小金沢ライブラリー

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2.「ガリレオとか新参者はドラマで観たよ」層へのミステリガイド-2

2016年05月07日 | 初心者ミステリガイド
STEP 2 宮部みゆきを読もう

宮部みゆきは「新宿鮫シリーズ」で知られる大沢在昌をして「この世に作家は二種類しかいない。宮部みゆきとそれ以外」と言わしめた国民的作家で、こちらもハズレはまず書かない。

 

文庫版で4冊の「模倣犯」と6冊の「ソロモンの偽証」はそれだけの文量を全く飽きさせずに読ませるだけの筆力と、息もつかせぬストーリー展開で、現在の日本で一番上手いミステリ作家だと個人的には思っている。

取っ付きやすいのはデビュー作でもあり警察犬の視点で語られる短編集の「パーフェクト・ブルー」や、発火能力者を主人公にしたSF「クロスファイア」、ドラマ化もされた「名もなき毒」あたりか。

時代小説やゲームのノベライズからファンタジー小説まで幅広く手がけ、ノンシリーズ物の長編・短編も数多く、何を読んでもそうそう外れないので、あらすじを見て面白そうなものを適当に選んでもいいだろう。
そして気が向いたらぜひ超傑作「模倣犯」と「ソロモンの偽証」に取り掛かってもらいたい。
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2.「ガリレオとか新参者はドラマで観たよ」層へのミステリガイド

2016年05月06日 | 初心者ミステリガイド
STEP 1 東野圭吾を読もう

ベストセラーというものは往々にしてつまらない作品が多いが、こと本格ミステリというジャンルにおいてはベストセラーはだいたい面白い。
中でも作品を出すたびにベストセラーになるような東野圭吾と宮部みゆき、この二人の作品には基本的にハズレはない。



ドラマ「新参者」や「ガリレオ」でも知られる東野圭吾は説明不要の「容疑者Xの献身」で直木賞を獲り国民的作家となって以来、変に持ち上げられて「読書家を名乗る人の本棚にだいたいある」とか訳のわからないことを言われ、村上春樹と同列視すらされかけているが、単なるエンタメ作家である。
面白い面白いと一息に読み終えて後になんにも残らないような生粋のエンタメ作品ばかりで、読んで損をすることはほぼ無い。
ノンシリーズの単発作品も多いので、好きなのを読めばいいだろう。
ただし「ガリレオシリーズ」は科学現象を映像として見せてくれるドラマ版のほうが個人的には面白いと思う。
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1.「金田一少年の事件簿は好きだよ」層へのミステリガイド-4

2016年03月24日 | 初心者ミステリガイド
STEP 4 麻耶雄嵩を読もう

綾辻行人、島田荘司、新本格派と来たら、次は満を持してこの人を推すしかない。麻耶雄嵩だ。

寡作で年に1冊出ればいいほうだが、新作を出すたびに本格ミステリに新たな地平を切り拓いているといって過言ではなく、舞台や設定はわりと直球なのに、終わってみればとんでもない変化球という、魔球のような作品の数々で熱狂的なファンを多く抱えている。

翼ある闇
夏と冬の奏鳴曲

あいにくの雨で
木製の王子

の「メルカトル鮎シリーズ」は本格ファン必読。ただし必ずデビュー作の「翼ある闇」を最初に読んでいただきたい。



短編の名手でもあり「メルカトルと美袋のための殺人」や、スピンオフの「名探偵木更津悠也」も切れ味鋭い傑作揃い。
ただ最新作の「メルカトルかく語りき」はとんでもない趣向を凝らした異色短編集なので取り扱いに注意が必要かも。

その他、ノンシリーズ単発長編の「鴉」や「螢」、「隻眼の少女」も各種ランキングを賑わせており、使用人が推理し貴族が解決する「貴族探偵シリーズ」は強化版「謎解きはディナーのあとで」といった趣。
絶対に間違わない神様が探偵役を務め、一行目からズバリ犯人の名前を明らかにしてしまうのにミステリとして成立する「さよなら神様」など、コア過ぎて初心者向けではないと思われるかもしれないが、彼を読んだのを機にミステリにハマった人も多いと聞く。
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1.「金田一少年の事件簿は好きだよ」層へのミステリガイド-3

2016年03月12日 | 初心者ミステリガイド
STEP 3 新本格派を読もう

綾辻行人と同時期にデビューした作家は「新本格派」と呼ばれ、今なお第一線で活躍している。綾辻が面白かったなら彼らもぜひ読んで欲しい。
今回は歌野晶午、法月綸太郎、我孫子武丸の3人を紹介する。



歌野晶午は映画化もされた「葉桜の季節に君を想うということ」がベストセラーとなった。
基本的にハズレの少ない作家で、また長編のシリーズ物がほとんど無いためどれから読んでも構わない。



短編集の「密室殺人ゲーム」シリーズは殺人鬼たちがチャットに集い、自ら犯した殺人事件のトリックを出題するというイカれた作品で、ゲーム仕立てならではの奇想天外なトリックと推理バトルが楽しい。



