熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

イアン・ブレマーの2020年の10大リスク(1)

2020年01月09日 | 政治・経済・社会
   恒例のユーラシアグループのEurasia Group's Top risks For 2020が、発表された。
   This is Eurasia Group's annual forecast of the political risks that are most likely to play out over the course of the year. と言うレポートで、HPよりオリジナル全文をダウンロードして読んでみた。
   ブルームバーグや日経で、さわりの邦訳が報道されているが、日経の記事を借用すると、10大リスクは、次の通り。
   

   まず、2020は、チッピング・ポイントだと指摘する序文。
   ほぼ、次のような内容だったのではないかと思う。
   我々は、真の国際リスクからは免れているとは言え、直近の10年は、どんどん高まってゆく地政学リスクの狭間に居る。
   グローバリゼーションが、キーで、戦後の最も需要な状況は、人々、アイデア、物財、資本などあらゆるものが、国境を越え、地球上を、早く早く、より早く移動することによって、大変な富と機会を創出してきた。この増大するグローバルベースでの平等化(尤も、国によっては、益々、格差の拡大をきたしている)が、貧困を減らし、寿命を延ばし、平和と繁栄を増大してきた。
   しかし、中国とアメリカの技術部門におけるディカップリングが、今や、21世紀の経済のキープレイヤーである主役を真っ二つに分断しつつある。発展途上国の国々も益々分極化して部族的な力が増している。政治的、経済的、そして、製造業の物やサービスのテクノロジーの変化によって、サプライチェーンの縮小が加わって、一気に、グローバリゼーションが、分裂性を帯びてきた。
   経済的、地政学的トレンドは、今や、循環的に下降気味で、2008年以降、戦後最長の経済成長も、今日では軟化しており、多くの経済学者は、2020年ないし2021年には、不況に突入すると予測している。アメリカの一国主義、米国主導の同盟関係の衰退、アメリカと同盟国との安定と協調を害したいロシア、グローバルベースで対抗勢力を形成して集団的リーダーシップを確立すべく台頭著しい中国、これらの要因によって、グローバルリーダーのいなくなったGゼロの世界は、深刻な地政学的不況に突入している。
   最後に、気候変動が、経済成長を阻害し、これまで以上に、グローバル政治上の難問となっている。循環的な経済的、地政学的にも、この傾向が徐々に進行し、2020年には、これまで、経験したことのないこのようなネガティブ・トレンドの結合に直面する。この悪化しつつる環境が、益々、グローバル危機を促進する。政府や民間セクターにアベイラブルな資源は、かってよりは、容易にはなっているが、しかし、その挑戦へのスケールは、益々、大きくなり、地政学的不況が、グローバル協力を阻害する。
   以上のような理由で、2020年は、実に問題の多い年となる。

   この序文を読めば、先に提示した10大リスクとは、殆ど整合性がない感じで興味深いが、グローバルベースの政治経済状況の把握では、ほぼ妥当であろう。
   しかし、個々ののトップリスクは、特別な意味合いを持っていて、それぞれに興味深い。
   まずトップの「誰が米国を統治するかRigged!: Who governs the US? 」では、
   Once the election is over, serious issues will emerge. If Trump wins amid credible charges of irregularities, the election process will become contested. If he loses, same.
   大統領選挙が終わった後、深刻な問題が起こる。トランプ が勝利すれば、不正行為が信頼できる形で告発されて再調査が実施されるであろうし、トランプが負けた場合でも同じだ。と言う信じられないような指摘をしている。
   選挙がオープンでフェアに行われるかどうかの世論調査で、国民の53%しか、信用していないと言うデータを示して、まさに、アメリカの民主主義の根本が問い直されると言う事である。
   さきに、ジャレド・ダイアモンドの書評でコメントしたように、二大政党のみならず、アメリカ国民が、水と油のように、妥協の余地のないほど、真っ二つに分断してしていると言う、あまりにも悲しい病める民主主義の国アメリカ、どんなことが起こっても不思議ではないと言う事であろうか。

   2番目のリスク「米中のテクノロジーの分断The Great Decoupling」だが、
   米中のテクノロジーのディカップリングは、ソ連崩壊後のグローバリゼーションの最もインパクトの大きな展開で、この分断によって生じる影響は、5兆ドル規模のテクノロジー・セクターのみならず、メディアやエンターテインメントから学術的リサーチと、他の産業にまで、経済的に甚大な影響を与え、グローバル経済に深刻なダメッジを齎す。
   ブルームバーグは、”米中テクノロジー企業間の競争は、半導体やクラウドコンピューティング、次世代通信規格5Gなどの戦略上重要な分野以外のより幅広い経済活動にも広がる見通し。この結果、世界的なバリューチェーンのシフトが加速する一方、中国企業は投資水準が押し下げられ、株式上場が妨げられる可能性がある。”と報じている。
   私自身は、トランプの政策は、テクノロジー知識情報の自由な移動交流を妨げるわけであるから、将来のテクノロジー発展成長の芽を摘む暴挙であると思っている。
   高度な先進的テクノロジーや特許、ノウハウなどの流出をブロックする目的で、中国を窮鼠猫を嚙む状態に追い込んだアメリカは、中国の必死の追い上げを促進して、むしろ、アメリカの衰退を早めるだけに終わるのではないかと思っている。
コメント
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