熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

西のみやこ東のみやこ・・・国立歴史民族博物館

2007年04月14日 | 展覧会・展示会
   佐倉の歴博で、「西のみやこ東のみやこ~描かれた中・近世都市」特別展が開かれている。
   洛中洛外図や江戸図屏風を中心に近世の京都と江戸の歴史と生活を浮き彫りにしようと言うのである。
   京都の地図を会場中央の床に大きく描いて、その地図の左右に最古の洛中洛外図歴博甲本コピーを立てかけて、その絵の中から名所旧跡の部分を抜き出した写真を地図の左右に貼り付けて地図上にプロットする仕掛けなどサービス満点の展示である。(このオリジナルは、このコーナーの壁面に当然展示されている。)
   それに、パソコンソフトに取り込まれた洛中洛外図や江戸図屏風の画像を操作すると、好きな部分を映し出して自由自在に移動拡大出来て、細部まで詳細に干渉できるなどIT技術を駆使したサービスも素晴らしい。
   最後のコーナーには、江戸図屏風の複製が展示されていてその前に座敷様の畳の間が設えられていて子供たちが上がりこんで歴博が特別に作成した歴史クイズに余念がない。

   本日、歴博で、今回の特別展に合わせて、講演会「描かれた京と江戸」が開かれ、小島道裕助教授が京都の洛中洛外図を、大久保純一助教授が江戸図について一時間ずつ興味深い講演を行った。
   やはり、先達はあらまほしけれで、前もって専門家に話を聞いておくと、展示会の鑑賞のたのしみが倍加することは間違いない。

   洛中洛外図のような都市の絵は昔からあると思っていたが、そうではなくて、それまでは絵図や精々名所図程度で、16世紀からのようである。
   小島助教授の話によると、越前朝倉家の光信の屏風絵が最初のようで、規範としての京都を外から見た絵だという事で、確かに洛中洛外図に描かれた屋敷を模して朝倉家の建物が建てられている。
   その後、日本の経済産業の隆盛によって京都の街が反映して、人々が観光など娯楽を求めて移譲し始めて内からの求めに呼応して急速に洛中洛外図が流行り出したのだと言うのである。

   15世紀頃までは、都市図と言っても領地管理や観光目的程度であったが、戦国時代に地方都市の勃興など日本経済が活況を呈し始めて、安土桃山時代の楽市楽座等の殖産興業で大きく社会だ動き始めて、行政や観光・遊享など名所表示などの要求から発展していったようである。

   名所旧跡など観光スポットを描きながら、宮廷から武士や町人の日常の行事や生活などを克明に描いていて、個々の細部を丁寧に見ていると非常に面白い。
   面白かったのは、洛中洛外図では、庶民の住んでいる街区では大きな家や二階建ての家などは、街路の真ん中あるのだが、これは、京都の場合は両面町方式を取っていて道の両側が同じ町内なので、真ん中の地所の奥行きが一番深いからである。
   ところが、江戸の場合は、街区は面で統一されていて、その街区の顔役が開発を取り仕切るので角地の一番良い所に立派な家を建てた。
   こんな調子で都市開発の発想の違いなど生活の微妙な差や変化を、これらの都市図は克明に描いているのである。

   大久保助教授は、鍬形斎の江戸名所之絵から話を始めた。
   これは千葉方面上空から西に向かって江戸を描いた鳥瞰図で、下には隅田川が描かれていて左側で東京湾に流れ込む。江戸城の左背後のは富士山が描かれている。
   江戸時代には、隅田川近辺や江戸城から東の名所旧跡が固まっていたようで、東を下に西を上にして江戸の絵図を描いていたのだと言う。
   京都の洛中洛外図は、襖絵など大掛かりな絵が主体だが、江戸の場合は、屏風図のほかにも、浮世絵のように一枚の刷り物としても普及したようで、江戸土産に旅人が持ち帰ったのだと言う。
   ヨーロッパなどヴェニスの油絵が結構あっちこっちの美術館にあるが、あれもヴェニス観光土産であったと言うがこれと同じ感覚であろうか。
   後の北斎や広重などが江戸の浮世絵を書くのだが、これも都市図のバリエーションだと言う。

   ほかに、三つの港町として、長崎、堺、横浜の絵図などが展示されていた。
   講演会が3時半に終わったので、その足で特別展を鑑賞したのだが、やはり、都心から離れた佐倉の地であり時間が遅かったのか、会場はがらんとしていた。
   ボランティアのシニアが親切に説明や世話をしてくれていたが、こう言うサービスのシステムは非常によい。
   ところで、日中の駐車場は大変な混雑で、講演会も立錐の余地がないほどの盛会であった。
   客の大半はシニアであったが、熱心に聞き入っていた若い聴衆も可なりいた。
   
   
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