小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人』早坂吝

2023年05月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
迷宮に閉じ込められた7人の男女。黒幕は彼らを6つの未解決事件の犯人と呼び、それぞれの事件で用いられた凶器を与え、1人生き残るまで殺し合うよう告げる。
どの事件の犯人でもない名探偵・死宮遊歩は黒幕の正体を暴き、生き残れるのか?


~感想~
綾辻行人「迷路館の殺人」を思い出す見取り図にまず笑ってしまうが、期待通りにオマージュだろう「迷路館」を思わせる仕掛けがあるのはもちろんのこと、帯に推薦文を寄せた有栖川有栖の要素も使用。さらに白井智之っぽさも随所に見えた。
しかしただのパロディではなく、1時間半ほどで読み終えられるライトさの中に、本格ミステリの要素とトリック全部乗せのような山ほどの仕掛けとアイデアを詰め込み、とにかく楽しませてやろう、驚かしてやろうという作者の意気込みが感じられる意欲作であり野心作。そのやりすぎにすら思える仕掛けが明かされる怒涛の解決編で、読者は必ずや驚くとともに何度となく吹き出してしまうだろう。
本格ミステリの面白さを凝縮したような、むちゃくちゃ楽しい一冊だった。ぜひ今年の本ミスで良いところまで行って欲しい。


23.5.27
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『不夜城』馳星周

2023年05月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
日本と台湾の半々(ハーフ)の劉健一は、歌舞伎町を仕切る上海マフィア元成貴から、かつての相棒で、元成貴の腹心を殺した呉富春が帰ってきたと聞かされる。
元成貴は呉富春が必ず健一を頼ると読み、3日以内に連れてこなければ殺すと脅迫。
さらに呉富春のもとから逃げてきた夏美と名乗る女も健一に接触し…。

1996年このミス1位、文春1位、吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞、東西ベスト(2012)50位、直木賞候補

~感想~
これはただの事実であって差別発言ではなく、選んだ自分が悪いのだがなぜ2冊続けてホモが主人公のミステリを読まなくてはならんのか。
しかも健一はただのホモではなくドMのホモであり、身を守るために汚い手管で他人の弱味を握って利用し、自分がクズなだけなのに他人も世界もクズだと見なして天に唾吐き生きている真性のクズである。
そして健一のみならず登場人物の9割9分が揃ってクズであり、いちおう9割9分と書いてみたものの思い返してみればただの一人も善人どころか常人がいない有様で、クズとクズとクズとクズがひたすら殺し合い騙し合う胸が悪くなるだけの内容で、一切の感情移入や共感やカタルシスを拒む。
これは個人の感想ではなく、文庫版の解説でも「感情移入できる人物が一人としていない。本書にはカタルシスというものがない」と全く同じことを言っており、しかしだからこそ「まったく新しい」とのたまうが、これは丸っきり個人の感想であるものの、いらねえよそんな新しさ。

僕の知っているハードボイルドの主人公はドMのホモのクズには務まらないはずなのだが、文庫版だけでもなぜか100万部売れており、映画化もしハードボイルドの傑作扱いされているのは本当に理解不能である。
当時の評価は知らないが内容は全く関係なく「新しい」という評判だけで広く読まれただけの話ではなかろうか?
五体満足で生まれておいて、自分がクズになることを選んだだけなのに血が悪い国が悪いと呪うクソ馬鹿どもは、介護施設か障害者施設で半年働いて自分の恵まれた環境を思い知ればいい。どこも人手不足だからお前らのようなクズでも余裕で雇ってもらえるぞ。あ、お前らみたいなクズが虐待とかするのか。じゃあ絶対来るな。
どうでもいいが実写版で主役を張った金城武は鬼武者から諸葛孔明からドMのホモのクズまで仕事を選ばなさすぎだと思う。

後半にはミステリ的な仕掛けというわけではないがとある真相が明かされるが、同時に特殊性癖がずらずら追加される有様で、伏線皆無の性癖レスバトルこと「ルビンの壺が割れた」の元ネタなのだろうか?
エンタテインメント性はかけらもなく、ピカレスクではあるもののロマンは微塵もない、とにかく嫌なものを読んだという苦い後味だけが残る、個人的には全く価値のわからない一冊だった。
困ったことに続編がそれも2冊もこのミスランクインしており、ランクイン作品の完走を目指しているのだがどうしようかこれ。マジで読みたくないんですけど。


23.5.30
評価:なし 0
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今週のキン肉マン #418 ザ・ワンの大改革!!

2023年05月29日 | 今週のキン肉マン
・映るたびに態度が悪い邪悪の神々
・負けたのに潔くなかったバイコーンさんも納得してなかったと思う
・超人の8割の粛清
・ティーパックマンたち正義超人二軍も該当するんだろうな
・いくら超神が思ったより弱いと言っても8割の超人よりは強い
・殲滅ではなく人間化
・バベルの塔の戦いがザ・ワンの意識を変えた
・ここで友情パワーがクローズアップ
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ミステリ感想-『孤島の鬼』江戸川乱歩

2023年05月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
恋人の初代を殺された蓑浦は友人の名探偵・深山木幸吉に調査を依頼。
しかし深山木は初代と同様に密室状況下で殺されてしまう。
全ての鍵は初代の過去にあるのか?

