私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

哀しき獣

2012-01-13 22:14:57 | 映画鑑賞
この映画にある哀しみはなんだろう。
金が欲しくてヴィザを手配し、韓国に出稼ぎに行った妻は帰ってこない。
滞る仕送りのためにかさむ負債。
妻に会うために人を殺める道を選んだ男の愛の物語とも思えなくはないが、そこに暗く影を落とすのは金の臭いだ。
妻が送金さえしてくれれば、自分たちの生活の拠点で金が稼げたなら、妻が金を稼ぎに韓国に行かなかったなら・・・

金さえあったなら、なんとかなったかもしれない苦労と哀しみは、金を手に入れようとしたがために、どんどん膨らんでいき、最後には男の力ではコントロール出来ないものになっていく。
金はどんなことをしても手に入らない、そして金を稼いでも仕方がないと悟った男の落胆は底なし沼のようだ。

韓国映画は非常にねちっこいところがあると思うのだが、今回もそのねちっこさを非常に感じる。
一発殴ればいいところを五発殴る。殴るだけでいいところを倒れるまで殴る。倒れるだけでいいのを息の根を止めようとする。
そういう男を演じるキヌ・ユンソク が凄い。怪物だと思いながら映画を見る。

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監督の作品として見るなら、前作チェイサーの、相手の見えない恐怖の方が私は好きだった。
子供がいながら出張ヘルスで稼がねばならない女性の辛さもあったが、もう少し怖さにエンターテイメント性があったというか、視覚的な怖さをもう少し純粋に楽しめたような気がした。
この映画の怖さはもっと見えないところにあるというのが、ちょっと重く感じられたのだ。
前作よりお金がかかっている分だけ、心理的な重さが増したというところだろうか。




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