小金沢ライブラリー

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映画感想―『2012』

2010年09月30日 | 映画感想

~あらすじ~
2009年、科学者たちは地球が間もなく滅亡に向かっているという事実をつかんだ。
2012年、売れない作家のジャクソン・カーティスは子供たちとイエローストーンに旅行中、干し上がった湖底に建てられた巨大な施設を発見する。
世界滅亡が迫っている事実を知ったジャクソンは、家族を守るために必死で生き残る術を模索しはじめるが……。


~感想~
圧倒的なCGで世界崩壊を描いてみせた、ただそれだけの作品。
しかしこれは褒め言葉で、同監督の「デイアフタートゥモロー」のような、「多くの仲間を犠牲にして息子に会ってだからどうなの?」という適当すぎる家族愛に費やす描写をめいっぱい削り、名所旧跡を木っ端微塵にすることと、人をゴミのように殺すことだけに注力したおかげで、かつてなくスケールの大きなディザスタームービーに仕上がっている。
終末を描いた映画にありがちな、神の啓示や科学への警鐘なんてものもなく(なんせローマ法王と信徒が祈りを捧げる大聖堂が崩壊してみんな下敷きになる始末だ)ただ単にひたすら世界が滅亡するだけのストーリーにはもはや潔さと風格すらただよう。
「世界は滅んでもアメリカは不滅」な空気はもちろんあるが、どっかの駄作のように宇宙人が助けに来たりといった半端な救済もなく、人類が独力で大災害に立ち向かう展開も良好。
CGがすごいとかもはやそんなレベルではない驚異の映像で物が壊れまくる2時間半、そういう映画が好きな向きには強くおすすめ。


評価:★★★ 6
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映画感想―『シャッターアイランド』

2010年09月29日 | 映画感想

~あらすじ~
精神を病んだ犯罪者だけを収容し、四方を海に囲まれた島から一人の女が姿を消した。
島全体に漂う不穏な空気、なにかを隠した怪しげな職員たち、解けば解くほど深まる謎……。
事件の捜査に訪れた連邦保安官テディがたどり着く驚愕の事実とは。


~感想~
設定からしてオチがモロバレのノーガード戦法。伏線や仕掛けが次々と目に止まり、「これで正解だろうか」という微かな不安はすぐに消し飛ぶ。
しかしオチが見抜けたからつまらないということはなく、無数の伏線を見つけ、追いかけていくのがなかなか楽しい。
こういった(いちおうネタバレ→叙述トリック)映画は、ごく一般的な映画ファン(笑)にはえてして評判が悪く(例:シックスセンスを除く初期シャマラン作品)、今作もさんざんに叩かれているが、こういった映画好きならば、雑音に惑わされることなく、観て損はしないだろう。


評価:★★☆ 5
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映画感想―『第9地区』

2010年09月24日 | 映画感想

~あらすじ~
ヨハネスブルグ上空に現れた巨大UFO。派遣された偵察隊が見たのは、船内で弱り果てたエイリアンの難民の群れだった。
それから28年後、エイリアンと人間が暮らす共同居住区“第9地区”はスラムと化していた。
超国家機関MNUはエイリアンの強制移住を決定し、ヴィカスという男を現場責任者に指名する。
彼は立ち退きの通達をして回るうち、知らずに人類とエイリアンの歴史を変える大事件の引き金を引いてしまう。


~感想~
宣伝では「社会派SF」や「ハートフルコメディ」に偽装されていたが、フタを開けてみればゲロと内臓と死体が乱舞するお下劣アクションであった。
前半はエイリアンたちにアメリカンなノリで立退きを迫る職員の足跡を追った、フェイクドキュメンタリーの体裁で描かれるが、いつの間にやらそんな手法は忘れられ、ゴッドハンド洋一とグロいけど愛嬌のあるエイリアン二人の織り成すバディ・アクションへと変貌。
そのアクションの激しさたるや、未知の科学兵器と現代兵器の壮絶なぶつかり合いで、ドキュメンタリー要素は微塵もなくなってしまうが、手に汗握らせるもの。
非人道的な扱いを受けたとはいえ、よく考えると相当に鬼畜な主人公も人間性はともかく、作品にはぴったり合う。
グロ耐性、バカ耐性のあるアクション好きなら楽しめるだろう。


評価:★★☆ 5
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映画感想―『スペル』

2010年09月23日 | 映画感想

~あらすじ~
きっかけは老婆へのほんの小さな不親切。逆怨みで言い渡されたある「呪文(スペル)」が銀行員の平穏な日常を跡形もなく変えていく。
理不尽な脅威に怯えながら、タイムリミットの72時間で、呪いを解き生き残ることができるか?


