小金沢ライブラリー

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ゲーム感想-『カリギュラ2』

2024年10月12日 | ゲーム
~あらすじ~
μ(ミュー)が起こした前作のメビウス事件から数年―。
出自不明のボーカロイドのリグレットが作った仮想空間リドゥに再び囚われた、後悔を持つ人々。
μを母と慕う後継ボーカロイドのキィはリドゥをブチ壊し母の汚名を晴らそうと、現実に帰ろうとする仲間とともに帰宅部を結成し戦いを挑む。


~感想~
前作はいろいろ独自性を出そうとしたものの技術と予算が圧倒的に足りず「劣化ペルソナ」に落ち着いたが、本作は独自性をブラッシュアップするとともに欠点の改善を図り、まだまだペルソナには及ばないものの確固とした己を持つ「カリギュラ2」として格段の進化を遂げた。


1.ストーリー
前作に引き続き仮想空間リドゥで暮らす人々は後悔をやり直すための仮の姿に過ぎず、実生活では年齢はおろか性別も違う、という設定が面白い。
仲間キャラの正体は(ほのめかしすぎて大半モロバレなものの)前作よりもぶっ飛んだものが多く、背景はより複雑に。
前作はストーリーが一本調子かつ設定だけで力尽きたようにろくに起伏もなかったが、本作は山あり谷ありの意外性ある物語で最後まで引っ張り、楽士それぞれに対応した帰宅部メンバーとの因縁もあり、比べ物にならないほど面白い。
なんといってもまだ世に出ていない未熟なボーカロイド・キィが人間を知り世界を知り、頼もしく成長していく本筋が通っていて、ラストも衝撃的かつ皮肉な結末に、人間と世界を知ったキィが敢然と立ち向かうのがお見事。やればできるじゃないかフリュー!


2.音楽
言うまでもなく今回も最高。もちろんフィールド中に流れる曲が戦闘に入るやボーカル付きに移行し、しかも今回は背景にMV付きで一層盛り上げる。さらに敵のリグレットと味方のキィのWボーカルで2種類あるのもうれしく、戦闘中にキィに別曲で割り込ませて場を支配するという発想も素晴らしい。
キィは大人びたリグレットと対照的に幼くかわいらしい歌声だが、成長につれてしっかりとした歌い口に変わっていくのも良かった。
それにしても前作の上田麗奈といい本作の香里有佐といい的確に最高の人材を探してくるよな…。
「夜に駆ける」でブレイク前のAyaseを呼んでいた件もセンスの良さを感じさせる。
個人的には「スワップアウト」に完全に心をつかまれた。全体としてはリグレットに軍配を上げるが、「ミス・コンダクタ」と「xxxx/xx/xx」はキィの方が好み。「SINGI」は甲乙つけ難い。


3.グラフィック
口パクしてるだけで圧倒的な進化を感じてしまうのはノイズだが、3Dモデルはほとんど表情が変わらず、モーションもほぼ全員共通。オープニングで流れる日常風景が素人でも作れそうな低予算丸出しの悪夢のような代物で爆笑してしまったが、口パクすらしなかった前作を体験していれば全く問題なかった。
主人公が必殺技を決めて真顔のキィとハイタッチするシーンは見るたびに笑ってしまうが、原監督のグータッチみたいなものだと思えば、まあ。
一方の2D一枚絵は前作と同じ作者が相変わらず世界観に見合った美麗なものを仕上げてくれたので安心。キャラの内面や正体を示唆するギミックも面白い。


4.戦闘
敵味方ともに攻撃が100%命中した場合の未来予測が見え、それをもとに対策を立てるシステムは健在。前作では3つの行動を入力したが本作では1つに簡略化され、強敵との戦いで全員に指示を出すのも楽になった。
ノーマルでクリアしたが油断するとそのへんのザコ敵にも全滅させられるちょうどいい難易度で、味方AIも役に立てばラッキーくらいだった前作よりは頼れるが、自分(主人公)一人でなんとかしなければならないのは変わらない。ボス戦は特殊ギミックもありちゃんと考えて全員に指示を出さないと難しい。
ただし後半になり装備やスキルが揃うと大抵のボスはフロアージャックからのタコ殴りで簡単に片がついてしまう。通常攻撃の連打だけでラスボスが溶けた前作ほどヌルゲーではないが。
数百人のモブがフィールドをうろつき、戦闘にも加わってくる独特のシステムはやはり健在だが、巻き込むのは戦闘開始時点で近くにいたモブだけに変更された。敵の火力が本作はかなり高いので改善である。
なおクリア後の2周目からは自由に敵レベルを上げられる最高のシステムは今回もある。


5.クエスト
そこら中をうろつく数百人のモブに話しかけて仲良くなるのは相変わらずだが、2回話しかけるだけでクエストが受注できるように簡略化。また何組かはグループごとにまとまってサブストーリーが展開され、解決すると全員の正体が一斉に明かされる方式になった。
モブの中には重要キャラの関係者も何人かいたり、正体を調べるのは今回も楽しく、クエストもストーリーを進める合間に自然と達成できるものが増えたのでコンプリートが現実的なものとなった。
たぶん全員異なるSNSアイコンは素直にすごいと思う。


6.UI
上記で何度となく改善と評したように、前作から引き継いだシステムの大半は簡略化がなされており好感が持てる。
やはりロードの微妙な長さやろくに機能しない装備品・スキルのソート、結局おつかいさせられるだけのクエストなど荒削りな面は多々あるが、前作の反省を明確に意識した改善ぶりは評価に値するだろう。
触れるだけでオートセーブされるセーブポイントや、目的地が明確に表示されるミニマップ、1周目でやってしまえば2周目からは一切触れる必要すらないクエストやキャラエピソード(※もしかしたらやらないと戦闘中のセリフが更新されないかも?)など手放しで褒められる点も数多い。


