地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

南海高野線を撮る (1) 「天空」参上!

2009-08-02 09:39:00 | 都市民鉄 (近畿以西)


 早いもので2週間前の話となった京都出張ついで撮り鉄では、京都近辺での撮影→京阪ちょい撮影ののち、南海高野線・中百舌鳥以南の初乗車を果たしたのですが、その他にも昨年5月に中百舌鳥以北を訪れて以来塩漬けのカットが多数ありますので、ここらで満を持して (?) 南海高野線シリーズを連載したく存じます (ただ、例によって他の話題との同時並行ですので、完結はいつのことやら ^^;)。
 そこで記念すべき (?) 第1回目として何を扱おうか……と思ったのですが、イマドキの高野線といえばやっぱりこれ、モハ2208+2258「天空」でしょう!
 周知の通り、高野山を含む紀伊山地の霊場と巡礼道が数年前に世界遺産に登録され、南海は高野山への宗教観光のテコ入れを大いに図っているところですが、首都圏の私鉄車内にまで特急「こうや」の宣伝が現れたときには、私鉄間交流が増えつつある昨今とはいえさすがにびっくりした次第。そんな南海が、単に目的地としての高野山だけでなく、急勾配と急カーブに喘ぎながら高野山へと登って行く列車そのものを第一級の観光資源として前面に押し出すべく、今春のプレ運行を経て去る7月から本格運行しているのがこの「天空」。具体的には、もと高野線・なんば=極楽橋直通 (大運転) 用にして、現在は支線で用いられている「角ズーム」22000系改め2200系の余剰車を、やっつけオープンデッキつきの観光車両として改装・改番したものですが(「8」は橋本・高野を意味しているそうな……^^;)、個人的には22000系の高野線現役時代を目にしておらず、是非この車両が噂に聞く高野線の末端区間を力走するシーンを眼にしてみたい……と長年思っておりましたので、何はさておき照準を定めた次第です (笑)。



 そこでまずは淀屋橋から御堂筋線でなんばに向かい、12時発の「りんかん」に乗車。緑したたる紀見峠越えをスカスカの車内 (^^;) で楽しむ間もなく橋本に到着しますと、さっそく極楽橋から「天空」が戻って来ましたが、残念ながら橋本駅ではキレイな編成写真を撮ることは叶わず……。とりあえず2000系普通列車の車端部ボックスシートを確保し、のどかな田園風景を愛でながら、九度山から先のデンジャラス=ゾーンを目指しました。
 そして、適当なところで当たりをつけて「天空」のご来臨を待っていますと……この日は梅雨の中休みで異常に蒸し暑く、しかも無風! 山中に籠もった湿気と熱気で一気に全身が汗でズブ濡れ状態 (爆)。こりゃぁ脱水症状にならないか心配だ……と思いつつも、待った甲斐あって無事急カーブを行く勇姿をゲット! (^O^)。いや~一気に気分爽快です (笑)。
 その後、極楽橋からの折り返しは、「こうや」との交換のため停車時間が長い紀伊細川で……というわけで、遥か谷底に僅かな人家があるだけの秘境駅で森林浴 (?) がてら待ち構えていたのですが、ここを選んだのは誤算でした……。ドピーカンで逆光なうえ、超広角がないと停車中は撮影出来ず (本当に限られたスペースに4両分のホームと構内踏切があるのです……)、そもそも「天空」の塗装が異様に艶光りしているため、下りホームの柵を反射しまくり……(-_-;)。まぁ、如何せん私自身が高野線末端部初訪問ですので、今後どう撮り貯めてゆくかは検討課題ですね~。
 それにしても、高野線末端部の急勾配・急カーブは、本当に険しい山岳地帯をギリギリまで分け入り、鉄橋からは対岸の稜線が真正面に見えたり……という感じで、ひたすら興奮のスペクタクル。人口密度が極めて少ないという点も合わせると、ある意味で箱根登山よりも壮絶ですらありまして、「天空」という列車名は決して誇大広告ではない……と痛感したのでした。塗装につきましても、真言密教の聖地に分け入る列車がミ○ーカの如きチャラい (好きな人には失礼) デザインでは宜しくないと思うわけで、深い森と伽藍の赤を適度に組み合わせた沿線映えするものなのではないか、と思った次第です。ただ、もう少し彩度を落とした方が味があるような……。いや、逆に沿線風景に融け込みすぎてしまうかも (^^;)。
 ちなみに、今回乗ってはいないのですが (と申しますか、連休中につき満員)、橋本駅でちょいと覗いたところ、車内はどれだけ飾ろうともあくまで2200系の基本を保っているという印象です (貴志川線のミ○ーカ・シリーズのように徹底改装しているわけではなし)。いずれ客が少ない時期に乗ってみるのが楽しみですが、そもそも閑散期の週末に走るのかどうか……(^^;)。
 あとそういえば……2208+2258の2連単独では保安上万全を期すことが出来ないためか (ブレーキが古いため?)、「天空」は橋本方に必ず2000系または2300系の2連を連結していますが、この2連は自由席・料金不要の臨時列車扱いのようで、ちらほら客が乗っているのを目にしました。「天空」の2両がギチギチに混んでいたのとは好対照で、ある意味で超穴場かも知れません。

 【お知らせ】いつもお楽しみ頂いているところ恐れ入りますが、多忙&撮り鉄遠征のため、次回更新はお盆明けの18~20日頃以降とさせて頂きます。m(_ _)m

韓国中央線ムグンファ号の旅 (清涼里→安東)

