小金沢ライブラリー

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映画感想―『007慰めの報酬』

2010年03月30日 | 映画感想

~あらすじ~
初めて愛した女・ヴェスパーを失ったジェームズ・ボンドは、事件の黒幕の存在を知る。
ハイチへと飛び、ボリビアの政府転覆と天然資源の支配を目論むグリーンに接触したボンドは復讐心を胸に秘めながら、グリーンの計画阻止に動くが……。


~感想~
前作のラストシーンからそのまま始まるという異例の構成で、伏線やストーリー展開、ボンドの心理の揺れ動きまでも、ほとんどが前作に任されているので、説明臭いシーンがほとんどなく、アクションにアクションをたたみかけるノンストップ・ムービーになっている。ひょっとして前・後編だったのか。
これが2作目となるダニエル・クレイグ演じる新ボンドは、スパイとして新米なだけあり、後先考えずに体力勝負で獲物を追うキャラだけに、この大胆な構成は正解だろう。
また、悪・即・斬と言わんばかりの出会った敵は皆殺しの、ぜんぜんスマートじゃないボンド像も新鮮で、007というブランドによりかからない、脚本の攻めの姿勢が楽しい限り。これはこの先もいいシリーズになるんじゃないだろうか。


評価:★★★ 6
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映画感想―『ナイトミュージアム2』

2010年03月28日 | 映画感想

~あらすじ~
ニューヨークの自然史博物館の元警備員のラリーに電話が入る。
ワシントンにある世界最大の博物館スミソニアンの倉庫に移送された展示物たちが、不思議な力をもつ“魔法の石板”により生き返ってしまったというのだ。
ラリーはあわててワシントンに飛んだが、古代エジプト王がよみがえると、ナポレオンやマフィアを従え世界征服に向けて大暴走!
ラリーは伝説の女性パイロット・アメリアやリンカーン、アインシュタインを味方につけ、仲間とともに立ち上がる。


~感想~
まず前作ありきで、いろいろな基本設定が説明されないため、前作から先に観なければいけないことは大前提。
ストーリーはディズニー映画らしい安定感で、大人から子供まで、年齢・国籍を問わず楽しめることは言うまでもない。
1を観ていて悪い思い出がないならば、観て損をしないことは保証できるだろう。


評価:★★☆ 5
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映画感想―『スラムドッグ$ミリオネア』

2010年03月26日 | 映画感想

~あらすじ~
運ではなく、運命だった。アジア最大のスラム街・ムンバイで育った少年ジャマールは、世界的人気番組「クイズ$ミリオネア」にて一夜にして億万長者のチャンスを掴む。
だが、無学な彼は不正の疑いをかけられ、警察に連行され、尋問を受けることになってしまう。
彼は一体どうやって答えを知りえたのか? そして、彼がミリオネアに挑戦した本当の理由とは?


~感想~
細けえことはいいんだよ、と言わんばかりに多少の粗は置き去りにして、最後まで突っ走る、いたって正しい娯楽映画。アカデミー賞は伊達ではない。
なぜ都合よく経験したことばかり出題されるのかとか、見え見えの死亡フラグとか、強引なハッピーエンドとか、スタッフロールの全員ダンスとかにいちいち目くじら立てるのは馬鹿のやること。
スラムに生きる少年の過酷な人生と、日本人にもなじみ深いミリオネアの場面とが交互に挿入される構成が、下手すると説教臭くなったり、地味で退屈になりがちなストーリーを盛り上げ、飽きさせない造りになっている。
アメリカ版みのもんたの怪演もすばらしく、万人に広く勧められる良作である。


評価:★★★☆ 7
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映画感想―『ターミネーター4』

2010年03月25日 | 映画感想

~あらすじ~
スカイネットの叛乱により崩壊した未来世界。抵抗軍の指導者であるジョン・コナーは、一人の少年を探していた。
彼の名はカイル・リース。過去に送り込まれジョンの父親となるはずの人物である。しかしカイルはスカイネットに襲われ、拉致されてしまう。抵抗軍に助けられた謎の男マーカスは、スカイネット侵入の手引きをするが……。


