地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

第八ジャカルタ炎鉄録 (24) イベント速記録

2017-06-15 21:57:00 | インドネシアの鉄道


 去る10日のJICA横浜イベントにつきまして、簡単な速記録をPCに清書してみましたので、中古車シーンとしては「最先端」を行くジャカルタの離合光景とともにアップします。まぁ周知の話が多いですが、盛り上がったということで御参考下さい。不都合の点はお知らせ下さい m(_ _)m

【開会の辞】
JICA横浜センター15周年、そしてアジア開銀横浜総会開催にあたり、インフラ整備という点でも注目を集めている鉄道に関するイベントを開催しているが、その一環として今日のトークイベントとなった。

【斎藤氏】
2000年代初めからの流れとして、安く車両を手に入れたい東南アジア諸国と、まだまだ使える余剰車両の使い道を考えていた日本側鉄道事業者との思惑が一致した。
ミャンマーへの輸出当初の給与水準は工場労働者で月15,000円というレベルであったので、安くて安定した性能の日本中古車は渡りに舟。
ただ折角の車両も、集客ニーズに合わないなどして、短期間しか走らないことも少なくない。
その代表例の一つは、ネピドー~マンダレーのキハ183。半年間のみ走る。事実上、2両のキハ183で5両を転がすという強引さ (残りの3両は、故障したキハ182と2両のRBT800)。キハ183はRBTの4倍の運賃で、客が敬遠した。
今となってはネピドー駅のキハ183画像は本当に貴重。とにかく軍政時代は軍人と警察に文句を言われながら撮った。民政に移行したタイミングで運休となってしまい、現在は荒廃しているのは残念。
ミャンマーのレールバス……従来LRBEで運行していたものを置き換えるために続々と勢力を拡大した、
広電……ヤンゴン臨港線で折角デビューしたのに半年で運休となり、昨年末に正式に廃止が決定したのはとにかく残念。
キハ40 300番台……熱帯の国でこの小さな二重窓のため、地獄の車内に。
三陸36形の原色車……幹部用の車両となり、今年偶然ティラワで撮影。
ティラワ港……キハ11とキハ40系列が合計18両で輸送待ちとなっており、しかも駅の有効長いっぱいであるため、定期列車を運休させるという無茶苦茶なやり方で留置していた。
マレーシア・サバ州立鉄道の名鉄→会津キハ8502……後部の切妻貫通面を丸出しにした状態で営業運転しているが、8503も間もなく営業運転に入る。



【杉林(pierre2427)氏】
本日用に特別編集した動画を公開……輸出前から現在に到る活躍の様子!
色は変われど、乗れば走行音は全く同じという不思議さが魅力。
輸入当初はただ走るだけだった車両も、最近いろいろと手が加えられて、現地仕様にカスタムアップされる動きがある。例えばジャカルタでは、205系のLEDのROMを書き換えて現地の行き先が表示できるようになったり、車内ビジョンが放送されたり、駅で「次の電車は○○行き」という表示が整備されて外国人でも誤乗の可能性が減ったり、ICカードが進化したり……。
経済発展と鉄道の整備に伴い、現地の鉄道ファンも増えた。
今回一部を公開しているインドネシア風アレンジの日本型車両模型は現在150両ある。昔は模型をやっていなかったが、インドネシア風の車両を模型として所有してみたくなり、必死に手を動かしはじめた。作った車両を現地に持参して写真を撮ると、感動もひとしお。
ミャンマー動画は、とくに東海車について、現役~JRC本線上の廃車回送~名古屋臨海~船積み~現地での改造シーンを追った。臨港線で一時期運行された赤い三陸36形が料金所を通過する奇想天外シーンも。
フィリピン動画……203系が客車として走るも、インフラそのものはまだまだこれから。本数が少なすぎるので、400%近い混雑となり、車軸が折れたという事故も起こった。
今後の課題は、どの国においても保安設備が整備されることであろうか。そうすれば事故も減る。譲渡した車両も安全に乗れるということ。

【JICA小泉氏】
ミャンマーへの鉄道支援を中心としたJICAの鉄道分野協力について……途上国も次第に発展すると、新たな移動手段が必要になる。鉄道が不十分であることによる社会的な損失は莫大である。このことは、東日本大震災で首都圏の電車が全て止まった日本人にとっても容易に想像しやすいだろう。
ジャカルタは僅か160kmしか電化路線がない。しかし、1964年の東京五輪を招致した際の日本側の売り文句は、既に1000kmの電鉄線が整備され、参加者や来客をスムーズに輸送できるということ。ジャカルタは東京と並ぶ世界的な巨大都市であるのに、半世紀以上前の東京と比べても800km以上足りない。
JICAの活動の基本は、計画づくり・人づくりと制度づくり・モノづくり。
最近の問題……中古車両提供を進める際、古い車両の詳細な図面に権利が設定されてメーカーや鉄道会社が公開を渋るため、なかなか現地が満足する図面が見当たらない。

【質疑応答】
Q.折角円借款で援助したのに、何故ドイツや韓国の車両が走っているのか?
A.(JICA)ヒモつき援助批判をうけて、一時期アンタイドにしたことがあった。ところがその結果、外国の安物が落札してはびこるという苦々しい現象が起こった。そこで最近は援助にあたり、「質」の提案もしている。その条件を満たしているのは自ずと日本メーカーの車両ということになるので、今後は日本メーカーどうしの競争入札という事例が増えると考える。
Q.地元の人々に「自分たちで造ろう」という気概はないのか?
A.(斎藤)当然何処の国もそういう発想はある。インドネシアは自ら作りうる段階に達しているが、電車の量産は今後の課題。
A.(杉林)日車が支援してKRL-IやKFWを造ったが、製造技術とメンテナンスの両面で完全ではない。まさに過渡期だと思われる。

【管理人注】パクアン急行様が今回のイベントに関連して記された雑感も、現地で眺める御立場からの苦言として圧巻ですので、ご一読を強くお勧めします。