熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

二口 善雄著「画集 椿」

2023年04月23日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   インターネットで検索しても、椿にかんする本は非常に少なくて、バラの本の多さと比べると雲泥の差である。
   この貴重な椿の画集も、1992年の出版であるから、もう30年も前の本である。
   日本の植物画の草分けと言われる二口善雄氏(1900-1997)の椿の緻密で詳細な水彩画集で、私の関心のある洋椿はないが、100種類の日本椿が描かれていて圧巻である。
   東京美術学校(東京芸大)洋画科を出て、東大理学部植物学教室で花の絵を描くなど長い間植物画を描き続けてきた大変な画家の椿の絵のオンパレードで、息をのむ美しさである。
   今でも販売されていて、¥5,126と少し高いが、それだけの値打ちがある。

   一筆一筆丹念に描き続けて表われた椿の姿には、画家の息遣いさえ感じさせてくれる温かさがあって、即物的な美を切り取った写真とは違った雰囲気があって素晴しい。
   私は、椿の写真を撮り続けているので、いつかは、自分で描いてみたいと思っているのだが、まず、じっくりと椿と対峙して描き続ける根気がない。
   デジカメを構えてシャッターを切れば、間違いなしに眼前の椿が、実物そっくりにそれ相応の姿で写せて、選んでプリントすれば、まずまずの写真が出来る。
   しかし、同じ瞬間の姿をフリーズした作品なのだが、絵画の方には、写真には表せない人間くささと言うか温かみがあって心に染みてくるのが良い。

   安達瞳子の「椿しらべ」には、川岸富士男氏の同じような椿の水彩画や江戸時代の椿絵が掲載されて見ているが、これらの方は少しデフォルメないし単純化されているので雰囲気が大分違っている。
   しかし、解剖図のように精密緻密に描かれている西欧の植物画(ボタニカルアート)と比べて、日本の植物画には、その植物の姿形だけではなく、その息吹まで感じさせ、かつ、絵心さえも匂い出ていて、詩情をそそるのが良い。

   ロンドンに居た時に、王立キューガーデンの側に住んでいたので、良く出かけており、展示会で花などの植物絵画に接する機会も多くて、その時に買った絵画が数点あって、今でも、それらの花の額が、インテリアとしてリビングに掛かっている。
   欧米風の植物画 を見ることも結構あったので興味を持っており、美術館博物館でも、花を描いた静物画にも注目して鑑賞していた。
   チューリップバブルを生んだオランダなど、素晴しい花の絵画作品が多いのだが、
   今、キューケンホフ公園のHPを開いたら、全面、色とりどりのチューリップが咲き乱れていると言うことである。
コメント
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