小金沢ライブラリー

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文春ベストテンについて今さら

2011年12月28日 | ミステリ界隈
01.「ジェノサイド」高野和明
02.「折れた竜骨」米澤穂信
03.「開かせていただき光栄です」皆川博子
04.「マスカレード・ホテル」東野圭吾
05.「絆回廊 新宿鮫X」大沢在昌
06.「ユリゴコロ」沼田まほかる
07.「麒麟の翼」東野圭吾
08.「メルカトルかく語りき」麻耶雄嵩
09.「真夏の方程式」東野圭吾
10.「転迷 隠蔽捜査4」今野敏


完全に忘れていて今さらの言及になってしまったが、文春ランキングは例年に輪をかけて酷い。
このミスとほとんど同じ作品しか入ってないのはいつも通りとして、このミス外から入ったのが2作品あるのだが、それがどちらも東野圭吾という始末。
毎年言っているけども、もう文春ランキングは役目を終えている。
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本ミス2011についてなんやかや

2011年12月12日 | ミステリ界隈
01.「折れた竜骨」米澤穂信
02.「メルカトルかく語りき」麻耶雄嵩
03.「開かせていただき光栄です」皆川博子
04.「虚構推理 鋼人七瀬」城平京
05.「鍵のかかった部屋」貴志祐介
06.「消失グラデーション」長沢樹
07.「吸血鬼と精神分析」笠井潔
08.「密室殺人ゲーム・マニアックス」歌野晶午
09.「放課後はミステリーとともに」東川篤哉
10.「赤い糸の呻き」西澤保彦


このミスにもランクインした作品が6位までひしめくなか、久々の小説復帰を果たした城平京の4位が光る。
シリーズ化も容易と思われるし、来年以降も小説を書いて欲しいものだ。
8位にしてもう、およそ傑作とは呼びがたいシリーズ外伝的な位置づけの変化球作品「密室殺人ゲーム・マニアックス」が入ってしまうことからして、今年の本格不作っぷりがわかるというもの。
だいたい短編集が5つもベストテンに入ってしまった年なんて本ミス史上初である。
「折れた竜骨」がなければ、今年はどうなっていたことか……。
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このミス2011についてなんやかや

2011年12月11日 | ミステリ界隈
01.「ジェノサイド」高野和明
02.「折れた竜骨」米澤穂信
03.「開かせていただき光栄です」皆川博子
04.「絆回廊 新宿鮫X」大沢在昌
05.「ユリゴコロ」沼田まほかる
06.「消失グラデーション」長沢樹
07.「メルカトルかく語りき」麻耶雄嵩
08.「警官の条件」佐々木譲
09.「心に雹の降りしきる」香納諒一
09.「機龍警察 自爆条項」月村了衛
11.「民宿雪国」樋口毅宏
12.「11 eleven」津原泰水
13.「水底フェスタ」辻村深月
14.「転迷 隠蔽捜査4」今野敏
15.「私たちが星座を盗んだ理由」北山猛邦
16.「引 ENGINE」矢作俊彦
17.「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」奥泉光
17.「鍵のかかった部屋」貴志祐介
19.「オーダーメイド殺人クラブ」辻村深月
20.「麒麟の翼」東野圭吾


1位は前評判通りに「ジェノサイド」が獲得。乱歩賞にしてデビュー作「13階段」以来、鳴かず飛ばずだった作者がついに一発かました。
2位には私的ランキングで1位につけた「折れた竜骨」が。本ミスでは1位となっており、やはり年度代表作にふさわしい。
皆川博子、大沢在昌と常連がつづいて、6位には横溝賞から初のランクインとなる長沢樹が。たしかに評判は良かった。読んでおくべきだったか。
7位は本ミスと私的ランキングで2位となった「メルカトルかく語りき」。趣向が趣向だけに賛否両論かと思われたが、あれだけのことをやってのけたら高順位も当然だろう。
11位以下にはだいたい常連が並ぶ中、北山猛邦が初ランクイン。個人的にもイチオシしていたのでうれしいところ。かつては欠かさず読んでいた辻村深月が、目を離した隙にブレイクしたのは不覚だったが。また読み始めるか……。
貴志祐介の(ゲームブックを除き)著作が全てランキングか賞に絡むという記録がまだ続いたことにも言及しておこう。あまり話題になっていないが超すごいぞ。

しかしこうして見渡してみると、今年はいわゆる「広義のミステリ」が多く、本格ミステリと呼べるのは半分にも満たない。本格バカにとっては不作の一年だったと言わざるを得ないだろう。

あとはMS先生にざまあみろと元ファンとして個人的に言っておきたい。
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ミステリ感想-『折れた竜骨』米澤穂信

2011年12月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
北海に浮かぶソロン諸島。その領主の娘・アミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、彼に従う少年ニコラに出会う。
ファルクはアミーナの父に、あなたは暗殺騎士に命を狙われている、と告げた。
自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、“走狗”候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、そして、甦りし「呪われたデーン人」が襲来し……。
魔術や呪いが跋扈する世界で、論理の刃は真相にたどり着くことができるのか?


