原著の本題は、権力と進歩: 技術と繁栄をめぐる千年にわたる闘い
(Power and Progress: Our Thousand-Year Struggle Over Technology and Prosperity)
アセモグルの新著で、これまで、「国家はなぜ衰退するのか——権力・繁栄・貧困の起源 」と「自由の命運——国家、社会、そして狭い回廊 」を読んでレビューもしているが、非常に啓発される素晴らしい経済学者である。
過去1千年の人類の技術革新の歴史とその社会への影響を分析して、技術革新における楽観的と悲観的との悲喜こもごのの展開を詳述している。そして、技術革新が、成長発展を齎すと同時に不平等を生み出し続けてきたが、技術革新の成果を人類の幸せのためにどう役立てるか、それは「経済的、社会的、政治的な選択」次第だとして、未来の道標を模索する。
技術革新の社会への影響については、二つの見方がある。技術革新楽観論と技術革新悲観論である。
技術革新楽観論は、技術革新を進め、それを経済活動に広めることによって、その成果は、おのずと社会全体に均霑する。本書では「生産性バンドワゴン」と称して展開していて面白い。
ネガティブな側面として、農法の改良は飛躍的な増産を実現したが農民には殆ど益しなかったとか、産業革命による工場制度の導入で生産性がアップし労働時間は延びたにもかかわらず、労働者の収入は約100年間上がらなかったとか、農法改良、産業革命などの技術革新によって成長発展を遂げたたにも拘らず、労働者には恩恵が及ばなかった。という。
ネガティブな側面として、農法の改良は飛躍的な増産を実現したが農民には殆ど益しなかったとか、産業革命による工場制度の導入で生産性がアップし労働時間は延びたにもかかわらず、労働者の収入は約100年間上がらなかったとか、農法改良、産業革命などの技術革新によって成長発展を遂げたたにも拘らず、労働者には恩恵が及ばなかった。という。
技術革新による「進歩」のはずが、逆に社会的不平等を増大させてきたという人類史上のパラドックスをどう解決するか、という問題である。
さて、過去はともかく、現下のデジタル革命やAIによる技術革新はどうであろうか。
技術革新の進展は驚異的で、デジタル技術と AI による仕事の変革は、我々の世界観を根本的に変えてしまった。
さて、過去はともかく、現下のデジタル革命やAIによる技術革新はどうであろうか。
技術革新の進展は驚異的で、デジタル技術と AI による仕事の変革は、我々の世界観を根本的に変えてしまった。
ところが、世界中で、デジタル技術と人工知能は、過度の自動化、膨大なデータ収集、侵入的な監視、偽情報の拡散などによって、監視社会の強化、人権の侵害や民主主義を弱体化させるなどネガティブな側面を産む。
しかし、我々が行う経済的、社会的、政治的な選択次第によって、この技術の進路を改変し、それを制御できる方法を見出し得る。として、
テクノロジーの方向転換として、デジタル技術を作り直す、対抗勢力を再び作る、方向転換への施策を行う等々その方法を提言している。
最先端の技術の進歩は、人類に力を与えるツールになる可能性が高いが、ただし、すべての主要な決定が、少数の傲慢な技術リーダーに、そして、経済格差を益々助長する権力者や支配階級の手に委ねられてはならない、ということであろう。
要するに、技術革新が、人類を破滅に導くのも不平等を拡大するのも、「我々が行う経済的、社会的、政治的な選択次第」であって、その対策は、我々人間の英知にかかっていると言うことである。
正論ではあろうが、我々人間の選択が正しく行われるのかどうか、それが問題である。