小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『袋綴じ事件』石崎幸二

2002年07月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
孤島に隠棲する研究者が、自慢の施錠システムの中で襲われた。
「嵐の山荘」状態で人の出入りはなし。荒らされた室内で何が起こったのか。
事件の鍵は石崎が持ち込んだ袋綴じのミステリに?
封印が破られた瞬間、すべての謎が解けた!?


~感想~
密室本。書くたびに腕を上げている。二転三転の真相は珍しく(?)無理がない。
残念なのは、小説中の石崎氏が2作目をピークに真人間化していること。カッコイイあなたは見たくないw
それにしても……(ネタバレ→)大澤くんっているだけだよね? 人数を増やすためだけにw


評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『火蛾』古泉迦十

2002年07月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
12世紀。
イスラム教徒であり作家のファリードは聖者たちの伝記を編纂すべく、各地をめぐっていた。
アリーと呼ばれる聖者から、彼と同じ名を持つ“アリー”の伝説が語られたとき、
世界はゆっくりと、色と形を変えていく……。

第17回メフィスト賞
本格ミステリ大賞 候補
このミス 14位
文春 10位
本格ミステリベスト10 2位


~感想~
すごい。ここまで完璧な、完璧と思わせる物語はひさびさに見た。
前代未聞・空前絶後の結実にはただ慄然とするばかり。
難解な語句と知識がいつしか溶融し、文章の霧の中へと引きずり込まれていく。
この驚嘆すべき才能、第2の京極夏彦を見いだした感すらある。
がぜん注目の第2作はいかなる舞台でいかにして語られるのか、決して目を離せない。(読了当時記す)

※しかしあれから丸13年……。いまだ新作の音沙汰はなしw


02.7.18
評価:★★★★★ 10
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ミステリ感想-『天に昇った男』島田荘司

2002年07月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
天に昇ろうとした男の伝説が残る九州・星里の街。
祭りの夜、やぐらに三人の男女の死体が吊された。
犯人とされた門脇春男は、17年の収監ののち、死刑を執行される。
ところが奇跡が起こり、彼は生き延び、釈放された。
そしてめぐってきた祭りの夜、彼自身が伝説のとおりに天に昇ったが・・・。


~感想~
(いきなりネタバレ→)安易な夢オチに終わらず、夢に堕ちた理由をつけるあたりさすが。
ミステリにあらずも見逃せない佳品。


02.7.14
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『浦賀和宏殺人事件』浦賀和宏

2002年07月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
作家・浦賀和宏は悩んでいた。次作のテーマは「密室」。
執筆に行き詰まるなか、浦賀ファンの女子大生が惨殺死体で発見される。
彼女が最後に会っていたのは浦賀和宏!? そしてその裏にはもうひとつの事件が?


~感想~
短いなりに、だがこの分量でこの値段は(以下自粛)。
トリックは多少目を引くもいまひとつ。だいたい密室本という企画自体(以下自粛)。


02.7.11
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『鏡の中は日曜日』殊能将之

2002年07月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「梵貝荘」は法螺貝を意味するいびつな館。
主は『魔王』と呼ばれる異端の仏文学者。
一家の死が刻印された不穏な舞台で、深夜に招待客の弁護士が刺殺され、
現場となった階段には一万円札がばらまかれていた。
不可解な事件に挑むのはあの名探偵。真相はいかに?

文庫版には『樒/榁』を併録。
本格ミステリ大賞候補、このミス15位、本ミス4位


~感想~
正直「この人一発屋なんじゃあ?」と思いつつあったところに降ってわいた、逆転の傑作。緻密でいながら豪快、作中作もなかなかのキレ。筆致も軽快で流れるよう。俊英の復活(?)に一安心。
(ネタバレ。『ハサミ男』も読了後にお読みください→)しっかし、このトリックはちょっと卑怯ではないだろうかw まるで『ハサミ男』という作品自体をミス・ディレクションにしたよう。まさか二度も同じトリックを使ってくるとは思わないw


02.7.10
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『長く短い呪文』石崎幸二

2002年07月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
自分にかけられた「呪い」を解くために少女が帰ったのは、一族だけが住む孤島。かつて姉を交通事故死に追いやり、ついには妹にまで伸びる魔手の正体とは? 木に刺さったネジ、腕を切断された人形……謎めいた意匠が示す想像を絶する真相を、いつものトリオはあばけるのか?


~感想~
文体はもはや好みの問題。
伏線の意外な(失礼)周到さに舌を巻くも、裏の真相はただでさえ無茶な設定をさらに無茶にした感も。
毒舌も控えめ。でも……この人好きだなぁ。


02.7.10
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『フラグメント』古処誠二

2002年07月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
東海地震で倒壊したマンションの地下駐車場に閉じ込められた6人の高校生と担任教師。
暗闇の中、少年の1人が瓦礫で頭を打ち死亡する。事故か、それとも殺人か?
もしも殺人ならば、全く光のない状況でどうして一撃で殺すことができたのか?

本格ミステリ・ベスト10 6位


~感想~
文庫化に際し改題。
全編総論理細工。読者はついていけるのか?
驚愕する点は皆無で、提起だけした疑問に解決策の提示はなし。
主たる謎は早々に解かれ、裏の真相も衝撃は薄い。
比喩は多いが面白味はなく、城戸の人物像に深みもなし。全体的に退屈。
なぜにこんなに高評価なのか僕にはまったく理解できない。


02.7.5
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『幽体離脱殺人事件』島田荘司

2002年07月02日 | ミステリ感想
~あらすじ~
夫婦岩を結ぶしめ縄に吊された男の死体は、
吉敷が数日前、酒場で知り合った男、小瀬川の名刺を持っていた。
死体の男と小瀬川を結ぶ線とは?
そのころ、小瀬川の妻に呼ばれ、京都を訪れた女を数々の奇怪な事態が襲い……。


~感想~
氏の作品中でも指折りの緻密な細工。しかしそれが面白さにつながっているかというと……。
細かい分、清冽さに欠けた感。終局の展開は必要だったのだろうか?


02.7.2
評価:★★ 4
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