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小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『レベル7』宮部みゆき

2003年05月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「レベル7まで行ったら戻れない」謎の言葉を残して失踪した少女。
記憶を失った男女の腕に浮かび上がった「Level 7」の文字。
少女を探すカウンセラーと、自分たちが何者なのかを調べる二人。
二つの追跡行はやがて、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導かれていく。

日本推理作家協会賞候補、このミス14位、文春10位


~感想~
入り組みすぎて雑然としてしまい、明らかに清冽さを欠いた。
氏らしさは影を潜め、筆力も発展途上。2つの視点が意外な逆転も生まず、妙味もなし。
大器の片鱗は見せてはいるのだが。一言でいえば……好きになれない小説なんだな、要は。


03.5.30
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『龍は眠る』宮部みゆき

2003年05月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ある嵐の晩。雑誌記者は、自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。
不思議な雰囲気を持った少年は言う。
「僕は超常能力者なんだ」。
彼が知りうるはずもないある死亡事故の真相を語り始めたとき、運命の歯車が回り始める。

日本推理作家協会賞、直木賞候補、このミス4位、文春8位


~感想~
軽妙な会話、巧緻な構成、とっぴさはないが堅実な物語。プロット小説の手本のよう。
反面、伏線の妙や膝を打つトリックこそないが……それはいつものこと。
龍を起こしてしまった人間の悲哀を描ききった異色の、しかし非常に現実的な(それがすごい)これぞ宮部小説。


03.5.27
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『幻色江戸ごよみ』宮部みゆき

2003年05月25日 | ミステリ感想
~収録作品~
鬼子母火
紅の玉
春花秋燈
器量のぞみ
庄助の夜着
まひごのしるべ
だるま猫
小袖の手
首吊り御本尊
神無月
侘助の花
紙吹雪


~感想~
ちょっと不思議な純粋時代小説集。ミステリを望む方には勧められない。
ややトリックに乏しいが、宮部小説を欲する向きにはうってつけ。


03.5.25
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『かまいたち』宮部みゆき

2003年05月24日 | ミステリ感想
~収録作品~
かまいたち
師走の客
迷い鳩
騒ぐ刀


~感想~
ミステリ(?)・小ばなし・ファンタジィ。よりどりみどりで氏の原点に触れられる。
特に開き直ったような完全ファンタジィの表題作は、のびのびと描かれているように思えてならない。


03.5.24
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『本所深川ふしぎ草紙』宮部みゆき

2003年05月23日 | ミステリ感想
~収録作品~
片葉の芦
送り提灯
置いてけ堀
落葉なしの椎
馬鹿囃子
屋敷
消えずの行灯

吉川英治新人文学賞


~感想~
味わいある佳品ぞろい。ミステリ味も案外濃く、手放しでは褒めづらいが印象も深い。善哉。


03.5.23
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『スナーク狩り』宮部みゆき

2003年05月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
元恋人の結婚式に散弾銃をもって現れた女、関沼慶子。
一方、ひょんなことから彼女が銃を所持していると知った織口邦男は、
ある目的を遂げるため、銃の奪取を試みようとしていた。
しかしその銃は、慶子によって特殊な細工が施されていて……。


~感想~
臨場感、疾走感はいわずもがな。錯綜する思惑、収束する運命、そして……。
なぜ「あっ」と言わせる大仕掛けがなかったのかと天を仰ぎたくなる。声を大にして「惜しいっ!!!」


03.5.22
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『初ものがたり』宮部みゆき

2003年05月21日 | ミステリ感想
~収録作品~
お勢殺し
白魚の目
鰹千両
太郎柿次郎柿
凍る月
遺恨の桜
※PHP研究所版は「糸吉の恋」を新たに収録。


~感想~
やはり時代小説となると、あまり複雑なトリック・プロットは配してくれない。
筆力は存分に発揮も、はんぱなミステリ味が逆に不必要さを感じさせる。どっちつかずか。


03.5.21
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『東京下町殺人暮色』宮部みゆき

2003年05月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
13歳の八木沢順が、刑事である父の道雄と生活を始めたのは、隅田川と荒川にはさまれた東京の下町だった。
そのころ町内では「ある家で人殺しがあった」という噂がまことしやかにささやかれていた。
やがて荒川でバラバラ死体の一部が発見されて……。


~感想~
いつもながらの流石の筆力、構成の妙、人物造型の巧みさ……だけで、入り組んでばかりの「あっ」と言わせる仕掛けは全くない小説。(ネタバレ→)あまりにも壊れすぎの犯人らに報いもなく、後味悪し。


03.5.19
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『魔術はささやく』宮部みゆき

2003年05月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
1人めはマンションの屋上から飛び降りた。
2人めは地下鉄に飛び込んだ。そして3人めはタクシーの前に。
誰一人として関連づけて考えなどしなかった3つの事件。
しかし魔の手は4人めに伸びていた。
だが、逮捕されたタクシー運転手の甥、守は事件の真相に迫り……。

このミス9位、日本推理サスペンス大賞


~感想~
典型的、と呼びたくなるプロット小説。論理に舌を巻くこともトリックに膝を打つこともない、普通のミステリ。
もちろん損はしないし引きつけられるし面白いけど……。まあ、好みの問題か。
構成といい、通好みなのかも知れない。僕は「通」の部類のはずだがあまり魅かれなかった。
とにかく書くのは面倒そうな作品。(ネタバレ→)どうしてP305で、助かる予告をしたのか理解に苦しむ。おかげで全くスリルがなかったのに。


03.5.18
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『心とろかすような』宮部みゆき

2003年05月16日 | ミステリ感想
~収録作品~
心とろかすような
てのひらの森の下で
白い騎士は歌う
マサ、留守番する
マサの弁明


~感想~
『心とろかすような』
緻密な設計、ではないが丁寧に編まれた構成を、流れるような筆力でぐいぐいと引っぱる、いかにも氏らしい掌編。ただ……どうしていつもクライマックスを省くのだろう?

『てのひらの森の下で』
丁寧で流れるような――いつものお話。インパクトはあまりないが読後感はいい。伏線の張り方が不自然すぎ。

『白い騎士は歌う』
極限まで暗くするか明るくすればもっと映りが良いのでは? 灰色の印象。

『マサ、留守番する』
犬視点であることをようやく活かしたような(失礼)。結末が暗く、消化不十分。

『マサの弁明』
妙な小ばなし。


~総括~
まあ、氏らしいいつもの品々です。個人的には進也(およびマスター)の登場が一編きりで悲しい。
鮮烈な印象も爽快さも残さない曇天のような短編集。


03.5.16
評価:★★☆ 5
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