私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

ビースト

2021-10-17 19:47:34 | 映画鑑賞

かつてはパートナーだったものの、今はそれぞれ別のチームを率いる刑事。犯人を捕まえるのが刑事の正義であるものの、そこに至るスタイルはまるで別の二人。その手法の違いが少しのわだかまりを生み、昇進という言葉が嫉妬と疑念を更に大きいものにする。そんな中、世間を騒がす猟奇的事件の犯人検挙を一方のチームが行ったものの、それを冤罪とみなしてもう一方のチームが相談もせずに釈放した事で、その違いは決定的なものになる。

殺人事件を前にギリギリの捜査を行う刑事にタレコミ屋は必要悪だ。上手くコントロールしているはずだったのに、自身の保身と復讐を目論むタレコミ屋の暴走から一方の刑事は窮地に追い込まれる。犯人逮捕という正義に向かっているはずなのに、刑事である事を守るために少しずつ怪しい闇に吸い込まれるように道を外れていく一方の刑事。そしてその様子を敏感に感じるライバルの刑事。

裏社会のはみ出し者を上手くコントロールして犯人検挙の手掛かりを手に入れていたはずなのに、歯車が一つ狂うと坂道を転がるように物事は悪い方に進んでいく。そんな中真犯人の手掛かりを掴むも、真犯人は逃げるでもなく、逆に刑事の方に近づいていて来るのだ。

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リーダーシップ溢れる刑事を演じるイ・ソンミンと、警察内のパワーゲームで彼よりも劣勢に置かれる刑事をユ・ジェミョンが演じる。事件を前に対峙する二人、猟奇的な殺人事件が未解決であることにストレートに怒りを見せる市民、自分の復讐のために刑事さえも手玉に取ろうとするジャンキーのタレコミ屋。そして二人の刑事を見つめる同僚の刑事達。

どの場面も常に何かヒリヒリとした緊張感が漂い、一瞬のスキもない。銃声の音がする度に何かが崩れ、精神的にも肉体的にも修復できない傷が増えていくのだ。

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フランス映画「あるいは裏切りという名の犬」をリメイクしたこの映画。ハリウッドが自分達用に作るという話もあったようだが、立ち消えになったのだろう。韓国が自分達のテイストで容赦ない痛みを感じる映画を作り出した。香港ノワールの新作を見られなくなった今、どんな形でもノワール映画が見られる事は、ノワール好きの私にとってはとても嬉しい事だ。