先日、斎藤 幸平 (著)人新世の「資本論」のブックレビューで、「脱成長コミュニズム」 への道程で、バルセロナでの脱成長社会を目指す「経済モデルの変革」、すなわち、資本主義の終わりのない利潤競争と過剰消費が気候変動の元凶だと糾弾して気候非常事態宣言を発して、国家が押し付ける新自由主義的な政策に反旗を翻す革新的な地方自治体「フィアレス・シティ」の先陣を切った最先端のモデルケースであると紹介した。
市民参加型の「脱成長コミュニズム」である。
これに呼応したような記事が、日経日曜版に、掲載された。
「人に優しいスマートシティー、バルセロナが問う未来の街 NIKKEI The STYLE」である。
住民がオンラインで政策決定に参加する仕組み「デシディム」。提案を書き込めば市の担当者から実現可能性などの返信が必ず来る。書き込みを見た別の住民が「いいね」を付けたり、「こういう方法もあるのでは」などとオンライン上で議論したり。全人口170万人のバルセロナで約15万人が利用する。
使い方も日々進化していて、20年からは4年に1度、3千万ユーロ(約50億円)の使い道をデシディム上の投票で決める「参加型予算」も始まった。公園の改修や街の緑化など、住民の書き込んだ要望を投票で絞り込む。
デシディム以外にも住民が街づくりに参加するためのオンラインシステムが増えた。例えば「イリス」は「通りのごみ箱があふれている」など、その場で写真を撮って市にクレームを投稿できる。
底流に流れるのは「街を良くしよう」との気風。今日のこのバルセロナの気風は、フランコ独裁政権末期のムーブメントが淵源である。1975年まで続いたフランコ政権下でバルセロナは冷遇され、信号や学校などインフラが不足していて、集会の自由も制限されていたが、祭りの準備などと見せかけて住民集会を開いて話し合い、結束して少しずつ街を良くしていった。
テクノロジーの発達によってデシディムなどの仕組みが整い、昔より誰もが簡単に政策に意見を言えるようになり、議事録など情報にもアクセスしやすくなった。バルセロナに根付いた住民参加の文化がテクノロジーによってさらに進化した。のである。
バルセロナを訪れたのは、もう、3~40年も前のことで、ガウディの建築物やフラメンコ、市場の賑わい、オペラ鑑賞くらいしか覚えていないが、エキゾチックな素晴らしい多くの観光資源に恵まれたスペインでも、特異な観光地市であった。
このカタルーニァ地方は、言葉も違うし独立意識の強いところで、スペインと一線を画した政治文化文明、
どこまで、集権意識の強いマドリード政府に抗し得るのか、興味のあるところである。
(追記)口絵写真は、ウィキペディアから借用。