小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『子どもの王様』殊能将之

2004年11月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ショウタの親友トモヤは、学校にはほとんど行かず本ばかり読んでいる。
そのせいか途方もない作り話が大の得意。
「この団地の外側にはなにもない」「団地には西の良い魔女と東の悪い魔女が住んでいる」
「子どもを穴蔵に閉じ込め、召し使いとしてこきつかう子どもの王様がいる」……。
ところがある日、ショウタはトモヤが言うとおりの姿かたちをした男を目撃する。
もしかしてあれが子どもの王様?


~感想~
……あの、ものすごく後味悪いんですけど。
トリック(?)は一つきり。犯人(?)の正体にひねりもなし。
子供向けということを差し引いても不満。というか、子供にこんなもの読ませていいのか?
値段相応とは口が裂けても言えない、「密室本」につづくぼったく(以下自粛)


04.11.30
評価:★ 2
コメント

ミステリ感想-『龍臥亭幻想』島田荘司

2004年11月28日 | ミステリ感想
  

~あらすじ~
雪に閉ざされた龍臥亭に、八年前のあの事件の関係者が再び集まった。
雪中から発見された行き倒れの死体と、衆人環視の神社から、神隠しのように消えた巫女。
貝繁村に伝わる「森孝魔王」の伝説との不思議な符合は、なにを意味するのか?
百年の時空を超えて伝説の魔王が甦るとき、御手洗潔と吉敷竹史の推理が、ついに交錯する!


~感想~
奇想。
伝説の謎。怪談さながらの事件。まるで幻想そのものの情景。有機的に組み合わされた、意図し意図せざる仕掛けが奇跡的な融合を見せるのは、もはやお家芸のおもむき。
龍臥亭が舞台であることが絶対必要条件だったか否かというと、かなり疑問は残るが……。
トリックやプロットの多少の強引さなどねじ伏せて余りある壮大な物語。引き込まれる語り口。
これぞ島田文学。ごちそうさま。

……でも肝心要のあの二人の競演は……。いや。
これから読む方のために、あえてこれ以上は言いますまい。


04.11.28~29
評価:★★★★☆ 9
コメント

ミステリ感想-『過ぎ行く風はみどり色』倉知淳

2004年11月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
亡き妻に謝罪したい……。
引退した不動産王・方城兵馬の願いを叶えるため、長男の直嗣が連れてきたのは霊媒だった。
インチキを暴こうとする超常現象の研究者までが方城家を訪れ騒然とする中、
誰一人近寄っていないはずの離れで兵馬が撲殺される。
霊媒は悪霊のしわざと主張、かくて行なわれた降霊会で第二の惨劇が……。
放浪の名探偵(?)猫丸先輩は全ての謎を解き明かせるのか?


~感想~
面白い面白い。重厚な分量を感じさせない、例によって飄々とした筆致の快作。
豊富な伏線、まさに不可能興味の事件、してやられた感抜群のトリック。
こんなにドロドロしない一族物がかつてあっただろうか?
殺伐としてもおかしくない、怪奇味あふれるプロットを中和してあまりある猫丸先輩のキャラクターが光る。
読後の爽快感は特筆物。


04.11.26
評価:★★★★☆ 9
コメント

ミステリ感想-『螢』麻耶雄嵩

2004年11月01日 | ミステリ感想
~あらすじ~
大学のオカルトスポット探検サークルの六人は「ファイアフライ館」へ、今年も肝試しに訪れた。
そこは10年前、天才ヴァイオリニストの加賀螢司が演奏家六人を惨殺した現場だった。
事件発生と同じ7月15日から始まる4日間のサークル合宿。
昨年と異なるのは半年前、女子メンバーの一人が、殺人鬼“ジョージ”に無残にも殺され、
その動揺をまだ引きずっていたことだった。
そして嵐の山荘で、殺人は呪われたように発生して……。

本格ミステリ大賞候補、このミス11位、本ミス3位


~感想~
読了後すぐの感想は「ややこしいプロットだな~」。
全編にわたって張りめぐらされたワナといい、今までの麻耶氏の印象からは大きくはずれる。
まるで新人作家のメフィスト賞受賞作を読んでいるような。
実験は困難だが、作者名を伏せて誰かに読ませたら、これを麻耶作品だと気づく人はまずいないのでは?
メイントリックは、(これくらいは言ってもいいだろう)ある有名なトリックを、今までにない斬新な使い方でさばいて見せたもの。「こういう使い方もあったか!」と一本取られた気分になった。
読み進むうちに、ふと感じる違和感。それこそが、作者の仕掛けたトリックです。


04.11.1
評価:★★★★☆ 9
コメント