~感想~
あちこちで言われている通り、もうターミネーターでもなんでもない物語になってしまった。
3をほぼ無かったことにして作り直したのだが、3どころか2も1も顧みないような内容で、まず主人公からして、あの若くしてドラッグでもやってそうなうらぶれたジョン・コナーはどこに行ったと言いたくなるような、スーパーマン役までやったたくましいクリスチャン・ベール兄貴に配役が変更されているのががっかりの1つ目。
さらに物語を動かすのもジョンではなく、新キャラの謎めいた兄貴と戦闘機乗りの女であり、だったらジョンと嫁でいいじゃないかという疑問が始終つきまとってしまうのもがっかり。(ちなみに嫁はほとんどストーリーに絡まない)
ターミネーター要素を極限まで削ぎ落としておきながら、ラスボスは旧型だったはずの知事であるのも逆にがっかりで、ロボットと人間の世紀末戦争に知事がゲスト参戦といった雰囲気がただよってしまう。
ターミネーターの続編でなければ、それなりに楽しめたのだろうが、続編であることが足を引っ張ってしまった、総じて残念な作品である。


評価:★★☆ 5
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映画感想―『ザ・ロック』

2010年03月24日 | 映画感想

~あらすじ~
かつて脱獄不能とうたわれたアルカトラズ島に、テロリスト軍団が観光客を人質に立てこもった。
タイム・リミットは40時間。FBIは化学兵器のスペシャリストと、33年前アルカトラズ島を脱獄したという男を「ザ・ロック」と呼ばれる鉄壁の要塞へと送り込む。


~感想~
いま改めて見るとマイケル・ベイ作品以外の何者でもないなこれは。
ショーン・コネリーとニコラス・ケイジという、知的なサスペンスもこなせる名優2人を集めて、いちおう脱獄犯と天才技師というギミックを持たせておきながら、要するに「アルカトラズでコマンドー」になってしまうのがベイクオリティ。 しばらく時間をおくと、この映画と『アルティメット(鳥人アクション映画)』のストーリーが一緒になって区別がつかなくなるレベルで、「知的な駆け引きとか盛り込みたかったけどめんどくせーから全部ぶっ飛ばしちまえYeahhhhhh!」というベイの心の叫びが聞こえてくるようだ。
なんの間違いか20世紀を代表するアクション映画のひとつにかぞえられることすらあるが、単なるベイ映画なので取り扱いにはご注意を。


評価:★★★☆ 7
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映画感想―『ハリー・ポッターと謎のプリンス』

2010年03月23日 | 映画感想

~あらすじ~
シリーズ第6作目。魔法学校の6年生となったハリー・ポッターたちが、史上最悪の魔法使いと恐れられるヴォルデモートとの対決に備え、ヴォルデモートの過去と弱点に迫る一年間を描く。


~感想~
回を重ねるごとにつまらなくなっていくシリーズだが、これは退屈さではナンバーワンだろう。
広げた風呂敷をたたむことだけに懸命で、初期の頃のようなファンタジックな魅力や、魔法世界の楽しさはどこにも見当たらず、善と悪の単純な戦いに落ちてしまい、見どころが少ない。
物語が佳境になるにつれ主要キャラもばんばん死んでいき、雰囲気が暗くなるのも困ったもので、もうこのシリーズを、本来のターゲットであるはずの子供は純粋に楽しめないんじゃなかろうか。
またこのシリーズの副題はストーリー的にどうでもいいものが選ばれがちだが、今回の謎のプリンスは一見重要そうに見えて、実は炎のゴブレット並にどうでもいいものであったりする。
ここまで観てしまったからには最後まで付き合うが、もう期待は全く持てないな……。


