小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『黒百合』多島斗志之

2008年11月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
父の古い友人である浅木さんに、六甲山の別荘に招かれた私は、浅木さんの息子・一彦とともに向かったヒョウタン池で少女に出会う。
夏休みの宿題、ハイキング、次第に育まれる恋、そして死?
1952年夏、六甲の避暑地での淡い記憶に隠された真実とは。


~感想~
これはすごい。
2つの殺人事件が描かれるが、作中ではその真相は一切明かされないし、作中人物の誰も真相にはいたらない。
だが読者にだけは、隠された真相と秘密が厳然と示されるのだ。
それにしてもこれだけの趣向をさして「事件が余計」「せっかくの青春物語が均衡を崩している」と記している面々が多いのはいったいどうしたことか。
しっかりと青春模様を描きつつも、裏にこれだけのトリックを仕掛けていることこそが本作の魅力ではないか。


08.11.4
評価:★★★★ 8
コメント