総評
あからさまに「劣化ペルソナ」だった前作のダメだった点をきちんと反省し、できないことはできないと割り切って、できることと独自の魅力を突き詰めた結果、多少ひいき目に見れば広く勧められる良作へと変身を遂げた。
なんといってもこの世界観と設定は他にない独自の素晴らしいものであり、大げさに言えばカリギュラというジャンルを作り出したとすら言えるだろう。
ゲーム的にもフィールドをうろつくザコ敵とモブ、ただのBGMではない全てと密接に絡んだボカロ曲、モブ全員と交流できる謎のボリューム、未来予測を基にした戦闘などなど独自性が高く、重く暗いテーマ性あるストーリーと粗いグラフィック・UIとあいまって万人ウケはしないが、刺さる人にはとことん刺さるインディー的な魅力のある、他にない唯一無二のRPGに「カリギュラ2」は育ったのである。

なお前作をやっていればより楽しめるのは当然だが、本作はたまにフリューが頭おかしくなって965円という驚異的な価格でPSストアに並ぶことがある(※正気に戻ったのか直近のセールでは1,755円だった)ので、1000円札1枚でおつりが来るのだから、興味があればぜひやってもらいたい。
売れて3が出たら絶対買う。

※近日中にネタバレ感想も更新予定

評価:★★★★ 8
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ゲーム感想-『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』

2024年07月17日 | ゲーム
~あらすじ~
本所七不思議の呪いを受けた、どうしても蘇らせたい人がいる9人の男女。
呪殺で魂を集め、蘇りの秘術を果たすため壮絶な騙し合いが始まる。


~感想~
高評価と友人からのイチオシを受けてようやくクリア。これはとんでもないものを見せてもらった。
TL上に何度も流れてきた本作を象徴する呪殺バトルこそ序盤だけで終わってしまったが、本題はそこから先。終始ほのめかされるある趣向が肝で、今までに類例の少ない、ゲームならではの大仕掛けが現れる。何もかもネタバレなので詳しく言えないがあまりの完成度に感心したことだけは付記する。
また見どころはそれだけではなく、実在する本所七不思議を完璧なまでに物語の中に取り込んでしかも昇華させているのがとんでもない。これだけでも大いに称賛されるべきなのに、脇を固めるキャラや会話も軽妙で楽しく、ゲームとしての面白さにも化けさせているのだからすさまじい手腕である。

欲を言えば最高に楽しかった呪殺バトルをもっとやりたかったし、何度かある設問を一発回答すればなんらかの報奨があっても良かった。(※ただの自慢だが最後の根付の問題以外は全問正解した)
プレイ時間は自分調べで8時間弱と決して長くないが、セール中で1180円と単行本より安く、いわゆるコスパも十分。
ミステリ・ホラー・七不思議・サウンドノベルといったジャンルに興味があればぜひやって欲しい傑作である。


24.6.29
評価:★★★★☆ 9
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ゲーム感想-『大逆転裁判1&2』

2023年06月03日 | ゲーム
~あらすじ~
殺人容疑を掛けられた大学生の成歩堂龍ノ介は、親友の亜双義一真の助けを得て、自らを弁護する。
そして成歩堂と亜双義は大英帝国へ向かい、その船上で大探偵シャーロック・ホームズに出会う。
明治時代を舞台に、逆転裁判の新たなシリーズが始まる。


~感想~
PS4版ではなく3DS版を今さらクリア。
シリーズ集大成にして紛れもなく最高傑作だった。

とにかくストーリーの質が高く隙がない。2作10話掛けて1つの大きな物語を描き、一話一話がそれを補完するとともに全ての伏線として機能し、しかも一話ごとに個々の短編としても上質である。
そのうえホームズのパスティーシュとしても秀逸で、半可通の自分でもわかるくらいにホームズ作品の要素が目白押しで、大ファンならばなおのこと楽しめるだろうし、ホームズの「推理は常に正しくやる時はやるが、推理への筋道と普段はむちゃくちゃ」なキャラも最高。
逆転裁判シリーズどころか本格ミステリとして歴史に残りうる、7作+α続くシリーズをさしおき「大」を冠したのも納得の超絶傑作である。


以下、細かい苦言も少し。
とにかく一話が長い。1の第一話からこれまでのシリーズの最終話くらい長く、2話以降で探偵パートも入るともっと長い。3Dモデルが全ゲームの中でも最高峰くらいぬるぬる自然に動くが、モーションが長すぎるキャラもちらほらいて冗長な面もある。
冗長といえば完全に続編なのに1と2の間が2年開いたのも足を引っ張った。完成度を高めるためか、話かロジックに矛盾が生じてやり直しになったのか、いずれにしろ2年の空白は致命的だったし、正気の沙汰ではない。
販売本数が8万本も減ってしまったのもむべなるかなである。

パート内で5回間違えると問答無用のゲームオーバーでセーブ地点まで戻されるのはいつも通りだが、前提条件だった「証拠と発言の間の矛盾を指摘する」ことが崩れているところが多々あり、話の流れから正解はわかるものの、発言との間には矛盾がなく、難易度を上げてしまっている。
このあたりを開き直ることで表現の幅を広げるのには成功したが、同時にこのフォーマットの限界を露呈してしまった。

おそらく本作は逆転裁判というシステムでできる、やりたいことの全てをやり尽くしてしまったのではなかろうか。
本作を最後にシリーズが止まって6年が経つ。何も調べず書いているが、もう逆転裁判でできることが、やれることが無くなったために筆を置いてしまったのではないかと思う。
大逆転裁判はシリーズ最高傑作であると同時に、シリーズを終わらせてしまった完結作なのかもしれない。


評価:★★★★★ 10
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ゲーム感想-『ソウルハッカーズ2』

2023年05月04日 | ゲーム
5/4 追記・修正しました

~あらすじ~
文明の停滞した近未来。電子の海から生まれた人智を超えた存在アイオンは、世界の終焉を感知し、阻止すべく人型の実体リンゴとフィグを送り込む。
世界終焉の鍵を握る二人の確保に向かうが、どちらも既に殺されており、やむなくリンゴはソウルハックで蘇生を試みる。


