小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『黄昏の囁き』綾辻行人

1999年10月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
兄が事故死した。帰郷した医学生翔二は、事故の真相を追い始める。
謎の『囁き』に怯える兄のおさななじみたち。
やがて一人また一人と殺人鬼の魔の手が伸びるなか、彼の脳裏に遠い日の戦慄すべき記憶が甦る……。


~感想~
シリーズ3作目にして、ついにミステリとの融合に成功した。
あくまでも『囁き』でありながら、幻想に傾きすぎず、現実との平衡を保った。
巧みな犯人の隠匿。二転・三転する展開。やはり氏の作品には結末で驚かせてもらいたい。


99.10.28
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『緑衣の牙』竹本健治

1999年10月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
深い森に囲まれた函館近郊の星辰女子学園で惨劇が。二年生の朝倉麻耶が水死体で発見されたのだ。
さらに、麻耶の死んだ沼の岩に『罪ハ血デ贖へ』の血文字が…。
連続殺人に牧場智久と武藤類子が挑む。

文庫化に際し「眠れる森の惨劇」から改題。


~感想~
酷評した妖霧の舌の次にこんな秀作が書かれるのだから解らない。
鮎川哲也をほうふつとさせる不可能トリックと明快な解決。
一息に読ませる良品なり。


99.10.18
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『ROMMY』歌野晶午

1999年10月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
時代を疾走して早逝した天才シンガーROMMY。
録音スタジオの仮眠室で彼女は息絶えていた。
犯人はスタッフの中に? 孤高の天才歌手に隠された真実とは。
才人歌野晶午の本領発揮! 革命的野心作。


~感想~
間違いなく日本ミステリ史上に残る傑作。
解決を境に、すべての構図が違う色を見せ、すべての歌詞が真の輝きを現す。
人々の想念の交錯から生まれる誤解や混沌の描写は、氏の最も得意とするところ。
危うくもろく、それでいて堅牢な物語。遊び心に満ち満ちた趣向の数々。
ミステリに新たなる地平が拓かれた。


99.10.14
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『血食』物集高音

1999年10月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
昭和三年。探偵社を営む系譜学者、忌部言人は依頼された調査のため、友人物集高音とともに紀伊大島に渡る。
当地の漁村で戸長の屋敷を訪れた忌部らを迎えたのは、一家皆殺しの惨殺死体だった。
そこに残された、アルファベットらしき文字が記された意味不明の木片は、明治日本を揺るがした大事件の謎に忌部らを導くのか。


~感想~
覆面作家のデビュー(?)作。
さすがに文体・展開・描写は玄人はだし。珍しく頼りない探偵像は個性にあふれ魅力的。
派手なトリックはないが、緻密に計算されたプロットは見事。圧倒される知識の山も興味を持てれば面白い。
異才の今後を見守りたい。


99.10.8
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『ドッペルゲンガー宮』霧舎巧

1999年10月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
北澤大学新入生のぼく、二本松飛翔は、サークル≪あかずの扉≫研究会に入会した。
クセ者ぞろいのメンバー6人が、尖塔の屹立する奇怪な洋館“流氷館”を訪れた時、恐るべき惨劇の幕が開く。

第12回メフィスト賞


~感想~
「人間の描けていないミステリといえば?」と聞かれれば僕は真っ先にこれをあげるだろう。
下手に描こうとしているものだから、なおさら酷いことになっている。
要のトリックは大仕掛けで面白いのだが、見せ方がとにかく力不足。
ぶっちゃけた話「ここは僕ならこうするのに」「こうしたらもっと面白くなるのに」と大それたことを考えてしまう。
可能性はおおいに持った作家だろうから、力を備えてくれれば化けるはず。


99.10.4
評価:★ 2
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