~あらすじ~
余命いくばくもない昔の恋人に寄り添うため、突然姿を消した夫。妻は素性を隠して二人のもとに赴き…『恋文』。
何かにつけて彼女を悪し様に言う義母は、戦中に友人が恋焦がれていた一人の軍人の話をする…『紅き唇』。
旅行から帰った母は、私よりも若い男をつれていた。男は母と婚約したと言い、父親として振る舞い始め…『十三年目の子守唄』。
どんなことでも「俺なら、いいよ」と受け流し、髪結いの亭主を気取る夫。結婚記念日、妻は夫を裏切り男のもとへ行こうとし…『ピエロ』。
死んだ姪に生き写しのその娘は「母さんのこと愛してたんでしょう」と私に言う。彼女はお腹の子の父親が私だと、全く身に覚えのない事を言い…『私の叔父さん』
~感想~
表題作で直木賞を受賞した傑作短編集。
直木賞といえば功労賞の意味合いが強く、何度も候補に上がった末に「そろそろ獲らせてやってもいいんじゃないか」という気運が高まると、思い出したように与えられる賞のため、往々にしてその作者の代表作の何作か後に出されたぱっとしない作品に与えられがちである。
しかしそこは代表作を挙げろといわれれば十人が十人、別の作品を挙げるだろう連城三紀彦。『恋文』は本来の意味での直木賞にふさわしい、傑作短編集である。
まごうかたなき恋愛小説でありながら、顛倒した論理や、思いも寄らないような真相を裏に潜ませ、ミステリとしても十二分に楽しむことができる、ミステリバカから一般的な読者まで、誰しも満足させる傑作揃い。
つまりは、いつもの連城作品である。いつもの連城作品のそのすごさを知っている方は、ぜひ手に取っていただきたい。今さらすぎる話だが。
11.12.12
評価:★★★★ 8
余命いくばくもない昔の恋人に寄り添うため、突然姿を消した夫。妻は素性を隠して二人のもとに赴き…『恋文』。
何かにつけて彼女を悪し様に言う義母は、戦中に友人が恋焦がれていた一人の軍人の話をする…『紅き唇』。
旅行から帰った母は、私よりも若い男をつれていた。男は母と婚約したと言い、父親として振る舞い始め…『十三年目の子守唄』。
どんなことでも「俺なら、いいよ」と受け流し、髪結いの亭主を気取る夫。結婚記念日、妻は夫を裏切り男のもとへ行こうとし…『ピエロ』。
死んだ姪に生き写しのその娘は「母さんのこと愛してたんでしょう」と私に言う。彼女はお腹の子の父親が私だと、全く身に覚えのない事を言い…『私の叔父さん』
~感想~
表題作で直木賞を受賞した傑作短編集。
直木賞といえば功労賞の意味合いが強く、何度も候補に上がった末に「そろそろ獲らせてやってもいいんじゃないか」という気運が高まると、思い出したように与えられる賞のため、往々にしてその作者の代表作の何作か後に出されたぱっとしない作品に与えられがちである。
しかしそこは代表作を挙げろといわれれば十人が十人、別の作品を挙げるだろう連城三紀彦。『恋文』は本来の意味での直木賞にふさわしい、傑作短編集である。
まごうかたなき恋愛小説でありながら、顛倒した論理や、思いも寄らないような真相を裏に潜ませ、ミステリとしても十二分に楽しむことができる、ミステリバカから一般的な読者まで、誰しも満足させる傑作揃い。
つまりは、いつもの連城作品である。いつもの連城作品のそのすごさを知っている方は、ぜひ手に取っていただきたい。今さらすぎる話だが。
11.12.12
評価:★★★★ 8