評価:☆ 1
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ミステリ感想-『殉教カテリナ車輪』飛鳥部勝則

2010年03月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
憑かれたように描き続け、やがて自殺を遂げた画家・東条寺桂。彼が遺した二枚の絵、“殉教”“車輪”に込められた主題とは?
彼に興味を持って調べ始めた学芸員・矢部直樹の前に現れたのは、20年前に起きた不可解な二重密室殺人の謎だった。
第九回鮎川哲也賞受賞作。


~感想~
図像学という、平たく言えば絵画の絵解きをするというマイナーな学問を軸に据え、作中に登場する絵画を著者自ら描いたという意欲作である。
意欲だけにとどまらず、完全無欠の二重密室に、作中作という形式で当然期待されるトリックもぶち込み、いかにもデビュー作らしい、盛りだくさんの内容になっている。
それだけに序盤の濃いミステリ談義、終盤の軽めに流れていく展開が、重厚な雰囲気になりえた作品の魅力を、逆に若干弱めてしまった感がしてならない。
それは有栖川有栖による解説にも共通で、途中までは名文だったのに、中途で自分の文に酔い始めてから酷い有様になっている。
と、脱線はともかくとして、そうした重箱の隅をつつく瑕疵ともいえない瑕疵を差し引いたとしても、実に鮎川賞にふさわしい労作だと言えるだろう。


10.3.12
評価:★★★☆ 7
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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 11』加藤元浩

2010年03月21日 | マンガ感想
「寄る辺の海」★★☆ 5
~あらすじ~
一人の少年が溺死した40年前の事件。その真相を告発する手紙により一堂に会した当事者たちと少年の父親。そして起こる事件。40年前の真相は?

~感想~
トリックとしては小粒で、証言の矛盾を突き合わせる解決も物足りないが、ストーリー展開だけで読ませる。
結末の一言も冴え、ロジックだけではないマンガとしての面白さのある佳作。


「冬の動物園」★★ 4
~あらすじ~
冬の動物園で起きた殺人事件。その事件には推理作家志望の青年が、成仏できないほどの思いが託されていた。

~感想~
こちらも小粒なトリック。話の面白さだけで引っ張った印象。
実は次巻の労作の前に書かれていたのだが、刊行時期と作中の季節を合わせるために、こちらが先に収録されたため、この11巻は小さめの事件が集まってしまったという裏事情がある。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 10』加藤元浩

2010年03月20日 | マンガ感想
「魔女の手の中に」★★★★☆ 9
~あらすじ~
優が持ってきた1枚の葉書から語られる、想の悲しき過去の事件。始まりは想と女検事・アニー、そして魔女裁判と呼ばれた公判との出会いだった。

~感想~
初の二話ぶち抜き構成となっただけはある、分量に見合った大作。
法廷劇としての面白さと本格ミステリのキレを兼ね備え、もちろん最後には意外な真相を見せてくれる。
おまけにシリーズとしても重要な一編であり、ファンは見逃せない一冊である。
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ミステリ感想-『金貨の首飾りをした女』鮎川哲也

2010年03月19日 | ミステリ感想
~収録作品~
井上教授の殺人計画
扉を叩く
非常口
ブロンズの使者
北の女
金貨の首飾りをした女
夜を創る
夜の散歩者


~感想~
倒叙ものが大半で、一部は読者には解きようが無い、後出しジャンケンのような結末の作品もあるのが残念。
良質の作品を挙げれば、のちに三番館シリーズとして書き直された『ブロンズの使者』、中編並の分量の『北の女』、鬼貫警部が登場する『金貨の首飾りをした女』が秀逸。
あとは懸賞つきパズル小説として書かれたものもあり、倒叙ものばかりとはいえ、バラエティには富んでいる。
今となってはコレクターズアイテムに過ぎないが、読んで損はしない短編集であった。


10.3.8
評価:★★☆ 5
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