小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『倒錯のロンド』折原一

2000年08月25日 | ミステリ感想
~あらすじ~
受賞まちがいなしと自負した推理小説新人賞応募作が盗まれた。
原作者と盗作者の、緊迫の駆け引きが始まる。

日本推理作家協会賞 候補、このミス10位、文春7位、江戸川乱歩賞 候補


~感想~
前作から一変し、読者を引き込む文体に。
叙述の罠は氏の諸作でも屈指の鋭さ。読了後に、もう一度はじめから読み返したくなる。


00.8.25
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『邪馬台国はどこですか?』鯨統一郎

2000年08月22日 | ミステリ感想
~収録作品~
悟りを開いたのはいつですか?
邪馬台国はどこですか?
聖徳太子はだれですか?
謀叛の動機はなんですか?
維新が起きたのはなぜですか?
奇蹟はどのようになされたのですか?

このミス8位、本ミス4位


~感想~
鯨統一郎のデビュー作にして頂点。ベストセラーにもなった。
くり出される推理の破壊力と、脇を固める証拠の質が、以降の作品とはケタ違い。
最初の3編からだんだんとトーンダウンしていくのはご愛敬。


00.8.22
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『Pの密室』島田荘司

2000年08月21日 | ミステリ感想
~収録作品~
鈴蘭事件
Pの密室


~感想~
幼少期の御手洗潔が謎を解くという、まるで同人誌のような設定の短編2作。
正直、出来はさほどでも……。


00.8.21
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『亜愛一郎の狼狽』泡坂妻夫

2000年08月14日 | ミステリ感想
~収録作品~
DL2号機事件
右腕山上空
曲がった部屋
掌上の黄金仮面
G線上の鼬
掘出された童話
ホロボの神
黒い霧


~感想~
『DL2号機事件』
奇妙な論理が、奇異な心理と行為を照らしだす。妄想あふれる怪作。

『右腕山上空』
豪快な一本背負いも「技あり」までか。強引にすぎる解決はいまひとつ。だが、目に浮かぶトリックが映える。

『曲がった部屋』
奇怪な行動の裏に潜む、曲がった論理。楽しい。

『掌上の黄金仮面』
これは恐れいった。見れば見るほどよく練られたトリック。不可能状況が逆転の発想で鮮やかに解かれる傑作。

『G線上の鼬』
不可思議な論理が不可能犯罪をひもとく。単純明快ながら鉄壁に近いトリック。

『掘出された童話』
暗号オンリーだが、物語として十分に面白い。よくこんなの作ったなあ。

『ホロボの神』
風通しの良さそうな、衆人環視の密室。設定に比して、トリックはやや物足りないが。

『黒い霧』
本領発揮の軽妙なスラップスティック。強引な真相が心地よい。


~総括~
こんなに勘が鋭い探偵も珍しい。軽妙・明快な筆致で描かれた、不可能状況のオンパレード。
珠玉の傑作短編集。


00.8.14
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『D坂の殺人事件』江戸川乱歩

2000年08月09日 | ミステリ感想
~収録作品~
二廃人
D坂の殺人事件
赤い部屋
白昼夢
毒草
火星の運河
お勢登場

石榴
防空壕


~感想~
探偵譚よりも怪奇譚、幻想譚にこそ乱歩の本領が現れる。
『赤い部屋』を筆頭に、まがまがしい異世界への扉がここにもそこにもあそこにも。


00.8.9
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『毒を売る女』島田荘司

2000年08月06日 | ミステリ感想
~収録作品~
毒を売る女
渇いた都市
糸ノコとジグザグ
ガラスケース
バイクの舞姫
土の殺意
ダイエット・コーラ
数字のある風景


~感想~
『毒を売る女』
氏にしてはひねり不足。

『渇いた都市』
なるほどこうやってつながるのか。

『糸ノコとジグザグ』
こんなに疾走感ある暗号物はかつてない。

『ガラスケース』
幻想譚。

『バイクの舞姫』
ふーん。

『土の殺意』
吉敷物じゃなくてもよかったような。

『ダイエット・コーラ』・『数字のある風景』
皮肉の利いた奇譚。


~総括~
ミステリと呼べるのはせいぜい『糸ノコとジグザグ』くらい。だが幻想物が案外楽しめた。


00.8.6
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『御手洗パロディ・サイト事件』島田荘司

2000年08月04日 | ミステリ感想
  


~収録作品~
すべてが「あ」で始まる  ――松尾詩朗
ギザのリング  ――園生晃子
沈みゆく男  ――青田歳三
ベートーベン幽霊騒動  ――角田妃呂美
巨乳鑑定士、石岡和己  ――優木 麥
Dark interval&ダージリンの午後  ――まる
御手洗潔の「暗号」つき女子寮殺人事件  ――和泉久生
ホント・ウソ  ――高槻榛襾
The Alien  ――Crystal Stevenson
鉄騎疾走す  ――小島正樹
御手洗さんと石岡君が出ている偽物小説  ――佐藤智子
御手洗潔と学校の怪談  ――コバトミチル
Pair jewels/Pair lovers  ――橘高 伶

シリウスの雫  ――柄刀 一
愚かな深海魚は幻影の海で泳ぐ  ――伊吹 真
北国騒動  ――馬杉 愛
夏季色オレンジ  ――極楽桜丸
US THERE  ――徳月モリ
スージー嬢  ――杉永裕章
ALiS  ――朝日屋ALiS
横浜スタジアム事件  ――氷川 透
追いかけて横浜  ――来栖未遊


~感想~
(全体的にネタバレ&毒吐きのため伏せ字→)上巻:ごめん暗号キライ『すべてが』。見事にサブストーリーを構築している。でも拾ったのは石岡じゃあ……?『ギザ』。短く鋭い『沈みゆく』。雰囲気良好『ベートーベン』。石岡君の醜態を見事に描いている『巨乳』。御手洗・石岡(特に後者)がとうてい言いそうもないセリフばかり『午後』。名前だけで解る暗号っていったい『女子寮』。頭の体操より抜粋?『ホント』。ごめん読めない『Alien』。「ある騎士の物語」+「疾走する死者」×素人臭さ=『鉄騎』。いいかげん推理『偽物』、稚拙『Pair』。
下巻:ここまで御手洗ものを描ききるとはさすが本職!『シリウス』。ラストが余計『愚かな』。これも見事『北国』。ふーん『オレンジ』。さっぱり『US』。それなりに『スージー』。これだけは本人作?『ALiS』。本職の意地『スタジアム』。強引な推理『横浜』。

まさに玉石混淆。本職は(おおむね)力の差を見せつけた。
とても出版できないような代物もちらほらあるのはご愛敬。
とってつけたような解決(言っちゃった)はともかくとして、島田荘司監修の同人誌と思えば十分楽しめる。


上巻 00.7.31
下巻 00.8.4
評価:★★★ 6
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