に精密ですが、その故かなり頻繁に故障する。ガンもそれですね。それを修復するメカニズムが生物体には何層にも重なって機能していますが、それでも故障が起こる。その場合、故障した個体を死なせる、あるいは生殖不能に放置する、という集団的保全機構が働きます。
それらの保全機構が完璧に近く働くにもかかわらず、わずかずつDNAの書き間違いは集積する。そうして、ダーウィンによると、種々の環境変化の機会に変異遺伝子が増殖してきます(一八五九年 チャールズ・ダーウィン「生存競争における適者保存あるいは自然淘汰の作用による種の起源について」Charles Darwin, M.A. On the Origin of Species by Means of Natural Selection, or the Preservation of Favoured Races in the Struggle for Life,1859)。