法月綸太郎はロジックの名手で、特に作者と同名の名探偵が登場する法月綸太郎シリーズの短編・中編は傑作揃い。
初期作品群がどうにも癖が強く、好き嫌いが分かれるが、短編はとっつきやすいのでまずそこから取り掛かるのも悪くない。特に「法月綸太郎の新冒険」は個人的に短編ミステリの最高峰と評価している。



我孫子武丸は歴史的名作ゲーム「かまいたちの夜」の作者で、スラップスティック的な明るく楽しい作品をいくつも書いている。
だが代表作と目されるのは微塵の明るさもない「殺戮にいたる病」で、衝撃の結末に度肝を抜かれること請け合い。

それぞれ異なった作風の三人なので自分に合う作品を探してみよう。
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1.「金田一少年の事件簿は好きだよ」層へのミステリガイド-2

2016年03月09日 | 初心者ミステリガイド
STEP 2 島田荘司を読もう

「金田一少年の事件簿」が好きならきっと島田荘司も読めるだろう。
それこそ金田一がトリックを丸パクリした作品もいくつかあり、作者の代表的シリーズの主人公である御手洗潔は、おそらく日本一人気のある名探偵である。
「奇想」と呼ばれる大掛かりなトリックと大胆なストーリー展開で人気を博し、新人作家の育成や海外展開にも熱心で今や「ゴッド・オブ・ミステリ」というちょっと恥ずかしい称号も得ている。



御手洗シリーズの長編は「占星術殺人事件」を皮切りに番外編を入れて16作、短編集も数多い。大まかな話の流れはあるものの、他作品のネタバレはほとんど無いので、どれから読んでも構わないが「龍臥亭事件」だけはなるべく後回しにして欲しい。



また「寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁」から始まる吉敷竹史シリーズは刑事を主人公に、時刻表やアリバイを絡めながらもやはり「奇想」にあふれる作品群で、「龍臥亭幻想」では御手洗潔との競演まで果たしている。
ただしこちらのシリーズは作品に意外なつながりがあるので、できるだけ刊行順に読んで欲しいところだ。
おすすめは「北の夕鶴2/3の殺人」で、シリーズの重要人物も初登場するのでこれから読むのも良いだろう。



作風は幅広くファンタジーやコメディまで書いているが、とにかくハズレの少ない作家で、ノンシリーズの他作品もどれも面白いので、御手洗シリーズだけではなく色々と読んでもらいたい。
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1.「金田一少年の事件簿は好きだよ」層へのミステリガイド

2016年03月08日 | 初心者ミステリガイド
STEP 1 綾辻行人を読もう

「金田一少年の事件簿」が好きなら話は早い。まずは綾辻行人を読もう。
謎めいた館で密室で連続で殺人鬼でトリックな「館シリーズ」をまず読もう。



第一作「十角館の殺人」はざっくり言うと現在のミステリブームの火付け役となった記念碑的な作品でもあり、そういった意味でも読んでおいて損はない。

十角館の殺人
水車館の殺人
迷路館の殺人
人形館の殺人
時計館の殺人
黒猫館の殺人
暗黒館の殺人
奇面館の殺人

の8冊が出ている。1冊少ない? マニアは黙ってろ!
できれば順番に読んで欲しいが「十角館の殺人」はそこまで面白くないし、かく言う筆者が生まれて初めて読んだミステリは「迷路館の殺人」である。好きに読もう。
「時計館の殺人」が日本推理作家協会賞という大きな賞を獲っている傑作なので、とりあえずそこまでの5冊を読んでみればいいだろう。

 

館シリーズが面白かったなら、作者の別の作品にも手を伸ばしてみよう。
ミステリだけではなくホラーも数多く書いているが、中でも「Another」はアニメ化・実写映画化された近年のヒット作で、ミステリとホラーの融合に高いレベルで成功している。

大事なことはまず興味を持ったら誰でも読んでみることと、こいつ合わねえなと思ったらすっぱり諦め、別の作家に手を伸ばすことだ。
あなたがミステリ初心者なら騙されたと思ってまずは綾辻行人から読んでみよう。
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初心者のためのミステリガイド

2016年03月07日 | 初心者ミステリガイド
ミステリに興味を持ったが「まず何を読めばいいか迷う」という方も多いだろう。
そこで独断と偏見で初心者のためのミステリガイドを書いてみる。
本当は僕なんぞよりその役にふさわしい読者がいるだろうが、残念ながら彼ら彼女らは良識があるので、こんな厚顔無恥なことはできない。
まずはミステリ初心者を適当に分類してみる。


1.「金田一少年の事件簿は好きだよ」層へのミステリガイド

2.「ガリレオとか新参者はドラマで観たよ」層へのミステリガイド

3.「氷菓とかハルチカとかアニメは観たよ」層へのミステリガイド

4.「火村英生の推理なら観てるよ」層へのミステリガイド

5.「館とか殺人鬼じゃなくて刑事物はないの?」層へのミステリガイド

6.「純文学なら読んでるよ」層へのミステリガイド

7.ミステリ用語ガイド


※この目次は頻繁に加筆・訂正される予定です
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