釜山で勤務するエリート刑事のヘジュン。
早くして警視に昇進し、彼を慕う部下にも恵まれ、週末婚の妻は彼の健康を心配するも「離れて暮らしても会える週末が充実していれば夫婦は幸せ」と夫に全幅の信頼を寄せている。
これからのキャリアに一点の曇りも見えず、幸せな私生活もこのまま続くと思われた。
部下は、不眠症の彼が必要以上に張り込みに注力するのを心配するが、それも可愛い部下の余計な心配に思えた。しかし、登山中に転落死した男性の事件を捜査をきっかけに完璧に思えた生活のバランスが崩れていく。
夫の転落死を知っても、取り乱さず、薄っすらと笑みを浮かべる妻の様子を見てなんとも言えない違和感とともに、必要以上の興味を彼女に感じるヘジュン。
中国出身の妻を演じるのは、役柄と同様に中国出身のタン・ウェイ。
部下に「(彼女が分かるように)簡単な韓国語で説明するんだ」と指示するヘジュンだが、全体的に拙い韓国語を操っているかのような彼女が、唐突に使う難解な単語に違和感と興味を感じる彼。
幼い子どもが習いたての言葉を駆使して相手と意思疎通しようとするのと違って、成人してから異言語を学ぶ者が話す第二言語は全く異なると思う。知っている簡単な単語を並べて話すかと思えば、そこに突然大人が使うような辞書で覚えた単語が出てくる。言葉が拙いだけで、幼いわけではないから当然だし、母国語でないからこその唐突な言葉遣いもまたしかり。しかしその違和感に不思議な心の揺れを感じるヘジュン。
夫殺害の容疑を掛けられ、異国の地で一人生きる彼女を見張るうちに、まるで保護者のような心持になり、その感情を自分でもコントロール出来ずに苛立つ彼と、それを見透かすような彼女。次第に刑事と被疑者との駆け引きが男女のそれに変わっていき、その主導権が彼女に移っていく様子はなんとも生々しい。
その後、新しい事件で再会してからの様子は更に生々しく混とんとしている。彼女は自分なりの生き抜く力を刑事に見せ、刑事はその様子に更に混乱していくのだ。観ていて置いてきぼりになったような気分にもなるが、ストーリーよりも二人の感情の動きを優先しているからだろう。
再会後の展開は、常人には分からない二人の世界が広がっているようだ。別に理解する必要はなく好きに感じればいいのかもしれない。
안개ㅣ정훈희 & 송창식ㅣ헤어질 결심 OST