~感想~
名作RPG「デビルサマナーソウルハッカーズ」の続編が25年ぶりに登場。
しかしその典型的なコレジャナイロボっぷりで賛否両論、というか賛否2:8くらいのフルボッコで絵に描いたような炎上を遂げた問題作を今さらクリアしたので色々書きたい。
なお予習としてDS版ソウルハッカーズを25年ぶりにクリアしてから挑んだが、その意味はほぼ無いほど続編としての繋がりはなかった。


1.ストーリー
ここに関しては別に悪くない。浮世離れした主人公が人間世界の常識を学びながら理解と絆を深めて行くよくある奴で、キャラも前作(※前作と呼ぶのは忸怩たる思いなのだが便宜上、前作と呼ぶ)や最近のペルソナシリーズと比べれば年長の仲間達との会話も楽しい。世界終焉の危機が日本の一都市で解決されるのはだいぶ小規模だが、現代を舞台にしたゲームで、世界終焉の危機を実際に世界中駆けずり回って解決するのなんてそもそもスパロボくらいだろう。
世界中の神話や伝承で語られ人類に叡智と混乱を与えてきたコヴェナントが日本の一都市に集まるのは絶対おかしいと思うが。

残念だったのは前作との繋がりが「ヴィクトルとマダム銀子がいる」ほぼその一点だけで、スプーキーズの存在が皆無なのには驚いた。正統続編で前作主人公チームの消息が1ミリたりとも語られないことありえるんだ。
DLCでネミッサを仲魔にできるが、前作でああいう結末を迎えたネミッサが、しかもヒトミちゃんの姿でいることはむしろファンの心を逆撫でしたことも付記しておきたい。


2.キャラ
仲間キャラ3人についてはなんの文句もない。大人3人だけありわりとビジネスライクな関係で、同じ目的を持った実力を認め合う同志ではあるものの、友情や仲間意識はさほど見えず、目的を果たせばあっさり離れていくドライさも良い。
堅物で脳筋気味のアロウ、ゴーストオブツシマの政子殿ばりの復讐鬼で脳筋気味のミレディ、飄々とした恋愛脳のサイゾー、皮肉屋で好奇心旺盛なリンゴの4人の会話は軽快で、その行動原理や思考の流れに不自然なところもない。
一方で敵サイドは鉄仮面を除けばほとんど没個性で、終盤に幹部クラスが急に出てくるが、なぜ急に出てきたのか意味不明。続編で出したい感がありありだったのもアンチの癪に障ったろう。

本作で数少ない手放しで褒められる点が一つあり、会話中に内容に応じて表情がバストアップでもポリゴンでも移り変わっていくのは非常に良かった。話の流れによって顔を曇らせたり喜んだり、その場ではまだ明かされていない伏線のある話では微妙な表情を見せたりと、セリフ無しで感情を表現する素晴らしい手法である。


3.戦闘システム
ここも悪くない。全員ワイルド持ちのほぼペルソナだがペルソナのUIをだいぶ流用した分は快適で、弱点を突くことで全体攻撃を発生させる「サバト」もアイデアは面白い。初お披露目で「すごいことが起きるぜ!」しといてただ体当たりしてただダメージが入ったのは笑ったし、仲魔のカットインや一枚絵でも付けられたらだいぶ見栄えは良かったと思うが。
強力なアイテムほど個数や調達に制限が掛けられるのはわかるし、素材を集めコンプを改造して行くシステムも悪くなかった。
数と大ダメージでとにかく殺しに来る敵も良いが、難易度は低め。ハマムドが撤廃されたため即死攻撃は少なく、弱点を突かれてもダメージが上がるだけでワンモアやダウンのような致命的アドバンテージは無く、仲魔の属性相性はほとんど気にする必要がない。
セリフも豊富だがカーソルを1個動かすたびに反応するのはやりすぎ。アップデート前は高速化もできなかったのは信じられない。高速化しなければペルソナ1くらいかったるいだろこれ……。


4.ソウル・マトリクス
本作のヘイトのおよそ8割を集めた原因。ペルソナ5でいうメメントスで、スキルや仲魔・素材集めに使われ、ストーリーを補完する重要なサブダンジョンなのだが、これが明らかにものすごい手抜きっぷり。
3人分あるのに外見・構造が全く同じで、階層ごとに色すら変わらない。これがたとえばキャラごとの思い出にまつわる風景だったり、小物が配置されていたり、曲が変わっていれば、それだけでだいぶ印象は違った。
そして第4層が最悪で、ワープゾーンを渡り歩いていくのだが正解ルート以外はだだっ広いマップのどこかへ飛ばされて、ひたすらやり直させられる。これをダッシュ機能がスキル扱い&敵のポップアップ頻回だったアップデート前にやらされていたら絶対投げ出してる。
マップに1匹ずつ配置された中ボスも5ターン以内に倒さないと強制全滅というシステムも酷い。メガテンで詰将棋やりたいわけじゃないんですよ。
ソウル・マトリクスに限らずメインストーリーの方のダンジョンも残念。地下鉄をクリアした後に別の地下鉄に行かされ、最初に行った倉庫の西側が決戦場として開放されたのには爆笑した。前作はもっといろんな場所に行けただろ。


5.音楽
ペルソナ5で最高だった音楽をペルソナ5ザ・ロイヤルでさらに最高にし、ペルソナ無双(P5S)で最高の最高に突き抜けていったアトラスはいったいどこへ行ったのか。印象に残る曲さえ皆無で、絶妙にワクワクしないオープニングテーマすらPS2画質のピザと水を手にするアロウがくつろぐ様をたっぷり1分見せられてからようやく流れ出すという誰得仕様。オープニングテーマはオープニングに流すからオープニングテーマなんですよ?
前作の名曲の数々を聞いた後だからなおさら残念だった。