~感想~
突然わっと出てきて驚かすお化け屋敷タイプなのに、やはり心拍数が1つも上がらないのがハリウッドホラー。
「13日の金曜日」の頃からそうなのだが、怖いとグロいをはき違えているらしく、虫やらゲロやらで力押ししてくるのも困ったところ。
それにしても主人公の防御力ときたら尋常ではなく、すごい勢いでタンスや壁に叩きつけられても全くのノーダメージなのは当然として、世界のクロサワに捧げるようなリッター単位の鼻血を噴き出しても、貧血すら起こさず平然としているのだから恐ろしい。どっちがホラーだ。
終盤はアメリカ人が怖いと思うもの一位のアレが大暴れして、日本人の感性からは大きく外れていくが、オチは意外と綺麗にまとめてみせた。
「パラノーマル・アクティビティ」よりはよっぽどマシではなかろうか。


評価:★ 2
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映画感想―『ファイナルデッドサーキット』

2010年09月22日 | 映画感想

~あらすじ~
カーレースのサーキット場で、観客を巻き込む壮絶な大クラッシュが発生。スタンド席にいた若者ニックが見た予知夢のおかげで9人の男女が奇跡的に難を逃れるが、死の運命は彼らを見逃してはくれなかった……。


~感想~
ファイナルデスティネーションシリーズ第四弾。
いやーグロいグロい。もともと死に様のグロさに定評のあるシリーズだが、今回は特に拍車がかかっている。
しかも流行りの3D映画のため、劇場ではちぎれた四肢やあふれた臓器がゲドババァ!と襲いかかってきたそうだからたまらない。
臓器や四肢以外にも、やたらと物が画面のこちら側に飛んでくる演出が多いので、3Dならいっそう楽しめたことだろう。
内容的にはいつものシリーズ通りで、期待は外さない。この調子で末永く続いて欲しいものだ。


評価:★★★ 6
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映画感想―『ノウイング』

2010年09月04日 | 映画感想

~あらすじ~
小学校の創立60周年記念に開かれたタイプカプセルに収められていた1枚の紙。
そこに羅列された数字に興味を持ったジョンは、やがて奇妙な事実に行き当たる。


~感想~
前半のサスペンスあふれる物語、各所をめぐっては電光石火で謎を解き「これってナショナル・トレジャーだっけ」と思わせるニコラス・ケイジの活躍、SF、ホラー、ディザスター、家族愛と多様なテーマを取り込んだ盛りだくさんな構成……を一息で台無しにする、あんまり過ぎる結末にげんなり。
あれだけ盛り込んだアイデアと比べてこの落差はなんだろうと頭を抱えるしかない、どうしようもない真相とオチ、工夫も糞もないありきたりなラストシーンと、後半はもう見る影もないのだが、上映時間の3/4は楽しめたのだから、B級映画としてもまだマシな部類かもしれない。
あの質を保ったまま最後まで行ければ傑作だったのに……。


評価:★★ 4
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ミステリ感想-『なめくじに聞いてみろ』都筑道夫

2010年09月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
殺人方法考案の天才だった父が、通信教育で殺し屋を育成していたことを知った青年・桔梗信治は、教え子たちを抹殺し父の遺産を消し去るため東京へと赴いた。
教え子たちが得意とする奇想天外な殺人方法はもちろん、名前も居場所もわからない信治は、どうやって彼らと戦うのか?


~感想~
「どんでん返しがすごいミステリスレ」で数人が上げていたので読んでみたが、ふーん最近の本読みサマはこんなので驚くんだーというもの。
作者ならではのナンセンスな、ウィットに富んだというかアメリカンな雰囲気ただよう会話が楽しく、荒唐無稽な殺人方法も見ものだが、映画化されたようにどちらかというと映像向きの作品で、小説としてはすこし物足りない。
マンガ化すれば一変するだろうから、誰か興味のあるマンガ家はいないものだろうか。


10.8.10
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『とり残されて』宮部みゆき

2010年09月03日 | ミステリ感想
~収録作品~
とり残されて
おたすけぶち
私の死んだ後に
居合わせた男
囁く
いつも二人で
たった一人


~感想~
計ったようにタイトル「とり残されて」をテーマにした作品ぞろい。
全編にわたり超常現象、または超常と見せかけた仕掛けが施され、似たような印象を受けてしまうものの、様々な立場の語り手を据え、飽きさせないのはいつもどおり。
ミステリではなく短編小説として楽しむのが吉。


10.8.19
評価:★★☆ 5
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