東西ベスト(1985)37位、東西ベスト(2012)27位

~感想~
ミステリマニア面しといて乱歩の長編を初体験。
まずタイトルに反していつまで経っても孤島に行かないことと、2件目の密室殺人のあまりの堅牢さに仰天させられる。
1件目の密室は今や昭和過ぎて全く機能しないものだが、2件目は堅牢すぎて答えが絞られてはしまうものの、意外性とその背景は十分に見事なものだった。
だが本格ミステリなのはそこまでで、待望の孤島に飛んでからはジャンルが変わり、乱歩のもう一つの特色である怪奇幻想が全開に。驚くべきことに映像化されているものの、現代コンプラどころか当時から見ても全力でアウトの胸の悪くなるような表現・設定が目白押し。
それに加えて、なんでも日本ミステリ界初らしい男同士の同性愛まで扱い、何かと人を選ぶ内容だが、自著に厳しい乱歩が最も評価している長編だそうで、物語としてのまとまりは良くできていた。
楽しい話ではないので全くおすすめはしないが、乱歩に興味があれば読んでみるのもいいだろう。


23.5.22
評価:★★☆ 5
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今週のキン肉マン #417 いつもの裏切り!?

2023年05月22日 | 今週のキン肉マン
・悪魔→正義→血盟軍→悪魔と全く同じルートたどってるアシュラマンにだけは言われたくないだろ
・「ボッボッボッ超人諸君」→「悪く思うな…ザ・マン…」
・高笑いからマジのトーンで謝るザ・ワン
・ザ・マンへの感情がほとばしってる
・コーカサスマンの株が爆上がり
・最強マンモスマンを追い詰めたのは伊達ではない
・オニキスマン・マグニフィセント・バーザーカーも信頼される同志
・バイコーンさん負けた時はなんとも思わなかったんだね
・どう見てもカピラリアの欠片から作られたイロモノ超人に
・負けるかもと思われてた荒ぶる神々たち…
・ジ・エクスキューショナーは実力より性格面で手心加えたりしそう
・この流れでビッグボディチームとやらされた右腕ランペイジさん本当に気の毒
・弟子が引き分けたのにここにいることを他人の口から知らされたロビン
・ついに超人の力を認め神の不甲斐なさも認めたザ・ワン
・一方ザ・マンは頭から信用してないので意図を聞く
・ロビンがおとなしいから話の進行が早い
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ミステリ感想-『奪取』真保裕一

2023年05月18日 | ミステリ感想
 

~あらすじ~
22歳、その日暮らしの手塚道郎はサラ金のローンでヤクザに捕まった親友を助けるため、ATMを突破する偽札を作製。
偽札づくりに見せられた道郎は完璧な偽札を作ろうと決意するが…。

1996年このミス2位、文春4位、日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、東西ベスト61位

~感想~
未読の方の興を削いではもったいないので伏せたが、あらすじは序盤も序盤のストーリーに過ぎず、この後は怒濤の展開が待ち受ける。
これまでリアリティにこだわってきた作者が、偽札づくりの過程は詳細に描きつつも物語そのものはエンタメに振り切ったそうで、二転三転し続けたまま最後まで駆け抜け、その気になれば一気読みも必至のスピード感を誇る。いわゆる悪漢小説にしてコン・ゲーム物の傑作である。
読めば読むほどそもそも偽札づくりが絶対に無理だと感じられる点に目をつぶる必要があり、最後の最後の稚気に富んではいるが新人作家がやりそうな突飛な仕掛けこそ賛否両論あるだろうが、とにかくネタバレするのがもったいない快作なので、少しでも興味があればぜひ読んでいただきたい。
ミステリ好きのみならず本好きならば誰しも楽しめるだろう。


23.5.18
評価:★★★★ 8
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今週のキン肉マン #416 崩壊するエネルギーバランス!!

2023年05月15日 | 今週のキン肉マン
・クソデカザ・マンこんなの笑うわwww
・デカい必要ないだろ
・後ろでなぜか良い姿勢のネメシス
・超人達から見えていると思ってるから気をつけしてる説笑った
・まさかクソデカザ・マンで完全に隠れてるとは夢にも思わず
・Ωが書かれてるオメガの星何度見ても面白い
・オメガの民は一般超人の超人強度も無駄に高そう
・そこへ石臼持ってったのまずくない?
・地上を救うためにアポロン・ウィンドウを使ったが、甘く見ていて酷い目に遭った神
・神の慈悲と傲慢さ
・怪鳥に乗ってる=調和の神になっている
・余計な説明を省くための怪鳥だったのか?
・乗ってるというかどう見ても生け捕りにされてるバッファローマン
・ザ・ワンという名前にやっぱり反応する超人達
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今週のキン肉マン #415 最上階からの景色!!

