~あらすじ~
「警察官であるより前に、一人の人間として、常に正しくありたい」そう語り、警察官の鑑と讃えられた熊倉警部が墜落死体で発見された。事故死か、それとも殺人か。W県警初の女性警視の松永菜穂子に事情を聞かれた、熊倉警部の娘はあることに気づいた様子を見せる…「洞の奥」
ある県警を舞台にした連作短編集。
~感想~
これまで社会派ミステリを多くものしてきた作者が、本作では明確に本格ミステリに舵を切ってきてくれた。
冒頭の「洞の奥」からしてキレッキレで、今回はこういう話を描いていくよと宣言するように強烈なオチが襲いかかる。
続く「交換日記」でアンフェア…とまでは行かないが、トリックを成立させるために強引な設定を山ほど盛り込み、まるで読者を騙すためならなんでもするとほくそ笑むよう。
三編目「ガサ入れの朝」はこっちかな?と思わせておいて、あっちから見えないフックが飛んでくる。既視感バリバリのトリックではあるがこうも綺麗に決められては脱帽。
「私の戦い」は多くは語れないがタイトルが秀逸で、これも綺麗に騙された。
「破戒」はアレやアレを読んだ向きなら一瞬で答えがわかるだろうが、題材を上手く絡ませた。
そして掉尾を飾る「消えた少女」で冒頭の松永刑事が再登場し、巧みに隠された手掛かりとそこから導き出される怒涛の推理で、連作短編集としてまとめ上げる結末がなんともはや。
まさに「企みに満ちた」という言葉がよく似合うトリック特化型ミステリで、早くも今年度の本ミスベスト5は間違いなく、白井智之「お前の彼女は二階で茹で死に」とどちらが上に来るのか、今から楽しみでならない。
19.4.30
評価:★★★★ 8
「警察官であるより前に、一人の人間として、常に正しくありたい」そう語り、警察官の鑑と讃えられた熊倉警部が墜落死体で発見された。事故死か、それとも殺人か。W県警初の女性警視の松永菜穂子に事情を聞かれた、熊倉警部の娘はあることに気づいた様子を見せる…「洞の奥」
ある県警を舞台にした連作短編集。
~感想~
これまで社会派ミステリを多くものしてきた作者が、本作では明確に本格ミステリに舵を切ってきてくれた。
冒頭の「洞の奥」からしてキレッキレで、今回はこういう話を描いていくよと宣言するように強烈なオチが襲いかかる。
続く「交換日記」でアンフェア…とまでは行かないが、トリックを成立させるために強引な設定を山ほど盛り込み、まるで読者を騙すためならなんでもするとほくそ笑むよう。
三編目「ガサ入れの朝」はこっちかな?と思わせておいて、あっちから見えないフックが飛んでくる。既視感バリバリのトリックではあるがこうも綺麗に決められては脱帽。
「私の戦い」は多くは語れないがタイトルが秀逸で、これも綺麗に騙された。
「破戒」はアレやアレを読んだ向きなら一瞬で答えがわかるだろうが、題材を上手く絡ませた。
そして掉尾を飾る「消えた少女」で冒頭の松永刑事が再登場し、巧みに隠された手掛かりとそこから導き出される怒涛の推理で、連作短編集としてまとめ上げる結末がなんともはや。
まさに「企みに満ちた」という言葉がよく似合うトリック特化型ミステリで、早くも今年度の本ミスベスト5は間違いなく、白井智之「お前の彼女は二階で茹で死に」とどちらが上に来るのか、今から楽しみでならない。
19.4.30
評価:★★★★ 8