熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

安達育著「花―安達流の花芸 」

2023年04月05日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   安達瞳子の後継者安達育の初の花芸書で、安達流の花芸の魅力と技術のすべて 暮らしと生け花のカリキュラム
   立春から始まる二十四節気をめぐる花暦の華麗なる写真集が紙幅の大半を占めるのだが、
   安達の花・構成三原則 五態/文法/原型・構成の基準・技術の基本・花器と用具
   母との日々
   始祖の花・花道史 花道の歴史と安達流の歩み・植物の知識・花材表 ほか 資料も豊富で、ズブの素人にも面白い。

   私は、花道の「か」も知らないし、特に、花道に関心を持って本書を手に取ったわけでもなく、椿に造詣の深かった安達瞳子の「花芸」の雰囲気に触れたくて、先ほどブックレビューした「瞳子、花あそび」の延長として読んでみたのである。
   この本が出版されたのが、2005年1月、
   翌年に瞳子が亡くなっているので、花芸安達流副主宰の時で、11歳で安達瞳子の養女となり、次期主宰として花道修業に励むが、2002年東京農大卒業とともに本格的な修道と活動に従事したと言うことなので、まさに、駆け出し直後の意欲的な著作である。
   もう、20年近く前の花芸の作品の写真集であり、それ以降、出版物が探せないので、最近の動向は分からないが、この作品を見た感じでも、安達流花芸の思想なり哲学、あるいは、原則や手法などが同じだとしても、瞳子と育では、相当の差というか、違いが出ている。
   瞳子の方にはクラシックな雰囲気と奥深さを感じ、育の方にはモダンで軽やかなリズムを感じて、非常に面白い。
   
   ところで、育の説明では、安達流の一番の特徴は、日本の伝統的な花道と西欧の芸術とを融合させたことであり、この作風を「花芸」と呼んでいる。日本人は花道をはじめとする芸道による人間形成を目指してきたが、その美点を踏まえつつ西欧の芸術が持つ体系的な考え方や個性を学んでいると言う。
   また、”花”は伝統の花道から、”芸”は西欧の芸術意識に学び、両者の長所を共に生かしたい思いを込めて〈花芸安達流〉を創流した時以来の願望である。と言う。
   この説明だけでは、良く分からないのだが、日本花道の芸術的な本質や伝統を守りながら、西洋の芸術的な思想や志向、そして、芸術感なり豊かな発想や姿勢を取り入れて花道をエンリッチしようと言うことであろうか。
   俗な言い方をすれば、文明開化の時の和魂洋才のようなイメージだが、分かって分からないようなこの「花芸」の哲学というか原則、
   欧米伯で14年間生活して来た私でさえ良く分かっていない西洋の芸術の精神、そして、その良いところを理解して取り入れるなど、非常に難しいように思うのだが、そこは、芸術家の直覚なのであろう。
   5年間イギリスにいて、身近な英国人の友人の奥方がフラワーアレンジメントをしていて、その作品や各所で花の展示を見ていたので、多少イメージはあるのだが、異文化異文明のベターハーフの融合による理想的なマリッジは、非常に難しいと感じているので、花芸安達流の挑戦は、特筆ものだと思っている。

   いずれにしろ、この写真集の美しさは秀逸で、安達流花芸の解説は、非常に素晴しいし、花芸の技術の解説は、私の我流生花の参考になった。

   私は、作品の中で、好きな椿がどの様に生けられているか、見ていたが、やはり、バラ同様に、取り上げられている頻度は高い。
   しかし、それより多いのは、菊であり、一番多いのは、ガーベラであるのが興味深い。
コメント
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