6.終盤の仕様
ここは完全にネタバレになるので文字色を反転する。スマホ環境では反転されないようなので要注意。

↓以下ネタバレ↓

終盤にナビ役のフィグが離脱し、ナビが知らないおっさんの合成音声になったのは笑った。
だが次第に笑えない事態に気付いた。え? このまま最後まで行くの!?
元々もう倒した敵にも反応し、いちいち無駄に騒ぎまくる無能っぷりだったが、しかしそれでもナビ役も大事な仲間である。それが終盤ずっと知らないおっさんになるのはどういう了見か。2周目プレイからは高難易度クエストやダンジョンが解禁されるが、ストーリーを進めなければソウル・マトリクスで有用スキルが解放できず、進めすぎるとやはりフィグが離脱し1周目よりもっと長い間知らないおっさんと付き合うはめになってしまう。そのうえセーフハウスに帰るとフィグがいないお通夜ムードで、何を食べても同じ感想をつぶやくbot化し、初見プレイではいくらなんでもこのまま最後まで行かないだろうと思っていた。
ストーリー上、演出上で仕方ないことなのはわかるけれども、ゲームにはストーリーや演出よりも大切な、絶対に優先すべき点があるはずだ。それは断じて知らないおっさんにナビさせたり、味のしない飯を食わされることでは無いのである。
たとえばフィグが敵として立ちはだかる前に、リンゴ達のナビ役としてミミに機能の一部を移し残していく展開でも良かったではないか。

あとこれは終盤の仕様ではないが、コヴェナント所有者には同じコヴェナント所有者がわかる設定、アロウがレイブンの正体を知る場面の演出に使いたいのはわかるし、それは非常に良かったけども、その前にコヴェナント所有者のフィグがレイブンに会ってたことの説明が全く付かないんですけど……。
※これは勘違いでした。失礼致しました。

この終盤の仕様だけでもう評価は最高でも5点に留められる。
あとアップデート前のダッシュはスキル仕様・戦闘高速化なし・敵のポップアップ頻回・ショップに直接移動できずでやらされていたら間違いなく1点である。


7.ソウルハッカーズ続編として
続編として評価するならもう満場一致の0点だろう。
前作はまだ到来前のネット社会を予見してみせた先見性、25年ぶりにやってもさほど古びていない普遍的なセンスの良さ、個性豊かなデビルサマナー達、ビジョンクエストという秀逸なアイデアと、名作とうたわれるのも納得の出来だったが、本作は名前だけ借りたような有様でほとんどがスケールダウン。
現代RPGとして最低限に面白いゲームではあるものの、名作の続編を冠するにふさわしいアイデアや新しさはほとんど見当たらず、これでは売名行為と言われても仕方あるまい。
なんといっても前作キャラのほとんどが姿を見せないのが随一の不満で、ヴィクトルはメインストーリーにも絡み結構しゃべってくれるが、マダム銀子はほぼbot化。スプーキーズも前作から数十年経っているにしても、ご本人登場は無理でも消息くらいは書けたはずで、ヴィクトルはいるのにメアリも不在と不満しかない。
あと業魔殿の合体シーンもサーカスを1ミリも活かしてなくて唖然とした。


総評
まだまだ書きたいことはあるが、とりあえずこのくらいにしておこう。
良いところもたくさんあるし、3が出てシステム面が改善されていれば買うと思うが、しかし本作には悪いところが多すぎた。
開発陣には猛省を促したいし、名作ソウルハッカーズの名を汚した続編であることは間違いなく、もし次があるならばしっかりと開発費と手間を掛けて欲しいと切に願う。


23.5.3
評価:★★☆ 5
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ゲーム感想-『神獄塔メアリスケルターFinale』

2022年07月09日 | ゲーム
~あらすじ~
ついに地下監獄から脱獄を果たした血式少女たち。だが地上は無数の屍が折り重なり、空を飛ぶ悪食の艦隊塔と死刑台少女(ジェノサイド・ピンク)が支配する地獄さながらの世界だった。
敗れた血式少女たちは散り散りとなり、新たな監獄塔へと飛ばされるが、そこで出会った新たな仲間とともに、絶望の戦いへと挑む。


~感想~
前作の感想はこちら → ゲーム感想-『神獄塔メアリスケルター2』

おなじみコンパイルハートのあらびきRPGもシリーズ三作目ともなれば遊びやすく改良できるんだと驚かされた。
やることは基本的に同じダンジョンRPGなのだが、3チームに分かれ、協力し合いながら1つのダンジョンを攻略していくシステムが秀逸で、3分割のおかげでマップは広すぎず多すぎず飽きが来る前にギリギリでクリアできる良い塩梅。
システム的に理不尽な面もだいぶ減らされた。たとえば前作と比較すると、

・ドアを開いても急にボスキャラが出てこない
・ちゃんと説明されるステータス
・急に出てくるけど1.5倍くらいの強さに収まった雑魚
・マップ上で上りか下りかわかるようになった階段
・一度に全部受注できるクエスト
・モンスターを数匹倒してくるだけのクエストなのに異常に低い出現率で、エンカウント率をむちゃくちゃ上げても40分掛かったりする
・そのクエスト報酬はゴミ
・強スキルを使っても次の行動順が遅れない
・読み込みが間に合うようになり戦闘スキルの位置がちょくちょく変わらない
・隠し通路が無いので最大HPの4倍ダメージの全体攻撃をしてくる雑魚に遭わない

などなど「普通のRPGになっただけだろ」と言われたら返す言葉もないが、改善は改善である。
もちろん遊びやすくなったといってもそこはコンパちゃんなので、移動中は6ダメージしか受けないダメージ床の上で敵にエンカウントすると120ダメージを喰らい序盤はあっさり全滅、敵の先制攻撃から3ターンボコられて全滅、倒せないイベントボスに袋小路に追い詰められ全滅、ノーヒントで必中全体即死攻撃を喰らい全滅とあらびきさは健在。もちろん自動セーブなんて洒落たものは無いので手動セーブした地点からやり直しである。最長で70分戻ったぜ。
なおコンパちゃんもさすがにノーヒントで必中全体即死攻撃は理不尽だと気づいたのか、攻撃前に詠唱(時間差攻撃。ダメージを与えるとたまに解除)するようにアップデートしたらしい。
アップデート前はノータイムで撃ってきてたのかよ。

