SNSで自分の好みの女性を見つけてしまった男性は、彼女がSNSに次々と上げる日々の行動の数々を逐一チェックするようになる。固有名詞が無くとも無防備に上げた写真から、行間にあるちょっとしたヒントから、彼女を特定することなど男性にはあまりにも簡単なことだったのだ。読みながらSNSと現実の境界線が無くなることを感じ、男性の見えない相手への執着心に恐ろしさを感じていたのだが、見えない恐ろしさはそのままに、ストーリーは想像もしない方向へ一気に進んでいく。
男性の目を通した女性の姿のリアルさに驚き、それゆえあっという間にストーリーに飲み込まれていく。男性の行動に驚きつつも、人の気持ちの複雑さを改めて感じずにはいられない。
![]() |
世界を売った男 (文春文庫) |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |