PSの論文で、スティグリッツ教授は、
パンデミック後のインフレの性質をめぐって経済学者らが対立陣営に分かれてから2年以上が経ち、今ではどちらの側が正しかったのかがわかった。 ディスインフレは、これまでの価格上昇が主に供給の混乱と部門別の需要の変化によって引き起こされた「一時的なもの」であったことを裏付けている。
世界がパンデミックから回復しつつある中、世界的なサプライチェーンの広範な混乱と需要パターンの突然の変化により、インフレが急上昇した。 需要の変化は最良の時期であっても価格安定に課題をもたらしたかもしれないが、サプライチェーンの崩壊が事態をさらに悪化させた。 市場は新たな需要パターンにすぐに対応できず、価格が上昇した。
しかし、現在はディスインフレ傾向にあり、今回のインフレは、FRBなどの過剰な総需要を非難するインフレタカ派ではなく、混乱は一時的で自然に修正されると主張する一時的インフレチームの勝利に終ったと言うのである。
スティグリッツ教授は、自動車産業の半導体不足によるインフレや住宅価格のディスインフレ等について説明し、
パンデミックによって引き起こされたインフレは、ロシアのウクライナ侵攻によってさらに悪化し、エネルギーと食料価格の高騰を引き起こした。 しかし、価格がそのような速度で上昇し続けることができないことは明らかであり、ディスインフレ、あるいは石油の場合はデフレ(価格下落)が起こるだろうと予測したが、それが正しかった。
米国と欧州ではインフレが劇的に低下した。 たとえ中央銀行当局の目標である2%には達していないとしても、大方の予想(米国3.7%、ユーロ圏2.9%、ドイツ3%、スペイン3.5%)よりも低い。 さらに、2%という目標は何もないところから導き出されたものであることを忘れてはならない。 インフレ率 2% の国がインフレ率 3% の国よりも良いという証拠はない。 重要なのはインフレが抑制されていることである。と説く。
中央銀行は何をしたのか。 金利を引き上げても、供給側と需要側のインフレという直面している問題には対処できなかった。 むしろ、中央銀行の行動にもかかわらずディスインフレが起こったのであって中央銀行のせいではなく、最近のインフレ解消にはそれらはほとんど関与していない。。
市場はこれをずっと理解していて、インフレ期待が抑制されたのはそのためであり、中央銀行のエコノミストの中には、これは自らの強硬な対応によるものだと主張する者もいるが、データは別のことを物語っている。 供給側の混乱は一時的なものであると市場が理解していたため、インフレ期待は早い段階から抑制されていた。 中央銀行家たちが、インフレとインフレ期待が高まり始めており、そのためには高金利と失業を伴う長期の苦闘が必要になるのではないかという懸念を何度も繰り返した後でのみ、インフレ期待は上昇した。 (しかし、それでもかろうじて変動し、2021年4月には今後5年間の平均で2.67%に達したが、1年後には2.3%に戻った)。
最近の中東紛争が再び原油価格高騰の懸念を呼び起こしているが、その前には、インフレタカ派が必要と主張するような失業率の大幅な増加なしに、インフレに対する「勝利」が達成されたことは明らかだった。 フィリップス曲線で表されるインフレと失業の間の標準的なマクロ経済関係は裏付けられていない。
しかし、その後の 2 年間、価格上昇のタイミングと総供給に対する総需要の変化の大きさについての慎重な研究により、インフレタカ派の総需要の「物語」は、単に何が起こったのかを説明しておらず、その信頼性は大きく揺らぎ、現在はディスインフレによってさらにその信頼性が損なわれている。
経済にとって幸いなことに、一時的インフレチームの移行は正しかった。 経済学の専門家が正しい教訓を吸収することを祈りたい。
と結んでいる。
スティグリッツ教授は、NHK BS1の「混迷する資本主義」の特別編で、もう少し簡潔に語っている。
今回のインフレを、中銀は、超過需要によるものだと判断して、教えられたとおり、超過需要に対して利上げを盲目的に行った。しかし、今回は需要の問題ではなく供給の中断が原因であった。
供給不足に対処するためには投資が必要なのだが、金利が上がると投資が難しくなり、更に事態が悪化した。
アメリカのインフレの主な背景の一つは、企業による市場の支配・独占である。経済理論によれば、金利が上がった場合、企業は短期主義になるので、コストを大幅に上回る値上げを行った。
更なる価格高騰が事態を悪化させたのであるが、日本の場合、更に賃金給与の抑制に繋がっている。
インフレは、供給に対する需要過多の現象であるので、中銀は、金利引き上げという常備薬を処方し続けたが、スティグリッツ教授は、今回は、通常の需要超過現象ではなく、著しい供給サイドの欠陥による供給不足によるインフレであるから、供給曲線を引き上げるべきであって、金利上昇は投資意欲を減退させる逆療法であったと主張する。
今回のインフレは、超過需要ではなく、世界的なサプライチェーンの広範な混乱と需要パターンの突然の変化により、インフレが急上昇したのであるから、市場が正常に起動し始めれば、短期に終熄するので、それを見越した市場の方が、中銀より賢かったというのであろうか。
インフレは、一時的な現象であり終熄に向かっており、供給サイドの増加拡大という謂わば攻めの経済への移行が期待されているのであるから、昨今話題になっていたスタグフレーションの心配はないということであろう。