ストーリーは3チームに分かれただけ薄まったものの相変わらず完全フルボイスの熱演が光り、3作分積み重ねた思い出が随所に感じられる。なにげに本格ミステリ的な仕掛けがいくつもあるのもポイント高い。
本作には1と2のストーリーとイベントが全て収録されており(※ただしボイス無し)、少なくとも進化を感じるためにも2はやっておくべきだが(※時系列は2→1→本作)ストーリーに目を通すだけでも理解はできるので、いきなり本作から始めてもいいかもしれない。
個人的にはもっと理不尽な2の洗礼を浴びてからプレイして欲しいが。

不満点としては終盤で急に始まる恒例のガチ推理イベントが薄味になり、犯人の指名すらできないことと、クリア後にできることが何もないこと。二周目の引き継ぎとかクリア後ダンジョンとかエンドコンテンツといったものが一切ないので、トロフィーを回収したらマジで無である。レベルを引き下げて延々と鍛え直せるのにである。何年も前に発売された「フェアリーフェンサー エフ」には引き継ぎもあったのにである。
さすがコンパちゃんだぜ!!(やけくそ)

色々言ってみたものの、シリーズ完結編としてはストーリー的に申し分なく、ゲームとしても確実に進化して楽しくクリアできるので、前作をやったファンは絶対にやるべきだろう。


評価:★★★☆ 7
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スーパーロボット大戦V・X・T・30感想

2022年06月18日 | ゲーム
特に理由はなく急にスパロボマラソンを開始し「V」「X」「T」「30」をクリアしたため感想を簡単に。
結論から言うと従来のスパロボの進化系をやりたければ「V」を、システムを刷新した意欲作がやりたければ「30」をおすすめする。

ちなみに現在価格はDLCを考慮しなければ「30」が最も安い。またSwitch版「V」「X」はDLCを無料で収録しているがボーカルはなく、曲の差し替えも不可で「T」は未発売である。


スーパーロボット大戦V
今までのスパロボの正統進化。過去作をやったことがあり、今まで通りのスパロボを求めているならこれをやれば間違いない。
ロボットにとらわれず「戦艦枠」で初参戦した「宇宙戦艦ヤマト2199」が主要ストーリーを担い、かつ最強ユニットでもある。
飄々とした男主人公はスパロボシリーズで最も好きなオリジナル主人公クロウ・ブルーストを思い出させ、シナリオ・システム・難易度が実にちょうどいい。久々にスパロボ復帰する旧作ファンには自信をもっておすすめできる作品である。


スーパーロボット大戦X
前作「V」と次回作「T」とはストーリー上のつながりは基本的に無いが、システムがマイナーチェンジ程度に留まっているため、だいたい三部作として扱われる。
VとXは参戦作品くらいしか差がないため、珍しい作品や好きな作品が目当てならやってみるのもいいだろう。
現在のところ据え置き機で「魔神英雄伝ワタル」「Gのレコンギスタ」「バディ・コンプレックス」「ふしぎの海のナディア」が参戦しているのは本作のみである。4作とも曲が良い。
またシナリオはファンタジー寄りで、Vとはまた違う面白さがあり、Vが気に入ったならやって損はしないだろう。


スーパーロボット大戦T
VとXに新システムを多少加えたがマイナーチェンジどまりで、これも参戦作品の好みによる。「カウボーイビバップ」と「わが青春のアルカディア」と「楽園追放」の参戦は本作のみ。ただし「楽園追放」は諸事情により限定版にも主題歌は収録されていない。
ストーリーの要所要所で一枚絵が入るようになり、また戦闘アニメの作り込みは三部作で最も上。「トップをねらえ!」のガンバスターは一見の価値がある。
難易度は慣れもあって低めだが、後半になるにつれ敵のレベルがインフレしていき、無理やり引き上げている印象。
また本作から隠し要素の取得条件がかなりゆるくなり、通常プレイでほとんど回収できるだろう。
「魔法騎士レイアース」と初参戦ではないが「ガンソード」は次回作「30」にも登場するが、ストーリー再現は本作で主に行っているため、アニメを観ていないなら理解が深まる。「ガンソード」のヴァンは最高のキャラ。
有料でクリア後のストーリーが描かれ、VとXのオリジナル機体も登場するエキスパンションパックもあるが、値段分の価値はなかった。


スーパーロボット大戦30
30周年記念作品の名に恥じない、抜本的にシステムを変えてきた意欲作。今までと違うスパロボがやりたいならうってつけ。個人的には「第三次α」や「Z」に匹敵する。(ちなみに最も好きなスパロボは「UX」だ)
ストーリーの分岐こそしないが、シナリオの攻略順を自由に選べ、主要シナリオだけ進み、最短距離で完結させることも可能。(※ただし隠し要素はほぼ得られない)
攻略順によって会話やストーリーにちょっとした変化があり、その差分は膨大で、主要シナリオだけ進ませると、昔のスパロボのように雑に味方が増えたり、唐突な展開が楽しい。
資金や経験値稼ぎに使えるフリーシナリオがあるため難易度も低いが、参戦作品・機体数は過去最多で、有料DLCを入れればさらに増加する。自分は堪能するためまずDLC無しでクリアしたがそれでもボリューム満点のまさにお祭り作品。
クリア後も延々と味方を鍛えることができ、周回プレイ前提の強敵と戦えるのも良好。有料DLCでは過去最高難易度も追加できる。
戦闘アニメはもちろん最も綺麗で、今回から登場シーンと攻撃シーンを分けたのが地味ながら好アレンジだったと思う。
コメント

ゲーム感想-『神獄塔メアリスケルター2』

2021年02月20日 | ゲーム
~あらすじ~
謎の怪物メルヒェンによって世界は滅び、人々はジェイルと呼ばれる監獄に囚われた。
メルヒェンと戦う力と、おとぎ話に関連する名を持つ血式少女たちは、人々を救いジェイルからの脱獄を目指す。

~感想~
たまたま見た完結編「メアリスケルターFinale」が面白そうだったので前作を購入。vitaで発売された「メアリスケルター1」のリメイクも収録されるが、時系列から公式も2→1の順でのプレイを推奨している。

コンパイルハートのRPGをやったことがあればだいたいいつも通りで、
・画像と文だけでざっと説明されるチュートリアル
・ステータスの意味すらどこにも書いてない
・装備の追加効果アイコンがあるがこれも説明無し
・急に出てくる3倍くらい強い雑魚
・マップ上で上りか下りかもわからない階段
・1つずつしか受注できないクエスト
・モンスターを数匹倒してくるだけのクエストなのに異常に低い出現率で、エンカウント率をむちゃくちゃ上げても40分掛かったりする
・そのクエスト報酬はゴミ
・強スキルを使うと次の行動順が遅れるが、その説明もどのくらい遅れるかの目安も無い
・読み込みが間に合っていないらしく戦闘スキルの位置がちょくちょく変わる
・覚えさせたら絶対忘れられないユ血スキル
・第2章で増えた仲間のスキルで第1章の隠し通路に入ったら最大HPの4倍ダメージの全体攻撃をしてくる雑魚に遭う
などなど「これでこそコンパちゃんだぜ!」と快哉を叫びたくなる粗さ。
古き良きレトロゲームで鍛えられた我々の世代はそれもまた一興と楽しめるのでまあ問題はない。

戦闘はスキルの揃わない前半は手こずるが、後半になるにつれ最適化されると一転してヌルゲー化し、決まりきったパターンで範囲・全体攻撃を食らわせていけば事足りる。ただラスボスは強かった。
キャラは12人いるわりに個体差はほとんど無いものの、キャラゲーの側面も強い作品だけに、好きなキャラを使えるよう配慮したのだと思うので仕方ない。

良いところを挙げていくと「磁石で引きつける」「ワープゾーン設置」といったスキルを駆使してのダンジョン探索は楽しく、扉を開けたら急に出てくるボスキャラなどの大雑把な難易度で、いつ全滅してもおかしくない緊張感もあり、進むべきか退くべきかの判断も悩ませる。

ストーリーはよくあるかわいい萌えキャラたちが、血しぶき舞う残酷で理不尽な現実にさらされる系で、キャラごとの個別イベントもベタにベタを重ねたものながら、フルボイスの熱演が光る。一枚絵はもうちょっとあって欲しかったが。
また最後の最後に急に本格ミステリさながらの推理が始まり、3つの問いに正解しなければバッドエンド直行の流れは個人的に熱かった。その推理もトリックもミステリ狂を唸らせるちょっとしたもので、隠された真相も(とんでもない胸糞エンドだが)実に良くできていた。
続編の「1リメイク」で胸糞エンドも救われるようだし、こんな結末を見せられてはすぐに続きが知りたくなるだろう。

が、問題は「1リメイク」の方で、「2」からシステムがあちこち変更されているのだが、改悪された部分もかなり多く、特に問題なのが戦闘スキル周り。
有能スキルのほとんどが職業ごとに固定されてしまい、1つの職業から全然動かせず、自由度が格段に低下した。
第3章あたり(全10章)で取るべきスキルは揃ってしまい、そうなると後はいくらレベルを上げてもパラメーターが高まるだけで戦術が広がらないし、育てる意欲も得られない。
そのうえ2よりも雑魚の強さが高まる一方で、戦闘メンバーを1人減らされたり、強化された武器が一切拾えなかったり、範囲攻撃スキルが撤廃されたり、レベルが足りないと単純にパラメーター差で圧倒されてボコられたりと、プレイヤーに不利なことばかりが増えた。
ストーリーは気になるが、完結編「Finale」で1・2の全てのイベントが見られる(※ただしボイスは無い)し、改悪部分ものきなみ直っているようなので、もはや「1リメイク」をやる理由は、個人的には無くなった。

総評としては、公式サイトやゲーム内で前日譚・外伝が読めたり、小説版などメディアミックスもあり、世界観と物語の面白さは良好。
理不尽かつ適当な難易度のダンジョンRPGを受け入れる懐があれば、強くおすすめはしないものの、興味があればやってみる価値はある、奇妙な魅力を持ったゲームである。


評価:★★★ 6
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ゲーム感想-『ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ』

2020年12月24日 | ゲーム
~あらすじ~
かつての怪盗団の仲間たちと夏休みを楽しむため、5ヶ月ぶりに四軒茶屋に戻ってきた主人公は、また新たな事件に巻き込まれる。
全国各地をめぐりつつ、蘇った怪盗の力でジェイルの主を改心させろ。


~感想~
一言で言えば「ペルソナ無双」なのだが、なぜかペルソナ5の正統続編として開発した結果、ある意味で本編を超えてしまった傑作。無双システムの外伝で続編をやるな。本編を超えるな。
なおあくまで「ペルソナ5」の続編のため「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」で追加された新キャラや本編でリタイアしたあいつは登場しない。DLCで戦闘だけでも使えたら良かったのだが予定も無いようだ。

システムは基本的に無双シリーズおなじみのアレで、□の通常攻撃と△の強攻撃の組み合わせで様々な攻撃が繰り出せる。無双シリーズの経験者なら違和感なく入り込めるだろう。
特殊なのはスキルやアイテム使用の際に時間が止まることで、スキル選びやペルソナチェンジはじっくり時間を掛けて考えられる。□△の攻撃でも様々なスキルがSP・HP消費無し(ただし威力は消費有りに劣る)で撃てるのも良いアイデアで、ペルソナと無双を無理なく融合させることに成功している。
難易度も絶妙で考えなしに敵の群れに突っ込んだら簡単に死ぬし、ボス戦も弱点をつける仲間やペルソナが無いとジリ貧に陥りじわじわ殺されていく。しかし負けたらその場でリスタートしメンバー入れ替えもできるし、単純にレベルを上げて物理で殴る解決策もあるので詰まることは少ないだろう。

何より最高なのがストーリーで、ペルソナ5の後日談や外伝という枠に留まらない正統続編で、パレスに似たジェイルを無双しつつ探索し、歪んだ欲望を改心させる流れは、心の怪盗団と全く同じ。
のみならず、各ジェイルの王たちとのやりとりは、本編を経た仲間たちの成長が感じられ、端的に言って最高。
前半は仲間一人ひとりに関係のある人物が現れスポットライトが当たるなか、何人かは出番がなかったのがちょっと残念ながら、ストーリーや会話の端々に成長や本編からの時の流れが感じられた。
また日本各地の名所をめぐり、それが異界化したジェイルを探索するのはロードムービーさながらで、再集結した怪盗団が旅を楽しむ様も良いところ。終盤には期待通りにアレも現れるのだが、まさか考察サイトで登場が予想されていたアレがP5Rではなくこっちで出てくるとは思わなんだ。やっぱり正統続編だこれ。

新たな仲間のソフィアともうひとり(※いちおう伏せておく)も怪盗団にすんなり溶け込んだ。
性能的にはどちらも万能に立ち回れるし、それぞれの成長譚としての物語も最高。なんなら芳澤某さんより違和感ない。…いや芳澤さん別に嫌いじゃないし、この旅に同行してたら各地でご当地グルメをドカ食いして絶対面白かったと思いますよ?
例によって新曲の数々がどれも名曲なのだが、中でもこの新キャラ二人に向けられたメッセージとも取れる「You Are Stronger」と「Counter Strike」が出色。通常戦闘曲も特に「Axe to Grind」はこれを戦闘BGMに選ぶアトラスには脱帽である。

発売時期から見て「P5R」とほぼ同時に開発されていたと思われるが、不備のないストーリーや素晴らしい新曲、本編では物足りなかった、選択肢への反応の豊富なバリエーション(しかもボイス付き)など見るに、なんなら「P5R」より進化した面すらある。
ボリュームも本編+クエストで50時間は掛かる厚さで、クリア後には難易度の高いクエストや、変更不可の地獄難易度での2周目も追加され、満足行く。
単なる無双システムの外伝ではなく、個人的には「ペルソナ6」も同システムで出してくれてもいっこうに構わないくらい大ハマリした。
無双シリーズだからと尻込みしたり、たかをくくることなくペルソナ5ファン全員にやって欲しい大傑作である。


評価:★★★★★ 10
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ゲーム感想-『Return of the Obra Dinn(オブラ・ディン号の帰港)』

2020年12月08日 | ゲーム
~あらすじ~
1807年、英国。保険調査員のあなたは、無人で帰港したオブラ・ディン号の乗員の安否調査を命じられる。
途中で下船した乗組員の一人から届けられた懐中時計には、死者の最期の光景を映し出す力があり、それを用いて60人の乗員の安否を暴け。


~感想~
純粋論理ゲーム。プレイヤーは60人の乗員の「名前・安否(死因)・殺害ならば犯人」を全て特定しなければならない。
このゲーム最大の特色は、死者の最期の光景を一人称視点の3Dマップ上で探索できる点。
死の瞬間、周囲にいた人物や交わされた会話、船内の様子を観察し、乗客リストや写真とも照らし合わせ、一人ずつ特定して行くのだ。
これが一筋縄では行かず、直接には最期の光景を見られず、他者の光景から探さなければならない死者や、途中で下船したためそもそも最期が見られない者、消去法でしか名前を特定できない者もいるガチの難易度を誇る。
3人正解するごとに認定が行われるのだが、自分は全ての光景を見終えた時点で9人しか特定できておらず泡を食った。しかし心配無用。決して推理が得意ではない自分でも(12時間かかったが)無事にクリアできた。
特定の手順は一つではなく、クリア後に攻略サイトを見たら知らない手掛かりや伏線がゴロゴロ出てきたし、何人かは正解となる死因がいくつかあるとのこと。トロフィー取得率を見てもプレイヤーの半数がクリアしているので、頑張れば解ける難易度である。ぜひ攻略サイトやヒントを一切見ずに自力で挑んで欲しい。

PS4、Switch、Staem等で2000円少々(セール有)とお求めやすく遊べるガチの論理ゲームなので、特にミステリ好きには強くおすすめしたい。


評価:★★★★☆ 9
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ゲーム感想-『十三機兵防衛圏』

2020年10月03日 | ゲーム
~あらすじ~
突如として現れた怪獣が世界を滅ぼそうとする。
十三人の少年少女は世界の謎を追い、そして機兵に乗り、終焉へと立ち向かう。
ジュヴナイル群像劇本格SFアドベンチャー。


~感想~
20年前「ガンパレード・マーチ」というゲームがあった。
個性豊かな高校生たちが普段は学校生活を送りながらも、突然現れる異界からの侵略者と戦うためロボットに乗るストーリーで、荒削りながらも絶大な魅力あふれる作品だった。据え置き機では人生でベスト3に入るほどの時間を費やしたものだ。
続編が揃って大コケし、コンテンツとしてはほぼ死亡してしまったが、ハマった人間は一生忘れることができないだろう。
そして2019年、令和のガンパレと一部で呼ばれるゲームが「十三機兵防衛圏」である。

初めてトレーラー等を見た時は笑った。高校生・ロボット・世界崩壊・怪獣・猫・幼女と隠す気が全く無いほどアトラス版ガンパレで、特にバトルパートはガンパレを意識していないと絶対に説明が付かないくらいそっくりだった。
いくらヴァニラウェアでも正直これはコケるだろうと予想していたが、意に反して発売後は絶賛の嵐だった。ディスク版は(出荷本数も少なかったようだが)入手困難になり、1年経とうかという現在も中古価格はほとんど下がっていない。
ガンパレファンとして見過ごす手はなく、遅ればせながらクリアしたが、結論から言えば歴史に残りうる傑作だった。
以下ネタバレ無し。


1.概要
本編は3パートに分けられ、ADV風に物語を体験する「追想編」と、最終決戦を行うバトルパートの「崩壊編」、「追想編」で得たキーワードが解説され、物語が時系列順に並べられる「究明編」がある。
3パートはプレイヤーの任意に進められ、いずれもシステムが秀逸。
「追想編」は1プレイ10分ほどの短編で、13人のキャラの物語を体験していく。フローチャートとヒント付きで詰まる場面はほぼ無く、それぞれ先が気になる絶妙のタイミングで切られ、短時間で終わる手軽さと相まって次々と読み進めたくなる。
「崩壊編」は全てのストーリーが語られ終えた後の、最終決戦という設定が実に見事で、紆余曲折を経て13人が勢揃いする、それまでに何があったのかと「追想編」への期待と興味が膨らむ。
「究明編」は「追想編」の進行に応じて情報が追加されていき、また「崩壊編」で獲得したポイントで、好きな項目を開放できる。ポイントがむちゃくちゃ余るのでもっとあってもいいとは思ったが小さな不満である。


2.ストーリー
本作の何が優れているかといえばこのストーリーである。
「追想編」で語られる13人の物語は、場所や立場はもちろんのこと時系列までもがバラバラで、複雑に入り組んでいる。しかもどの順番で読むかはプレイヤーに委ねられており、そこへ有名SF要素全部乗せみたいな、山ほどの設定が絡む。ほとんど全ての台詞が伏線だらけで、いちおう「究明編」で体験した物語はキャラごとに時系列順で整理されるものの、全体を貫く一本のストーリー自体は、プレイヤーが頭の中で組み立てねばならない。
しかし恐るべきことに、SFをさほど知らない自分にも、最後にはすっきりと全容が把握できてしまった。
一言では到底表せないほど複雑な設定・物語を、ある程度は好き勝手な順番で読ませておいて、進行に応じて徐々に点と線がつながっていき、終わってみれば全てを理解させる。いったいどれだけの労力を払えばこんなことが実現できるのか。
しかもこれは小説や映画では実現できない、ゲームならではの手法である。大げさではなく表現手法に新たな地平を切り拓いた作品と言えよう。

また小難しい話はおいといて、単純に「少年少女がロボットに乗り侵略者と戦う」というSFロボットバトル物としても熱いストーリーで、厨ニ心を刺激してやまない。


3.グラフィック
ヴァニラウェアおなじみの美麗な背景とよく動くキャラは期待通りの仕上がり。美味そうな食べ物ももちろんある。
ほとんどを社長兼ディレクターの神谷盛治が一人で描いたそうで、その執念と職人芸には感嘆するしかない。
戦闘パートこそただのマーカーで表示される味気無さだが、そこまで描かせたら製作期間が数年単位で伸びる挙げ句にたぶん神谷が死ぬので望むまい。


4.戦闘
マーカーで表示されるキャラ、射程を表す扇形、見下ろし視点と、もう一見してガンパレの影響を否定できない画面構成で、初めて見た時には吹いた。
簡易RTSのいわゆるタワーディフェンス方式で、たった2分間だけ敵の猛攻をしのげばいいシンプルさだが、ちょうどいい奥深さと爽快感があり、「追想編」と同じく10分程度で終わり、負けてもほぼペナルティは無いため手軽に楽しめる。
各バトルにはミッションが設定され、出撃メンバーを絞られたり、数回の出撃ごとに強制的に休ませる仕様で、攻略のためには全員を満遍なく育てる必要があるが、このくらいの縛りはむしろやり甲斐につながっている。
敵も味方もマーカー表示で攻撃も単純なエフェクトのみなのはシンプルすぎるが、それを逆手に取り、物語設定通りの圧倒的な戦力差を表現することに成功しており、終盤戦ではそれでもなお処理落ちするほどの、画面を埋め尽くす敵の物量作戦に驚かされるだろう。


5.キャラクター
個性的な13人だが、ガンパレのようなアクの強すぎる現実離れしたキャラはおらず、全員地に足が着いている。
13人それぞれが別々の目的のために動き、「●●を買う」ために脱出ゲームめいた謎の展開を見せる者もいるが、最終的には誰一人欠けてもここまで来ることはできなかったという結末に至る。
声優陣の演技も抜群で、一人何役かもあるのだが全く気づかないほどの巧みさ。セリフ一つ一つが短いセンテンスでまとめられ読みやすいのもいいところ。
福山潤と小清水亜美が完全にルルーシュと小清水だったが、まあこちらもそれを期待しているし。あと恥ずかしながら初めて聴いた種﨑敦美がむちゃくちゃ上手くて驚かされた。


6.UI
総じて親切設計である。
ロードはほぼ皆無で、台詞はワンタッチでいつでもバックログが見られ、ボイスも再生可能。
「追想編」ではフローチャートはいつでも見られ、分岐のヒントも出るので攻略サイトのお世話になることはまず無いだろう。次に向かうべき方向には操作キャラがだいたい振り返ってくれるので動線も迷わない。台詞はスキップ可能で、しかもR1を押せば全体の流れを早送りまでしてくれる。
またヴァニラウェアはケーブルにつながなくても、ポーズ画面からいつでも説明書が読めるのも良い。これは全メーカーに見習って欲しい。
エンディングが操作不能でボイススキップもできず延々と流れ、PS4のホーム画面を出している間すら進行し続けるが、最悪スリープさせればいいし、一回きりだから問題あるまい。


とにかくSF、ロボットバトル、群像劇、ガンパレ、いずれかが好きならば迷うこと無く手に取って欲しい、プレイ中は心の中心に、プレイ後もずっと心のどこかに残り続けるだろう傑作だった。
ガンパレもこの方式でリメイクとかして欲しい。

2020.10.2
評価:★★★★★ 10
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