ソウルオリンピック後の1990年、国連の加盟を目指し、多数の票を得るためにアフリカでのロビー活動に力を入れる韓国。韓国に先んじる事20年、北朝鮮も同様の活動を行っており、同じように現地政府に取り入り、支持を取り付けようとしている。そんなアフリカのソマリアの首都モガディシュで市民のデモが反乱軍となり、あっという間に内戦状態になる。反乱軍の目的は現政府の転覆だ。各国の大使館は現政権と関係のある組織とみなされ、票集めの為に現政権に取り入ろうとしていた韓国大使館も北朝鮮大使館も当然格好の標的となる。韓国大使館は金を積み、現地警察に大使館の警備を依頼し、脱出の策を練るも、そこに中国大使館を頼ろうとするも失敗した北朝鮮の大使館員たちがやってくるのだ。
韓国としても、すでにアメリカ大使館は撤退しており選択肢は少ない。韓国も北朝鮮も、お互いを助ければ、その後祖国から糾弾されることは分かっている。それでもここから脱出するには、お互いのルートを使って何とか脱出する術を探さねばならないのだ。封鎖された首都では反乱軍が暴徒化し略奪が行われる。政府軍も反乱軍を攻撃するだけでなく、誰彼構わず銃を向ける。無法状態だ。
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内戦になる前のロビー活動での両国の駆け引きも凄い。それぞれが相手を陥れて少しでも自らの利益になるような事を作り出そうとする。韓国も北朝鮮も自分たちの票が欲しいと知っているソマリアは、両国の足元を見て自分たちの利益になる事をうまく引き出そうとする。妨害、情報操作も外交の大事な要因なのだ。綺麗事等言っていたら自分たちの利益を逸するだけだ。
内戦状況に置かれてもそれは一緒だ。同じ言葉を話し、同じ民族であっても韓国と北朝鮮は同じ方向を向いているわけではない。脱出という目的は一緒であっても、食事をする際には、北朝鮮側は毒が盛られていないかを心配し、韓国側は北朝鮮側と一緒に行動することのリスクを考えて、彼らが脱北を望んでいるように工作をしようとする。相手の常識を疑い、自分たちの身と利益を守るために相手の腹の中を探りあう。
これらをモロッコでのオールロケで30年前の出来事を描き切ろうとするその熱量も凄いが、それぞれのトップが、自分たちの命を守り、更に国からの命令に背かない、自分たちにとって一番良い方法を選び取ろうとする。そんな外交上の駆け引きも私には生々しく思える。