小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『白銀荘の殺人鬼』二階堂黎人&愛川晶

2000年07月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
スキー客でにぎわうペンション「白銀荘」。
そこに血なまぐさい殺人鬼がまぎれ込んだ。
多重人格症に悩みながらも、ある目的を果たすため連続殺人をもくろむ招かれざる客。
おりしも豪雪により白銀荘は外界と遮断された密室状態に……。

覆面作家・彩胡ジュン(二階堂黎人&愛川晶)の正体当て企画


~感想~
快作。
叙述・構成の巧みさ、逆転のトリック、疾走感ある展開と、第一線で活躍する作家同士が腕を組んだだけのものは見せてくれる。……が、あまりに下品すぎる。
片方は折原一かと思ったくらい(折原氏に深くお詫び申しあげます)下品。


00.7.30
評価:★★★ 6
コメント

ミステリ感想-『101号室の女』折原一

2000年07月24日 | ミステリ感想
~収録作品~
101号室の女
眠れ、わが子よ
網走まで…
石廊崎心中
恐妻家
わが子が泣いている
殺人計画
追跡
わが生涯最大の事件


~感想~
短編集。質より量でねじ伏せた。
全編、なにかひとつは光るものがあった。読んで損はないかと。
末尾の『わが生涯最大の事件』が傑作。


00.7.24
評価:★★☆ 5
コメント

ミステリ感想-『道―ジェルソミーナ』笠井潔

2000年07月23日 | ミステリ感想
~収録作品~
硝子の指輪
晩年
銀の海馬
道―ジェルソミーナ


~感想~
短編集。
あまりにも後味が悪い。
探偵はしょせん場末のちっぽけな無力な存在に過ぎず、できることはごく限られている。
リアリティの面ではそれでいいのだろうが、小説として楽しいかというと……。
トリックはなかなかに豪快で、楽しませてはくれるのだが、もうすこし娯楽性が欲しい。
島田荘司-エンタテインメント性・ハッピーエンド=笠井潔   みたいな。


00.7.23
評価:★★ 4
コメント

ミステリ感想-『原罪の庭』篠田真由美

2000年07月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ガラスの柩を思わせる巨大な温室の中で惨殺された病院長一家。
その血塗られた密室に置かれたチェストで、天使のようにまどろむ七歳の少年。
ただ一人生き残った彼は、しかし言葉を失っていた。
闇に閉ざされた魂を救うため、最大の謎「薬師寺家事件」に挑む桜井京介。


~感想~
傑作。あと一歩足りなかったシリーズがようやく実った。
おぞましくも鮮やかな母と子の罪。意表を突く展開、巧緻な伏線、さりげない叙述と、この一作を書くためにシリーズが存在していたと言っても過言ではあるまい。


00.7.20
評価:★★★★ 8
コメント

ミステリ感想-『卍の殺人』今邑彩

2000年07月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
萩原亮子が恋人の安東匠に伴われて訪れたのは、彼が訣別を期す“卍屋敷”。
そこに住む従妹と結婚し家業を継がない限り、匠は資産家の実家から絶縁されるという。
二家族が競い合って暮らす館に緊張が高まり、二人が到着した当夜、堰を切ったように殺人事件が……。

鮎川哲也と十三の謎


~感想~
デビュー作。第0回鮎川哲也賞に等しい「鮎川哲也と十三の謎」最後の席を射止めた。
新本格派創世記にものされた、基本に忠実な本格ミステリで、これでもうすこし「てらい」があれば化けただろうに。
とはいえ巧みな逆転、練られた構成は早くも才能を感じさせる。


00.7.18
評価:★★☆ 5
コメント

ミステリ感想-『灰色の砦』篠田真由美

2000年07月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
19歳の冬、桜井京介と栗山深春は「輝額荘」という下宿で出会った。
家庭的で青春の楽園のように思われた「輝額荘」。
しかし住人の1人が裏庭で変死したことから、若者たちの「砦」に暗い翳が忍び寄る。
事件の背後には天才建築家ライトの謎が……?


~感想~
一歩足りない。あともう少し、構成かなにかが巧みであれば傑作になりえただろうに。
盛りあげ方を間違った感が強い。例によって(ネタバレ→)悪人が一人もいないハッピーエンド はちょいと食傷ぎみ。


00.7.14
評価:★☆ 3
コメント

ミステリ感想-『遠きに目ありて』天藤真

2000年07月10日 | ミステリ感想
~収録作品~
生まれつき、重度の脳性マヒのためほとんど全身の自由がきかず、
重い言語障害も抱えた車イスの少年・信一。
しかし彼はわずかに動く左手でタイプライターを打ち、
友人の真名部警部が持ち込んだ未解決事件を次々と筆談で解いてしまう安楽椅子探偵だった。

多すぎる証人
宙を飛ぶ死
出口のない街
見えない白い手
完全な不在

本格ミステリ・ベスト100 17位
文春3位


~感想~
日本ミステリ史上に燦然と輝く、安楽椅子探偵物の大傑作。他に言うべきことはなし!


00.7.10
評価:★★★★☆ 9
コメント

ミステリ感想-『翡翠の城』篠田真由美

2000年07月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
名門ホテルで、内紛が持ち上がった。
一族の長が別邸・碧水閣の取り壊しを主張するも、意見が対立し骨肉の争いに発展したのだ。
湖に沈んだ焼死体、血染めの遺書。
沼のほとりにたたずむ異形の館に封印された、百年にわたる秘密とは。


~感想~
ミステリとしての魅力があまりに薄い。トリックは「へえ」の一言で片づけられるし、解りやすすぎる。
展開もなにもかも淡泊すぎて印象に残らない。ほぼ文学作品。


00.7.8
評価:★ 2
コメント

ミステリ感想-『二の悲劇』法月綸太郎

2000年07月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
殺されたあげくに顔を焼かれたOL。手配されたのは彼女のルームメイト。
事件は三角関係のもつれによる単純な怨恨殺人と見られたが、
ただ一点、被害者の飲み込んでいた小さな鍵が謎とされた。
法月綸太郎に出馬が要請された矢先、容疑者の死体が発見される。
自殺か、それとも他殺か。失われた日記に記された、愛と殺意の構図とは。

本格ミステリ・ベスト100 54位、日本推理作家協会賞 候補、このミス10位


~感想~
手記終了後の展開に「法月綸太郎が化けたっ!」と思いきや真相にげんなり。
あっけない、着地にさんざん困ったあげく「もうこれでいいや」って感じで幕を下ろしたラストはもうちょっとどうにかなったろうに。トリックもそりゃないでしょう~と言いたくなり……。
なにはともあれ良くも悪くも、(ネタバレ→)『卒業写真』一曲 から生まれた作品。 


00.7.4
評価:★★★ 6
コメント