小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『退職刑事 3』都筑道夫

2004年03月28日 | ミステリ感想
~収録作品~
大魔術の死体
仮面の死体
人形の死体
散歩する死体
乾いた死体
筆まめな死体
料金不足の死体


~感想~
一つ一つを見るとずいぶん小粒だが、読後感がすごくいい。
見習いたい、誰も彼にも見習わせたい文体に起因するものか。
小粒と言ってみたが、『大魔術の死体』は傑作。
清冽な論理のもと、解体――あるいは構築――された謎は、まさに魔術。


04.3.28
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『OZの迷宮』柄刀一

2004年03月28日 | ミステリ感想
~収録作品~
密室の矢
逆密室の夕べ
獅子の城
絵の中で溺れた男
わらの密室
イエローロード
ケンタウロスの殺人
美羽の足跡

日本推理作家協会賞候補、本ミス9位


~感想~
提示される謎はどれもこれも超・魅力的。
この謎が完璧に解かれるのなら、未曾有の傑作に違いない――のだが、ほとんどが台無しになっている。

たとえばただのアンフェアを屁理屈で言い逃れしたり『獅子の城』、
たとえば不可能状況のくせに犯人が自由に動きすぎてたり『わらの密室』、
たとえば女性がまったく描けてなかったり『イエローロード』、
たとえば謎は最高峰なのに真相がげんなりだったり『ケンタウロスの殺人』と、どれもこれも尻すぼみもいいところ。
せめて気どってヘッタクソ(私見)な文章さえマシならば、まだどうにかなったろうに。
何度も読了をやめかけた、こっぱずかしいエセ文学味にひたすら苦悶。
例によって脳内だけでとても描けない情景・トリック。

(個人的に)もう、この人はいいや。


04.3.28
評価:☆ 1
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ミステリ感想-『ネジ式ザゼツキー』島田荘司

2004年03月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
記憶の一部を失った男が書いた奇妙な童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』。
蜜柑の樹の上にある村、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機。
夢物語としか思えない男の話から、御手洗潔が導きだした驚愕の真相とは?
本ミス10位


~感想~
『眩暈』、再び。
年齢をかぞえ上げるのは愚かだが、この御年でここまでの稚気に富んだ物語を紡ぎ、謎を編みトリックを施せるのが氏のすごさ。ここにまごうかたなき奇想と、ミステリの過去・現在・未来がある。
(ネタバレ→)ちょっと気になったのが、組み方の相違。タテ組みが幻想パートで横組みが現実パートに思えるのだが、そうすると解決部分がタテ組みになっているのはどういうことだろうか? あのいかにも氏らしい、大団円の結末が幻想だとすると……。以上、妄想でした。


04.3.13
評価:★★★★★ 10
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ミステリ感想-『家守』歌野晶午

2004年03月08日 | ミステリ感想
~収録作品~
人形師の家で
家守
埴生の宿

転居先不明


~感想~
『人形師の家で』
これぞ奇想。

『家守』
冴えわたるトリック。

『埴生の宿』
03年度ベスト短編。

『鄙』
この分量で“むら”を描ききるとはさすが。

『転居先不明』
歌野氏の新旧お家芸がそろいぶみ。


~総括~
ひさびさに「面白かったな~」と声を大にして言える傑作短編集。本格ファンには太鼓判を押してオススメします!


04.3.8
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『零崎双識の人間試験』西尾維新

2004年03月01日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「零崎一賊」それは殺し名の第3位に列せられる殺人鬼の一族。
その長兄にして切り込み隊長『二十人目の地獄・自殺志願(マインドレンデル)』こと零崎双識。
息をもつかせぬ激闘また激闘の果てに双識を待つものは……?


~感想~
維新武侠小説。戯言オールスター感謝祭ただし主役(戯言遣い)はひとり蚊帳の外、みたいな!
あの人やこの人がまるでファンサービスのようにそちらこちらで顔を出し、本筋にはからまない。
例によってトリックもある戯言もある笑いもある惨劇もありまくる。
むやみに楽しくむやみに苦しく、やたらに明るくやたらに暗い、いつもながらの維新小説。
全面肯定のあなたは頬をゆるめ、全面否定のあなたは眉をひそめること間違いなし。


04.3.1
評価:★★★☆ 7
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