小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『黒後家蜘蛛の会 1』アイザック・アシモフ

2003年06月27日 | ミステリ感想
~収録作品~
〈黒後家蜘蛛の会〉は化学者、数学者、弁護士、画家、作家、暗号専門家の6人が月一で晩餐会を開き四方山話に花を咲かせる愉快な会合。
ミステリじみた話に各自が素人推理をくり広げるも、いつも謎を解くのは決まって、物静かな給仕のヘンリーだった。

会心の笑い
贋物(Phony)のPh
実を言えば
行け、小さき書物よ
日曜の朝早く
明白な要素
指し示す指
何国代表?
ブロードウェーの子守唄
ヤンキー・ドゥードゥル都へ行く
不思議な省略
死角


~感想~
すべてのミステリファンに捧げたい、軽妙洒脱な謎物語。

幕開けを飾る 『会心の笑い』
屁理屈ミステリの最高峰 『実を言えば』
この一編をもって、山口雅也『奇偶』に対する僕の批判としたい。“ほとほとうんざり” 『明白な要素』
前代未聞、鼻歌の謎を解け! 『ヤンキー・ドゥードル都へ行く』
『見えない男』第二章 『死角』

人物の妙、会話の冴えにも嘆声ひとつ。


03.6.27
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『太鼓叩きはなぜ笑う』鮎川哲也

2003年06月26日 | ミステリ感想
~収録作品~
春の驟雨
新ファントム・レディ
竜王氏の不吉な旅
白い手黒い手
太鼓叩きはなぜ笑う


~感想~
『春の驟雨』
(ネタバレ→)共犯者の存在 はあまり好みではないが、長編なみのアイデアが惜しげもなく詰め込まれた佳作。
最後の一言が切れる切れる。

『新ファントム・レディ』
まさかあんなのが伏線だったとは。読者には解きようのない謎だが、見事。

『竜王氏の不吉な旅』
そうかそうか。そういう仕掛けか。一部、妙な気がするところもあるが(ネタバレ→)来客が鍵を閉めるのは不自然では? 突如こんな手を使われては脱帽するしかない。

『白い手黒い手』
なるほど。解決にあ然。そして感嘆。1度目の三番館来訪から180度反転する展開。すごい。

『太鼓叩きはなぜ笑う』
短編なみの分量になり、切れ味がさらに増した。太鼓叩きはなぜ笑ったのか――いやはや。


~総括~
本当にこの作家はすごい。傑作がいくつあるのだろうか。
謎解きはもちろん物語でも楽しませてくれる作家だと、この一冊だけでも明らか。


03.6.26
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『耳すます部屋』折原一

2003年06月25日 | ミステリ感想
~収録作品~
耳すます部屋
五重像
のぞいた顔
真夏の誘拐者
肝だめし
眠れない夜のために
Mの犯罪
誤解

目撃者


~感想~
当たりはずれの激しさはいつものこと。文章の手抜き具合もいつものこと。
執拗なまでの叙述トリックも、予想がついては迫力不足。


03.6.25
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『今夜は眠れない』宮部みゆき

2003年06月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ある日突然、うちに弁護士が現れ、放浪の相場師と呼ばれた男からお母さんに5億円が遺贈された。
疑心暗鬼になったお父さんは愛人のもとへ去り、家族はバラバラに……。
僕はお父さんの子供じゃないの? 僕は自分を見つけるため、真相を探りだした。


~感想~
軽妙……と評するには、はんぱなユーモア味。文学っぽさが余計。
裏の真相も巧みな伏線なしでは活きてこない。不満。


03.6.19
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『震える岩』宮部みゆき

2003年06月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
深川三間町の十間長屋で死人憑きの騒ぎが起こったのは、享和二年(1802)のことだった。
死人が生き返って起きあがり、人々を驚かせたのである。
死人の名は吉次。一方お初は霊験で、樽の中で死んでいる子を見つける。
この殺人と、死人憑きの関係は?


~感想~
習作の短編から人物構成まで一変してちょっと驚き。新解釈……というほどのものはあっただろうか?
細工も薄く、ミステリとファンタジィの境界をいったりきたり。曖昧で厳しく言えばどっちつかず。


03.6.16
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『秘密室ボン』清涼院流水

2003年06月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ドイツ生まれで日本育ちのメフィスト翔は、「密室の神様」を名乗る老人によって「秘密室」に囚われてしまう。脱出する方法はただ1つ。「密室YES・NOクイズ」に全問正解すること……。本編が封印された「密室本」。
(裏表紙より)


~感想~
まさか(ネタバレ→)非密室 じゃないよなあと思っていたら……ずばりかよ。タイトル聞いた瞬間に思いついたぞ。まあ、JDCを離れたいつも通りの流水もの。やれネクタイをしろ、黙って食え、音を立てるな、と注文がやたらと多いくせにろくな料理を出さない店、みたいな。


03.6.15
評価:なし 0
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ミステリ感想-『赤ちゃんをさがせ』青井夏海

2003年06月14日 | ミステリ感想
~収録作品~
お母さんをさがせ
お父さんをさがせ
赤ちゃんをさがせ


~感想~
連作ぎみ短編集。

『お母さんをさがせ』
形式から期待していたのに、音を立てて割れるようなトリックには非ず。防弾ガラスをちまちまと壊していくような……。

『お父さんをさがせ』
これも1つの誤謬から砕ける構成ではない。心理に比重が置かれすぎ、納得してうなずけると言うよりも騙された、裏切られたような。

『赤ちゃんをさがせ』
プロットに利用するだけの新興宗教はもう結構。トリックなんてどこかにあっただろうか?