~感想~
作者曰く西澤保彦のSFミステリや山口雅也『生ける屍の死』を念頭において描かれた、剣と魔法が横溢する中世ファンタジーの世界に本格ミステリを溶けこませた特殊設定もの。
超傑作漫画『うしおととら』や『からくりサーカス』で知られる藤田和日郎を誰かが「漫画力が高い」と評していたが、それを拝借すれば米澤穂信は実に「小説力が高い」作家である。
アマチュア時代に描いていたとはいえ、中世ファンタジーの世界観、文体、人物像を見事に表出しながら、一歩間違えればなんでもありに陥ってしまう魔法にうまいこと制限を設け、ド本格な論理で貫く。これはとんでもない離れ業である。
捜査や合戦のさなかに豊富な伏線をばらまき、本格ミステリらしい一堂に会した解決編で、それを回収しつつ一人また一人と消去法で真犯人を追い詰め、最後の最後には――と、ファンタジーと本格をこれ以上ないほどの高水準で融合してみせた、大変な労作であり、かつてない傑作である。
なにぶんファンタジーを読みなれないもので、ずいぶんと読了するのに骨が折れたが、今年のこのミスや本ミスの1位になっても、全く驚かない。
肝心の(?)ファンタジー興趣あふれる合戦があまり描かれないのは拍子抜けも、それでも年度代表作と呼ぶにふさわしい本格物、でしょう。


11.12.9
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『嘘』北國浩二

2011年12月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
幼い息子を亡くした過去にさいなまれる千紗子は、認知症となった父が一人住む田舎へやってきた。
父との間には確執があり、長く絶縁状態であったが、父はもはや娘の顔すら忘れていた。
再会した旧友とうさ晴らしに飲んだ帰り道で少年を車ではねてしまい、その身体に虐待の跡を見つけた千紗子は、彼を自分の子供として育てることに……。


~感想~
北國浩二とはどういうジャンルに属する作家なのか、ちょっと誤解していたのかもしれない。
個人的にマストに近かった傑作『リバース』、口に合わず物足りなかったが趣向は買えた『サニーサイド・スーサイド』と来て、これは正直、面食らった。
野球にたとえるならば、あまりにド真ん中過ぎて、思わず手が出なかったというところ。もう、一言で言うならば「そのまんま」だ。
序盤、物語が大きく動き、落ち着きを見せ始めた頃からはもう、最後まで一直線である。
プロット、展開、真相、破綻となにもかもが想定内で動きまわり、予想した通りの所に止まるため、まるで予定調和のように意外性がない。
ブンガクならばこれで必要にして十分だろうが、ミステリとして読むにはあまりに起伏が乏しすぎる。
狐につままれたような心持ちで読み終えてしまったが、話自体が面白かったので、悪い点は付けられないのだが……。


11.12.9
評価:★★★ 6
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ホラー感想-『災園』三津田信三

2011年12月06日 | ミステリ感想
~あらすじ~
幼くして養父母を亡くした奈津江は、実姉と名乗る祭深咲に伴われ、実父が経営する施設“祭園”に引き取られた。
そこに暮らす訳ありの少年少女たち。廃屋と化した“廻り家”と呼ばれる奇怪な祈祷所。得体の知れない何かが棲む黒い森。
奈津江の出生の秘密が明かされるとき、惨劇は幕を開ける。
“家”シリーズ三部作最終章。


~感想~
いちおうシリーズ完結編らしいのだが、前二作とはまた違った角度から攻めてきた。
序盤からもう超能力の存在を受け入れざるを得ない設定をゴリ押ししてきながら、次第に超能力は置いてけぼりにして、怪異が幅をきかせはじめ、終わってみれば全てが――。
という転倒した趣向は面白いのだが、唐突すぎる結末といい、いつにも増してSF、ホラー、ミステリが混ざり合わず、ちぐはぐな印象が濃い。
三作品の中で最もホラーらしいとは思うが、せっかく前作でにおわせた『百蛇堂』どころか前二作との関連すら薄いのはすこし残念。
あと名うてのミステリ作家として「あのころは精神的に病んでた」はどうかと思うぞ。


11.12.9
評価:★☆ 3
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