2023年05月08日 | 今週のキン肉マン
・遙か天空の彼方に浮かんでたっけと読み返したらやっぱり8階建てくらいだった
・低いなと思ったら躊躇なく遙か天空に浮かべるキン肉マン大好き
・改めてサンシャインしか死なないとは思わなかった
・まさかバッファローマンしか負けないとは
・「ロビンマスクと何かあったんですか」ww
・爆速で察するミート
・これは超人界一の頭脳ですわ
・この様子では引き分けたけどここにいること伝えてないなウォーズマン
・まさかのアポロン・ウィンドウ
・しかもパワーを吸い取る逆
・出てきた時は普通サイズなのになぜか拡大するザ・マン
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ミステリ感想-『ローズマリーのあまき香り』島田荘司

2023年05月06日 | ミステリ感想
~あらすじ~
数奇な運命を辿った天才バレリーナのフランチェスカ・クレスパンが公演の幕間に撲殺された。
現場は誰も立ち入れたはずのない密室で、しかも彼女はその後も演技を続けているのを千人以上の観客に目撃されていた。
奇跡・無痛症・自動人間と囁かれるも20年に渡り解き明かされなかった謎に、御手洗潔が挑む。


~感想~
提示された謎はまさに奇想そのもので魅力的。その後も童話、銀行強盗の顛末、謎の大騒動が挿入されるケレン味たっぷりの構成で、往年の御手洗ファンも期待に胸を膨らませるだろう。
だがそこで懸念されていた御大の趣味が足を引っ張る。
近年の御大といえばゴリゴリの陰謀論者であり(嫌な「といえば」だな)作品にも影響を与えやしないかと危ぶんでいたがこれが的中。日ユ同祖論あたりは「アルカトラズ幻想」で語られた「大型恐竜は幻である」のようなトンデモ面白理論の延長線上にあると受け止められるが、その後に続く古色蒼然たるユダヤ陰謀論にはドン引きである。
さらにコロナもウクライナもネオナチもと全てがユダヤの陰謀で括られていき、イルミナティも当たり前のように存在され読者が引いてるところに明かされた事件の真相は、この謎で真っ先に考え、そして真っ先に捨てられるだろうアレとアレだったのだからたまらない。
全盛期の御大なら浪漫と奇想と豪腕でこんなトリックでも無理やり納得させられていただろうが、ユダヤがコロナがウクライナがと嬉々として語られた末にこのていたらくでは頭を抱える他ない。
趣味が本業にむちゃくちゃ影響してるじゃねえか!!

好意的に見れば、この結末ならば御手洗ワールドではコロナもウクライナもあの事件も起こらないのだろう。御手洗潔の、名探偵のいない我々の世界のやるせない現状に、創作上で一矢報いたのだと捉えることもできるかもしれない。
しかし御手洗潔がいない代わりにユダヤの陰謀もイルミナティもただの与太話に過ぎない現実の世界を生きる我々は、御大が文句なしに面白かったのも10年前の「アルカトラズ幻想」が最後だもんな……と遠い目をせざるを得ないのである。


23.5.6
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『密室キングダム』柄刀一

2023年05月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「壇上のメフィスト」の異名を取るマジシャン、ダンジョンイチロウこと吝一郎が、重病を克服した復帰公演で殺害された。
現場は何重もの密室状況にあり、しかもほとんどのガラスが砕かれているという不可解な謎も残されていた。
犯人は吝を恨む「アンチ壇上のメフィスト」なのか? その後も第二、第三と続く密室事件に若き日の南美希風が挑む。

2007年このミス16位、文春10位、本ミス3位、日本推理作家協会賞候補、本格ミステリ大賞候補

~感想~
900ページ超の重厚さに見合った内容かというとスケールは案外小さく地味。細々した機械トリックで鍵を掛けるのがほとんどで、トリック図解もほぼ無いためさらに地味。
人物リストは無く、見取り図、図解がごくたまにしか付されないのも不親切で、文章もただ長いだけならまだしも「二人の顔は、自然にほぐれてきてしまう。悪戯をし合っていた時代がくすぐってくるかのように」のように鼻につくこともしばしばで、非常に読みづらい。
とにかく綿密に事件を検討するためにページ数が増えているだけなので、何を話しているのかおおまかに把握さえすれば、7割読み飛ばしても理解に支障をきたさないのは良し悪しではある。
いちおう全体を貫く大仕掛けもあり、解決編で残らずすっきりと謎が解かれるのは良かったが、本格ミステリというか色んな鍵掛けテクニックを見せられた気になるし、トリックはまだしも事件を成立させるための裏事情に山ほどの都合の良い事象が起こっているのも難。
堅牢な密室を頭良すぎる名探偵がずばずば解いていくのが大好きな本格ミステリ原理主義者みたいな読者なら楽しめるだろうが、一般的なミステリファンは手出し無用だろう。

原稿用紙4000枚の4冊で後半2巻を丸々解決編に費やしても、飽きさせずちゃんと面白かった二階堂黎人「人狼城の恐怖」はやっぱりすごかったのだと改めて感じた次第である。


23.5.5
評価:★★☆ 5
コメント (4)