~総括~
デビュー作と比して完成度は明らかに見劣る。退屈とさえ言える。


03.6.14
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『試験に出ないパズル』高田崇史

2003年06月13日 | ミステリ感想
~収録作品~
山羊・海苔・私
八丁堀図書館の秘密
亜麻色の鍵の乙女
粉雪はドルチェのように
もういくつ寝ると神頼み


~感想~
『山羊・海苔・私』
肝心のパズルが、僕の勘違いだろうが超簡単に解けるような……?

『八丁堀図書館の秘密』
パズルというかトリック小説。毛色が違うのを意外ととるか残念ととるか。

『亜麻色の鍵の乙女』
解答は伏せてほしかった。パズルもないし、展開も強引すぎ。

『粉雪はドルチェのように』
この動機はハナから明々白々なんじゃあ……? 子供たちの細かい設定も真相にはなんらからまず不満。

『もういくつ寝ると神頼み』
これくらいむちゃくちゃやってくれた方がいい。パズルオンリー。


~総括~
ミステリ味はより薄く、パズル味はより濃くなった。
この軽妙な文体を楽しめるか、パズルは好きか否か、もはや好みの問題。


03.6.13
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『猫丸先輩の推測』倉知淳

2003年06月12日 | ミステリ感想
~収録作品~
夜届く
桜の森の七分咲きの下
失踪当時の肉球は
たわしと真夏とスパイ
カラスの動物園
クリスマスの猫丸

日本推理作家協会賞 候補 ――桜の森の七分咲きの下


~感想~
『夜届く』
タイトルがなんとも言えない。奇怪な謎と鮮烈な解決が渾然一体と溶け合う。

『桜の森の七分咲きの下』
あからさまな、あまりにあからさまな伏線に口半開き。技ありの一編。

『失踪当時の肉球は』
一回こっきりの登場が惜しすぎる主人公があまりに魅力的。欲を言えば(ネタバレ→)意味深に登場したじいさん も謎にからめて欲しかったが。

『たわしと真夏とスパイ』
まずタイトルありき。たわしの存在はつけ足しのようなw それはともかく「おぉ本当だ書いてある」と感心必至の伏線の山と、会話の楽しさに脱帽。

『カラスの動物園』
結末も予想できた。トリックも本書中では小粒。しかし……このヒロイン(?)に参った。

『クリスマスの猫丸』
短いながらに魅力的な謎と美しい解決。


~総括~
こういう言い方が失礼でないことを祈って言う。
「猫丸先輩シリーズは現代の亜愛一郎シリーズだ」と。
一話限定、使い捨てとは思えないほどに血の通った魅力的な登場人物。奇想天外な謎と清冽な解決。
脇道にそれた描写の巧みさ、おかしさ……。
ミステリ界に金字塔を打ち立てた「亜愛一郎」の正統なる後継者こそが、猫丸先輩なのだと、そう断言したい。
クセモノ倉知淳の底知れぬ実力をまざまざと見せつける珠玉の短編集。
唐沢なをき氏の挿絵がまた絶妙。これはイチオシです。


03.6.12
評価:★★★★★ 10
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ミステリ感想-『クロスファイア』宮部みゆき

2003年06月08日 | ミステリ感想
  



~あらすじ~
深夜の廃工場。三人の若者によって、男が殺されようとしていた。
居合わせた「超能力者」青木淳子は火炎を放ち、瞬時に若者二人を焼殺した。
若者たちに連れ去られた恋人の救出を、瀕死の男に頼まれた淳子は、
逃走した残る一人の行方を追うが……。

このミス15位


~感想~
SFアクション小説。ミステリ味はほぼ皆無。(ネタバレ&毒吐き→)わざとあからさまにしているのだろうか? とすら思える、出てきた途端に正体がわかる謎の人物。長さの割に壮大な仕掛けもなく、大風呂敷を広げたが組織の闘争も崩壊もなし。これが京極夏彦ならぜったい「ガーディアン」は崩壊させていたはずだ。宮部氏自身がいわく「宮部みゆきはこみいった物語が書けない」……たしかに。見せ場のアクション描写も上巻限り。要するに、さんざん長いこと引っぱって結局、ヒロインが1人死んだだけのお話。
僕には全く合わなかった。


上巻 03.6.6
下巻 03.6.8
評価:★★☆ 5
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