長野県の県都長野と、長野県最大の都市松本は、かつて松本を県都としていた筑摩県が長野県に吸収されて以来何かと仲が悪いと申しますか、互いに対抗心を燃やす間柄であると側聞します。その結果、長野県南北分裂論が歴史上しばしば起こり、その都度互いに県歌「信濃の国」を歌って「やっぱ止め止め」と矛を収めたのだとか (県歌が県民アイデンティティと分かちがたく結びついているという点で、長野県は本邦の中でも相当特異な事例でしょう)。最初から県名を信濃県にしておけば良かったのにね、と思うのは私だけでしょうか。
そんな二つの都会を結ぶ篠ノ井線は、長野県全体の統合にとって欠かせない大動脈であるわけですが、長野も松本もそれぞれが新幹線や「あずさ」で東京と結びついているためか、朝夕こそライナーや特急車使用の快速も運転されて混み合うものの、日中は「しなの」が速いことに加えて高速バスも走っているためか、普通・快速列車はE127系の2連がメインであるという……。しかも、それで全員着席出来てしまっているという……。かつては、長野〜松本の都市間輸送のため、165系に新幹線0系のシートを取り付けた急行「かもしか」(のち快速「みすず」に格下げ)も走っていたことを思えば、隔世の感と申しますか、幾許の寂寥感を禁じ得ないものがあります。そして、中坊か高坊の頃に18きっぷ旅をした際、篠ノ井線の普通列車が少なく、なけなしの急行料金と普通切符代をはたいて篠ノ井から松本間まで「かもしか」に乗った思い出がこみ上げてきたのでした(嗚呼、貧乏鉄小僧!)。