2009-08-01 08:40:00 | 韓国の鉄道


 先月の韓国出張は、慶尚北道の安東[アンドン]という、知る人ぞ知る山間部の地方都市(もっぱら伝統文化遺産が濃厚に残る場所として知られているはず)に行くことになりまして、ここはソウルからは約250km離れていますので(まぁノリとしては、在来線や高速道路で会津若松や松本経由長野への旅をするような感じでしょうか)、東京からは結構時間がかかります。そこで、まず7月1日の夜にソウル到着後、翌朝ソウル市街の東にある清涼里[チョンニャンニ]から、8時発の釜田[プジョン。釜山市街の北部]行で出発することにしました。
 清涼里を発車した列車は、途中忘憂[マンウ]と徳沼[ドクソ]で貨物シーンを見ながら、漢江沿いの山岳部へと分け入って行きます。しかし……やけに風景が湿っぽいと思ったら、楊平[ヤンピョン]付近で超ゲリラ豪雨に遭遇……。屋根に降った雨(バケツどころかプールをひっくり返したような……)が、窓を滝のように流れ落ちて行くのを車内から眺めるという凄まじい光景を目にしたのでした……。「こりゃあ楊平で足止めか……」と覚悟したのですが、幸いにして豪雨は弱まり出発進行~。当面の電鉄化計画の終点である龍門[ヨンムン]を経て、やがて江原道第二の都市・原州[ウォンジュ]に到着しました。
 ここからが最初のお楽しみ・雉獄山[チアクサン]越え。ELやDL (かつてはSL) が長大編成を牽引して山越えをするため、ループ線があったりするのです♪ 重厚な峰々を眺めながら峠越えをしますと、今度は忠清北道に入りまして、夏の日射しが照りつけるのどかな田園風景に気分も爽快~♪ やがて複線電化のセメント輸送路線・忠北線が合流しますと、韓国鉄道貨物輸送の一大拠点・堤川[チェチョン]に到着! まずは下車時に、今まで乗ってきた列車のドイツ風罐をパチリ!



 しばらく堤川駅で撮り鉄三昧に浸った後、今後は午後1時過ぎに発車する安東行(清涼里発)に乗って、いよいよ目的地・安東を目指します。この列車には客車セマウルを格下げした特室(グリーン車)が連結されておりまして、特室料金は日本のグリーン料金とは比較にならないほど安いので自ずとチョイス♪ 最高にデラックスなシートに座りながら、駅ごとに展開するセメント工場とセメント貨車の大群に目を見張ったのでした♪ とくに、嶋潭[ドタム]駅には複数の工場があって壮観の極み……。
 しかし、そんなセメント三昧の風景も、トンネルを抜けると一変! 南漢江を渡る鉄橋からの眺めは夢のような山水画の風景……。中央線沿線きっての景勝地・丹陽[タニャン]の絶景です。そういえば、19世紀末の英国の探検家・イザベラ=バード女史が『朝鮮紀行』という記録を残しておりまして、丹陽の風景「だけ」は絶賛していたのを思い出しました……(他の話題はここでは書けないダークさ ^^;)。
 そんなこんなで途中またもループ線で峠越えをしますと、列車は慶尚北道に入り、慶北線・嶺東線が合流するジャンクション・栄州[ヨンジュ]に到着~。電化区間はここまでですので、残り約30分の道程を前にELからDLにつなぎ代えます。停車時間のついでにヤードを眺めたところ、貴重な寝台車が朽ちて行く姿が……(「続きを読む」をご覧ください)。
 栄州からはいよいよラストスパート! 時折古い民家が見られる山村のあいだをクネクネと進みますと、やがて安東ダムのダム湖が見えてきまして、午後3時前、ついに目的地の安東に到着!! 本当に素晴らしい旅でした……。しかし清涼里から乗り通すと約4時間ということで、ソウル=安東間の所要3時間・3列シート・10~20分間隔運行の優等高速バスに対して全然勝負にならないのも事実(運賃もほぼ同じ)。というわけで、中央線の挽回は複線新線化と「ビチュロ」の登場によるしかないのでありますが、それは同時に古き良き客車列車の旅の機会が消えることを意味しているわけで、複雑な気分ですね……。


 栄州駅の片隅に放置されているムグンファ用新型寝台車10210形……。計4~5両見かけましたので、製造された車両のほとんど(5両ならすべて)が栄州に集められて朽ち果てつつあることになります (-_-;)。2001年製造で、実働数年、放置数年……ああ勿体ない (-_-;;)。



 安東の名物料理「ホッチェサパプ」。出発前、韓国人に「安東に行ったら必ずこれを食え」と言われたこの料理、チェサとは漢字で書くと「祭祀」と書きますので、要は精進料理です。焼肉や鍋のようなゴテゴテ・ワールドとは対極にあり、和食に近いですかね~。



 国鉄の安東駅は割と新しく (?) 小綺麗な駅舎ですが、そのすぐそばにある市外バスターミナルは如何にも1950~60年代的ノリが炸裂している感動的な建物! しかも「ポストミノル (バスターミナル)」」ではなく「安東停留場」と大書してあるのが泣けてきます (*^^*)。



 バスターミナルの内部はご覧の通り! 切符売り場、待合いベンチとテレビ、売店、立ち食いうどん屋……といった諸々が、何とも味わい深い多角形の構造の中に納まっています。そして裏のトイレに行く途中には、売る気があるのかないのかよく分からない土産物屋とか……(^^;

 しかし残念ながら、さすがにこの建物も老朽化しているためか、現在高速道路のインターチェンジの脇に新バスターミナルを建設しているのを目撃してしまいました (T_T)。たぶん今冬か来年には完成?……というわけで、この激しくシブいバスターミナルをご覧になりたい方はお早めにどうぞ……。