パンデミック後のインフレの性質をめぐって経済学者らが対立陣営に分かれてから2年以上が経ち、今ではどちらの側が正しかったのかがわかった。 ディスインフレは、これまでの価格上昇が主に供給の混乱と部門別の需要の変化によって引き起こされた「一時的なもの」であったことを裏付けている。
世界がパンデミックから回復しつつある中、世界的なサプライチェーンの広範な混乱と需要パターンの突然の変化により、インフレが急上昇した。 需要の変化は最良の時期であっても価格安定に課題をもたらしたかもしれないが、サプライチェーンの崩壊が事態をさらに悪化させた。 市場は新たな需要パターンにすぐに対応できず、価格が上昇した。
しかし、現在はディスインフレ傾向にあり、今回のインフレは、FRBなどの過剰な総需要を非難するインフレタカ派ではなく、混乱は一時的で自然に修正されると主張する一時的インフレチームの勝利に終ったと言うのである。
スティグリッツ教授は、自動車産業の半導体不足によるインフレや住宅価格のディスインフレ等について説明し、
パンデミックによって引き起こされたインフレは、ロシアのウクライナ侵攻によってさらに悪化し、エネルギーと食料価格の高騰を引き起こした。 しかし、価格がそのような速度で上昇し続けることができないことは明らかであり、ディスインフレ、あるいは石油の場合はデフレ(価格下落)が起こるだろうと予測したが、それが正しかった。
米国と欧州ではインフレが劇的に低下した。 たとえ中央銀行当局の目標である2%には達していないとしても、大方の予想(米国3.7%、ユーロ圏2.9%、ドイツ3%、スペイン3.5%)よりも低い。 さらに、2%という目標は何もないところから導き出されたものであることを忘れてはならない。 インフレ率 2% の国がインフレ率 3% の国よりも良いという証拠はない。 重要なのはインフレが抑制されていることである。と説く。
中央銀行は何をしたのか。 金利を引き上げても、供給側と需要側のインフレという直面している問題には対処できなかった。 むしろ、中央銀行の行動にもかかわらずディスインフレが起こったのであって中央銀行のせいではなく、最近のインフレ解消にはそれらはほとんど関与していない。。
市場はこれをずっと理解していて、インフレ期待が抑制されたのはそのためであり、中央銀行のエコノミストの中には、これは自らの強硬な対応によるものだと主張する者もいるが、データは別のことを物語っている。 供給側の混乱は一時的なものであると市場が理解していたため、インフレ期待は早い段階から抑制されていた。 中央銀行家たちが、インフレとインフレ期待が高まり始めており、そのためには高金利と失業を伴う長期の苦闘が必要になるのではないかという懸念を何度も繰り返した後でのみ、インフレ期待は上昇した。 (しかし、それでもかろうじて変動し、2021年4月には今後5年間の平均で2.67%に達したが、1年後には2.3%に戻った)。
最近の中東紛争が再び原油価格高騰の懸念を呼び起こしているが、その前には、インフレタカ派が必要と主張するような失業率の大幅な増加なしに、インフレに対する「勝利」が達成されたことは明らかだった。 フィリップス曲線で表されるインフレと失業の間の標準的なマクロ経済関係は裏付けられていない。
しかし、その後の 2 年間、価格上昇のタイミングと総供給に対する総需要の変化の大きさについての慎重な研究により、インフレタカ派の総需要の「物語」は、単に何が起こったのかを説明しておらず、その信頼性は大きく揺らぎ、現在はディスインフレによってさらにその信頼性が損なわれている。
経済にとって幸いなことに、一時的インフレチームの移行は正しかった。 経済学の専門家が正しい教訓を吸収することを祈りたい。
と結んでいる。
スティグリッツ教授は、NHK BS1の「混迷する資本主義」の特別編で、もう少し簡潔に語っている。
今回のインフレを、中銀は、超過需要によるものだと判断して、教えられたとおり、超過需要に対して利上げを盲目的に行った。しかし、今回は需要の問題ではなく供給の中断が原因であった。
供給不足に対処するためには投資が必要なのだが、金利が上がると投資が難しくなり、更に事態が悪化した。
アメリカのインフレの主な背景の一つは、企業による市場の支配・独占である。経済理論によれば、金利が上がった場合、企業は短期主義になるので、コストを大幅に上回る値上げを行った。
更なる価格高騰が事態を悪化させたのであるが、日本の場合、更に賃金給与の抑制に繋がっている。
インフレは、供給に対する需要過多の現象であるので、中銀は、金利引き上げという常備薬を処方し続けたが、スティグリッツ教授は、今回は、通常の需要超過現象ではなく、著しい供給サイドの欠陥による供給不足によるインフレであるから、供給曲線を引き上げるべきであって、金利上昇は投資意欲を減退させる逆療法であったと主張する。
今回のインフレは、超過需要ではなく、世界的なサプライチェーンの広範な混乱と需要パターンの突然の変化により、インフレが急上昇したのであるから、市場が正常に起動し始めれば、短期に終熄するので、それを見越した市場の方が、中銀より賢かったというのであろうか。
インフレは、一時的な現象であり終熄に向かっており、供給サイドの増加拡大という謂わば攻めの経済への移行が期待されているのであるから、昨今話題になっていたスタグフレーションの心配はないということであろう。