小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『「ABC」殺人事件』アンソロジー

2003年08月29日 | ミステリ感想
~収録作品~
ABCキラー  ――有栖川 有栖
あなたと夜と音楽と  ――恩田 陸
猫の家のアリス  ――加納 朋子
連鎖する数字  ――貫井 徳郎
ABCD包囲網  ――法月 綸太郎


~感想~
『ABCキラー』
読了後、数秒でプロットもトリックも忘却した。古くっさいトリックだな。

『あなたと夜と音楽と』
もう構成からして犯人バレバレ。終盤のベッタベタな展開もどうにかならんのか。この人、合わないかも。

『猫の家のアリス』
加納氏ってこんなに白ける描写だっけ?

『連鎖する数字』
夫婦そろってなんとも白ける描写。貫井氏は手抜きかな? そんなあなたは折原タイプ!

『ABCD包囲網』
かつてありそうで、やはりかつてないプロットが映える。


~総括~
なんだかなあ。「法月孤軍奮闘! ただし残党掃討戦につき士気ゼロみたいな!」雰囲気がただよう。


03.8.29
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『ヒトクイマジカル』西尾維新

2003年08月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
『死なない研究』を続ける助教授。
不老不死の少女をめぐる奇妙な研究のモニターに誘われた「ぼく」は、
京都北部に位置する診療所跡を訪れる。
が、そこに待ち受けていたのは凄絶な「運命」そのものだった!
殺し名1位『一人で二人の匂宮兄妹』が満を持して登場!


~感想~
純然たるミステリ『クビキリサイクル』
野心的悪漢小説(?)『クビシメロマンチスト』
学園(?)アクション『クビツリハイスクール』
壮大なるトリックの祭典『サイコロジカル』
……で。本書はなんと呼ぶべきだろう。
トリックはただの1つきり。伏線はほとんどなし。というかこの物語そのものが伏線・序章・予告編。
前半のドタバタ狂想曲がだんだんとシリアスになっていって……。
まさかの展開。いつもの結末。完結し、完結しない物語。
単体で評価するにはあまりに物足りない食い足りない、思わせぶりな前振りな、そんなお話。
まあ、面白いんだけど。本書をもって氏の筆力は完全に完成した。


03.8.14
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦

2003年08月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
白樺湖畔にそびえる洋館「鳥の城」は、主の5度目の婚礼を控えていた。
過去の花嫁はすべて何者かの手により婚礼の夜に命を奪われているという。
花嫁を守るよう依頼された探偵・榎木津礼二郎は、小説家・関口巽と館を訪れる。
館に入るなり探偵は叫んだ。――おお、そこに人殺しがいる。

このミス 20位
文春 9位
本格ミステリ・ベスト10 5位


~感想~
喉から手が出かけた待望の新作……も、今回はいつもに比して完成度は下回るか。
ぶっちゃけると「書けそう」と思ってしまった。
いや、無理ですよもちろん。こんなの一生かかったって自分ごときには書けない。
それは百も承知です。
しかし……。50ページで解った犯人・トリックと、どうにも物足りない。
誰の目にも一目瞭然な仕掛けを描くことで、より一層、犯人の哀切を浮き彫りにさせる意図なのだろうが。
メンツはそろわず、事件は入り組まず、細工が解っているだけに論理も切れず……。
氏はもっともっともっともっともっともっともっと……すさまじい話を書ける人なのに。
まあ。要するになにが不満だったかというと。
某助教授の(ネタバレ→)乾電池の話の焼き直しにすぎなかったのが 最たる不満。
あれが念頭にあったため、「同じじゃん」とさっぱり驚けなかった。


03.8.12
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『見えない精霊』林泰広

2003年08月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
インドの森の奥深く、老婆は突然語り始めた。その声と言葉は、自らの不可能な死を語る伝説のカメラマン「ウィザード」のものだった。
飛行船の闇の中、ウィザードを葬るために現れた美少女と、ウィザードの戦いが始まる。しかし、少女の論理と見えない精霊の力に彼は翻弄され……。

カッパワン登竜門


~感想~
パズラーと見せかけて、これは純然たるトリック一本勝負ミステリ。
たった一つのトリックですべてを紡ぎ上げた……だけに、早々と見破ってしまうと全く楽しめなかった。
文章ももっとがんばれ。


03.8.7
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『クレイジー・クレーマー』黒田研二

2003年08月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
大型スーパー「デイリータウン」のマネージャー袖山剛史は、
クレーマー・岬圭祐、万引き常習犯・マンビーという二人の“悪魔”に悩まされていた。
岬の嫌がらせはエスカレートする一方。
マンビーにも商品を盗まれてしまい、傷心の袖山の支えは恋人・美乃の存在だったが……。


~感想~
豪快。あいかわらずの、一切無駄のない構成。
純粋論理やトリック小説と言うよりも、壮絶な(ネタバレ→)サイコ VS サイコ小説。
精緻な謎解きを作るよりも「読者をいっちょ驚かせてやるか」というようにものされた一品。
トリックを解いてやろうと意気込むより、素直に読んで騙されるのが吉。


03.8.3
評価:★★★☆ 7
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